ガチャ075回目:吸血粘体
「ふーむ」
近隣のモンスター図鑑を見る限りでは、キラーラビットはゴブリンとは違ってダンジョンが閉じた後、野生動物だと土地に根付いたらしい。そんな彼らは小川の向こうにある森を生活圏としており、そこで野草やら薬草やらをモシャモシャして生きているそうな。そんな雑食性の彼らは本来無害らしいのだが、実際目の前にいるのはどうにても凶暴そのもので、キラーなんて名を冠するくらいには危なっかしい奴らのようだ。
自分たち以外の生物にはそのツノで突撃をする習性があり、それは向こうでもこちらでも同じらしい。そんな彼らも、従来であれば森から出てくる事は殆どなく、小川にまで出てくる事自体稀だとも記載されていた。
だというのに、今俺の目の前では小川を中心にキラーラビットが多数分布している。しかも、明らかに数が尋常じゃない。
「やっぱ、こっちでもダンジョンが発生してるのかもなー」
『(プルーン)』
俺以外にも増え始めたキラーラビットを討伐しに来た冒険者の姿がちらほらと見えるが、その数の多さにちょっと腰が引けてるんだよな。
「んじゃ、こちらのキラーラビットの強さはどんなもんかなっと」
*****
名前:キラーラビット
レベル:5
腕力:12
器用:14
頑丈:8
俊敏:14
魔力:6
知力:5
運:なし
スキル:なし
装備:なし
*****
「ふむ。こんなものか」
魔石が無いとはいえ、向こうで最初に出会ったキラーラビットよりは若干強いか? でもほぼ誤差だな。
そして通常ゴブリンよりは強いけど、職持ちのゴブリンよりは弱いと。
『キィキィ』
『キィッ!』
「お、やっぱ好戦的だな」
少し先にいたキラーラビットは、俺を見つけると仲間たちに知らせ、ほぼ同時にこちらに向かって突撃を仕掛けてくる。その数3体。
この世界に来た瞬間の初遭遇ならまだしも、今の俺には脅威ではなく、簡単に撃破できるだろう。だが、簡単なのは後先考えずに倒すならの話だ。ゴブリンと違ってこいつの全身は素材であり資源になる。無駄に壊して勿体ない事にするのはいただけない以上、斬る場所は慎重になる必要がある……。
『キィ!』
『キキィ!』
「……そこだ!」
飛び込んでくるキラーラビット達を横に回避し、1体の首を斬り裂く。流石に首を落とすような真似は今の俺には難しくとも、急所に致命傷を与える事は難しくない。
『キィ!?』
「もういっちょ!」
怯むキラーラビットに追撃を仕掛け、残る2体にも致命傷を与える。
そして3体のキラーラビットが死んだことを確認すると、合掌したのち亡骸を1カ所に集める。
「イリス、血抜きできるか?」
『(プルプル!)』
イリスが俺の袖口から触手を傷口に伸ばすと、チュウチュウと吸い取り始めた。
『(プル!)』
「ん、もう次か?」
『(プル!)』
ゴブリンの時みたく吐き出す工程があるのかと思っていたが、どうやらキラーラビットの血は思ったほど不味くはなかったらしい。それどころか、2体目3体目と率先してゴクゴクと飲み始めている。
「人の趣向にはとやかくは言わないけど、あんまり飲み過ぎるなよ~」
『(プル~)』
そうして血抜きが完璧に終わった亡骸は、一旦『魔法の鞄』に放り込み、付近に見えているキラーラビットは一通り狩る事にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
そうして50体ほどのキラーラビットを『魔法の鞄』に押し込んだ所で、ちょっとした不安に駆られた。この後の解体を、俺1人でやらなきゃいけないのだろうかと。
「……やめやめ。最悪冒険者ギルドか宿で協力を頼めばいいし。川周りの連中も数がだいぶ減って来たし、一旦離れるか」
『(プル)』
川は最初に森から北西方面に流れており、そこからぐいんと蛇行して南東の方に流れている。キラーラビットの分布もそこに沿っているので、川の更に北西方面。街からも川からも絶妙に離れた場所に腰を落ち着けた。
「ふぅー。それなりに戦ったな。2時間ちょっとか?」
『プル』
イリスがひょっこり顔を出す。ここならまあ問題はないだろう。
「んじゃ、ちょっと早いけど飯にするか。イリスも、血液ばっかじゃなくて、普通の水もちゃんと飲んどけよ」
『プルプル!』
『魔法の鞄』から昼食と水筒を取り出し、2人でがっつく。そうして満腹になり寛いでいると、イリスが何か言いたそうにプルプルツンツンしてきた。
『プル~』
「ん?」
『プルル~』
「……ははぁん。さてはキラーラビットが食べてみたいんだな」
『プル!』
「……ナマだけど本当にいいのか?」
『プルプル!』
まあ食べてみたいというんだから、やらせてみるか。
そうして取り出した死骸をイリスに与えると、彼は再び傷口から体内に侵入し、内側だけをモグモグし始めた。その食事方法は考えようによってはなかなかにグロイが、食べてる本人は新たな味覚に大喜びしているようで、プルプルしてる。
……ちと視てみるか。
*****
名前:イリス
存在位格:『普通』
コア:極小魔石
レベル:22
腕力:135
器用:135
頑丈:135
俊敏:135
魔力:135
知力:135
運:なし
【Pスキル】炎耐性Lv1、暗殺術Lv4
【Aスキル】暗視、チャージアタック、吸血Lv2、悪食Lv2
【Mスキル】基礎マナ理論Ⅱ、魔力操作Lv2、風魔法Lv1、水魔法Lv1、魔力回復Lv3
【Sスキル】形状変化Lv4、性質変化Lv2
*****
あー……。『悪食』のレベルが上がっている上に、『吸血』スキルまで取っちゃったか。まあやってることは吸血ヒルみたいなもんだもんな。規模や勢いの次元が違うけど。
じゃ、俺はその間に解体の本でも読んでるか~。
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