ガチャ082回目:解体
「ったく、今日は随分と早いご帰還だと思ったが……。獲物の解体すっぽかしてきたのかよ」
「それもありますけど、武器屋に寄る必要が無かったのもありますね」
「それもそうか」
「あと解体処理はしていませんけど、血抜きだけは万全に済ませてますから、肉の質が落ちていたりはしないはずですよ」
「ほぅ……? そいつは楽しみだ」
結局キラーの血とマーダーの血は全部イリスが飲み干しちゃったんだよな。無限の胃袋を持つイリスがあの量の血を飲み干しても重さが変わらないのは、相変わらず謎な生体してるよな。
「一応念のためだ。1体だけでいいから死体を見せてくれるか」
「……ここで出して良いんですか?」
「血抜きは終わってんだろ? なら汚れたりしないだろ、心配すんな」
心配はそっちじゃないんだが……。まあ、こういう世界だし女性陣も慣れてはいるか?
そう判断して適当に1つキラーの死体を取り出しおっさんに突き出した。
「……ほぉ、首に一撃か。それにこの状態でも1滴も血が零れてねぇ。血抜きは万全というだけはあるな」
「他のも大体こんなかんじですけど、どうですかね?」
「となりゃ、見た目だけでも品質Aは確定だな。Sかどうかは一旦捌いてみねえとわからんが」
「なるほど?」
そうしておっさんと話を進めている間も、ラビは受付嬢から可愛がられていた。今は机の上に座り込み、採って来たばかりのS判定薬草を両手で掴んでモシャモシャと食べている。このラビの食事シーンは実に平和で、ASMRになりそうなくらい良い音を出していた。
「おい、ミランダ、レイチェル。いつまでも遊んでないで仕事しろ仕事」
「「……はーい」」
2人とも名残惜しそうにしていたが、すぐに切り替えた。
「じゃあショウタさん、まずは薬草類からね」
・リーフ草 判定S 5本×(120G+特別報酬80G)=1000G
・リフレス草 判定A 2本×150G=300G
・解毒草 判定S 4本×400G=1600G
合計:2900G
「となりますけど、どうされますかー?」
「リフレス草と解毒草は換金で。リーフ草はラビの好物みたいなので、買取は無しでお願いします」
「分かりました! 貴重なS判定ですけど、ラビちゃんのためですもんね!」
『キィ~』
もう既に3本もリーフ草を食べたからか、ラビは満足気に一声鳴いて、うとうとし始めた。その仕草だけで女性陣はメロメロだった。
「おほん。ええと、ではモンスターリザルトですね。マーダーはキラーの上位種で、過去の資料に載っていましたので、それを参考に危険度を想定し、そこから値段を算出しました」
・キラーラビットLv5:19体×60G=1140G
・キラーラビットLv6:24体×80G=1920G
・キラーラビットLv7:22体×100G=2200G
・マーダーラビットLv18:1体 30000G
・マーダーラビット特別報酬:30000G
合計:65260G
残高:26万1880G
「今回も特別報酬を貰えるんですね」
「まあ、これにはダンジョン制圧分も含まれてるからな」
「なるほど。ならそれを抜きにしたらぼちぼちですね」
「ふふ。ショウタくん、キラーラビットなどの全身が素材となるモンスターの本領はここからですよ。死体の品質と解体の出来栄えによって追加価値が得られるのですから。さあ、解体場に移動しますよ」
「はーい」
「おう、頑張れよ」
おっさんは他人事のようにふるまった。いや、手伝ってくれねえのかよ。
「グレインさん、貴方も来るんですよ?」
「俺も!? おいおい、俺の解体の腕前は知ってるだろ」
「存じています。貴方にお願いしたいのはマーダーの解体補助です。聞くところによるとマーダーはかなりの巨体というではないですか。ならば解体も大仕事になるんですから、貴方の参加は必須です」
「マジかよ……」
そうして全員で解体場へと向かう。ちなみに眠りに落ちたラビはレイチェルさんが抱えて持って行く事となった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
案内された場所は、降りた階段からして地下にあるらしく、ちょっとひんやりする感じの大部屋だった。地下室ってことは、少しでも素材が痛まないようにするための措置だろうか? もしかしたら魔導具的な何かが働いてるのかもしれないな。
そんな作業場では、血染めのエプロンと手袋を身に着けた男女の作業員達がのんびりと寛いでいた。もしかすると、暇してるのかもしれないな。
「お、支部長。どうしたんすか? 解体の練習っすか?」
「あれ、でもこの前解体は諦めたとか言ってませんでした? これ以上素材は無駄にするなって怒られてたような」
「馬鹿野郎。今日は補助で呼ばれたんだよ。獲物の数が多い上に、馬鹿でかい奴もいるみてぇだからな」
「「「「「馬鹿でかい……!?」」」」」
作業員達の視線が、支部長から受付嬢、そして俺へと集まった。
「全員注目! 今から大量のキラーラビットと、それの上位種の死体が並べられる。どいつも一見した感じでは判定A以上はある。丁寧に、かつ迅速に対応に当たるように!」
「「「「「了解!」」」」」
そうして取り出されたキラー65体と、マーダー1体が所狭しと並べられ、解体作業に入った。一応事前に勉強してはいたが、やはり本場のプロの解体レベルに及ぶわけもなく。なんとか見よう見まねでキラーの解体をさせてもらえたもののその速度は雲泥の差があった。それでもまあ、筋が良いと褒めて貰えた上に、『解体』のスキルを得られたのは素直に嬉しかったが。
そして肝心のマーダーは、邪魔になりかねないので見学に徹した。当然、中から出て来た『中魔石』は貰う事にした。またその内、イリスに食べさせてあげたいな。
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