ガチャ073回目:ウサギ狩りの下準備
「お兄さん、起きてー! 朝だよー!」
『プル~! プルル~!』
「んぁ……」
カリンちゃんとイリスに起こされ、ゆっくりと目を開ける。すると2人が俺を覗き込んでいるのが見えた。イリスを撫でつつ、昨日の事を思い出す。
結局食事のあと、学べた魔法は『水魔法Lv1』が限界だった。というのも、『風魔法』の時もそうだったんだが、取得する魔法の原型となる存在そのものが近くに無いと、魔法を取得する事ができないみたいなんだよな。
なので室内では土や炎なんてものは当然無い訳で、取得にまでは至れなかったというわけだ。それはイリスも同様だったようで、2人で『水魔法』を取得するのが限界だったのだ。
「2人ともおはよう」
「おはようお兄さん!」
『プル』
「朝ごはんの時間だよー。イリスちゃん、お腹空いた?」
『プルプル!』
「ふふ、今日もたくさん食べてねー」
『プル~!』
さて、今日は東のキラーラビット狩りだ。この世界に来て初の動物型のモンスターだ。気を引き締めていかねば……あ、そうだ。
「ねえカリンちゃん」
「なーに?」
「今日からキラーラビット狩りに行こうと思うんだけどさ、お肉とかって需要あるの?」
「あるよー。お昼になったらね、お父さんと一緒に街の市場にお出かけして、お買い物するんだー」
「ほぉー」
「そこにはいろんなお肉が売ってあるし、キラーラビットのお肉ももちろんあるよ。お兄さんがいる時にも何度か出したことあるんだよー」
「そうなのか……」
なら、倒し方には気を付けないとな。それに解体も必要になりそうだ。
……イリスなら首の骨を折って一発だが。
『プルプル!』
イリスが踊り食いがしたいと言ってる気がする。
別にやるのは良いけど、ナマでもちゃんと美味しいのかは分からんぞ?
◇◇◇◇◇◇◇◇
「お、賑わってる」
ギルドで昼食を購入した俺は、そのまま魔法店ではなく武器屋の方にやって来ていた。そこではいつも閑古鳥が鳴いていたはずの店内に、複数の客らしき姿が……。
「よぉ。今日はこんな時間にどうしたんだ?」
「いやー、必要な物があった事を思い出しまして。それにしてもここってお客さんいたんですね。俺だけしか来ないのかと」
「馬鹿野郎。それはお前さんが来る時間がいつも遅ぇからだよ。普通は冒険が終わった後に武器屋に来る奴はいねーよ」
それもそうだ。
「で、何が必要なんだ?」
「今日からキラーラビットの方に行こうかと思いまして。それで解体用のナイフが欲しいなと。剣じゃちょっとやりにくいだろうし」
「なるほどな。となると……この前の『鋼鉄の短剣』で良いか?」
「はい、それで。……ちなみにおいくらで?」
ぼそっと耳打ちすると、おじさんはにやりと笑って見せた。
「この前買取した値段で許してやるよ」
「助かります」
冒険者証を手渡すと、きっかり1500G引かれた状態で戻って来た。短剣と一緒に。
「普通は鉄で十分なんだがよ。長く使うなら、やはり鋼鉄は最低限欲しいところだな」
「ですよね」
「あと、解体にはそれ用にカスタマイズされたものもあるが、お前さんには不要そうだな」
「なんでです?」
「なんでって、普通のナイフじゃ血油ですぐ切れ味が落ちるからだよ。その点お前さんは……」
「ああ、そういうことですか」
うちにはイリスがいるからな。狩猟ナイフのような特殊加工は不要だろう。
さて、用事は済んだ。忙しそうだし、俺はさっさとお暇しよう。
「ではまた」
「おう」
そうして武器屋を出た俺はそのまま魔導具店へと向かい、トラブルなく入っていく。店内は……相変わらず人がいないけど、ここはここで繁盛しているのか心配にはなるな。
「お姉さん、来ましたよー」
「あら坊や、いらっしゃい。そろそろやってくる頃だと思っていたわ。あの本について何か聞きたい事でもできた?」
「いえ、今日は返却に来ました。特に問題も無く、分かりやすくて読みやすかったですよ」
「え、嘘でしょ……? 完璧に把握できたって言うの……?」
驚くお姉さんに押し付けるように本を返すと、イリスが胸元からにゅっと顔を出した。
『プルル~』
「あらイリスちゃん。こんにちは」
『プル~』
「イリスも問題なく内容を把握できたみたいで、助かりました」
「そ、そうなの? イリスちゃんは本当におりこうさんみたいね。もちろん坊やもだけど。ねえ坊や、直接視ても良いかしら?」
「良いですよ」
先日お姉さんが覗き見した時は、反応からして『Uスキル』だけは視えなかったみたいだしな。あれからスキルが急激に成長した訳でもないだろうし、特に問題はないだろう。
「うわ、2人とも本当に『基礎マナ理論』を覚えているわね。しかも、Ⅱにまでなってる上に、2属性の魔法と『魔力操作』と『魔力回復』まで……。ねえ坊やたち、冒険者やめて私の弟子にならない? きっとすごい魔法使いになれるわよ」
「やめておいた方が良いですよ。俺のステータス、先日見ましたよね?」
「……そうだったわ。世界はなんて残酷なのかしら」
お姉さんは頭を抱えた。
まあどんなに理解力が高くても、魔法を使うには『知力』のステータスが必須だ。今の俺じゃLv1の魔法でさえやっとなのに、それ以上なんて望めないだろう。けど、数回ガチャを回せばそれも変わってくるはずだ。
キラーラビットのダンジョンに、良い感じに経験値の美味しい相手がいると良いんだがなぁ。
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