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ガチャ071回目:天使の加護

 天使ちゃんはぺこりと頭を下げた。

 ……てか今更だけど、天使ちゃんって呼んじゃったけど、天使で合ってるよな? 翼の生えた別種族なんてオチはないよな??


「感謝します、人の子よ。何かお礼をしなければ」

「いいですよ、困った時はお互いさまというやつです」

「なんと謙虚なのでしょう。人の身でありながら、素晴らしい心がけです。では……そんな人の子である貴方に神のご加護を」


 天使ちゃんがさっと祈り手をすると、俺の全身が煌き、淡い光に包み込まれた。煌きは一瞬だったが、淡い光は残り続けている。


「……これは?」

「我らが神の庇護を与えました。しばらくの間ですが、人の子は無病息災でいられることでしょう」


 神か。果たしてどこの神かにもよるんだよなぁ。基本的にはご利益ありそうだけど変な神の加護とか逆に邪魔になるかもしれないんだよな。現に、今もずっと淡く光り続けてるし。


「……ありがたいんですけど、この光なんとかなりませんかね。洞窟とかに入った時、モンスターに侵入がバレるというか、隠密行動ができないのは困ります」

「おお、人の子は冒険者だったのですね。ご安心ください、この輝きは数刻ほどで収まりますので」

「ああ、そうなんですか? そういうことならありがたく頂戴します」


 ぺこりと頭を下げると、天使ちゃんももう一度頭を下げた。


「では人の子よ、どうかお元気で」


 そう言って天使ちゃんは南の方に行ってしまった。……どこにいくんだろ。冒険者ギルド、すぐそこなんだけどな。

 まあでも歩み続ける天使ちゃんを呼び止めるのは不敬になるかもしれないし、下手な事はしない方が良いか。よし、俺も帰るか。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 宿に帰って来ると、いつものようにカリンちゃんが出迎えてくれた。


「お兄さんお帰りなさい! どうだったー?」

「ああ、美味しかったよ。こっちも大喜びだった」

『(プルプル!)』


 服の下でウゴウゴと動くイリスを見て、カリンちゃんも笑顔になった。


「えへへ、そっかー。案内できて良かったよー」

「良いお店を紹介してくれたし、今度休みの日にあのお店で奢ってあげようか?」

「え、良いの?」

「ああ、普段お世話になってるしね。ご両親に聞いておいてくれ」

「分かった! それで、夕食の時間になったらまた呼びに行けば良い?」

「うん、お願いしようかな。また集中してたら、鐘の音を聞き逃しちゃいそうだし」

「あはは、お兄さん集中するとすごいもんね!」


 そうして部屋に戻った俺達は、読書を再開する。飯屋じゃ集中して読めなかったからな。


「結局、この『基礎マナ理論』と『魔力操作』のスキルを使う事で魔法の基盤になる訳だよな」

『プルン』


 ぱらぱらと本をめくっていくが、そこにはこのスキルを得る為に必要となりそうな考え方なり心構えだったり、前提知識なんかが書かれているようだった。スキルを得た今、これらの知識はもう必要ないように思えるが……ここから更にレベルを上げる為には何が必要になるか分からない。なので、とりあえず全部読んで理解する事にした。


「……ふむ」


 大体読んでみて思ったが、地球での魔法利用がだいぶこの知識の土台を補完してくれているみたいだった。本来魔法を行使しなければ体感できない物事をすでに体験済みで、結果を知っているからこそその過程に覚えなければならない事象はもう己の中にあるのだ。

 こんな簡単な事、習得できなければ嘘だろう。そうして最後まで読み切り、その知識を自身の中に落とし込んだ時、その通知はやって来た。


【スキルの獲得条件を満たしました】

【スキル:基礎マナ理論Ⅱ、魔力操作Lv2を取得】


「お。案外、簡単に取得できたな」

『プルーン!』


 どうやらイリスも同様にスキルを獲得できたらしい。さすが相棒、俺と同じ理解力してるな。


「後はこれを使って、魔法を実際に使えるようになれば完璧だな」

『プルプル』

「まずは……『風魔法』からやってみるか。風ならどこにでも存在できるから、イメージもしやすいし、形にするのも楽だしな」

『プルプル』



◇◇◇◇◇◇◇◇



「……お、できたぞ!」

『プルーン!!』


 何度か試行錯誤の上、俺達はようやく最初の関門である風の球。ウィンドボールを作成することに成功した。


【スキルの獲得条件を満たしました】

【スキル:風魔法Lv1を取得】


「よし! 次は『水魔法』を……ぐっ!?」


 そう思ったところで、強烈な眩暈と吐き気に襲われた。それと同時に、手のひらに形成されていた風の球も霧散していく。

 この感覚には覚えがある。魔力が尽きたあの感覚だ! 最初期の魔法は魔力をたったの3しか消費しないはずなのに、もうこんな状態になるなんて。魔法発動のための試行錯誤の際でも、魔力を消費していたということか……! くそ、誤算だった!


『プルー!? プルプルー!』

「あぁ……。イリスには、『魔力回復』があるもんな、羨ましいよ……。待てよ? 魔法を操る基礎知識だというのなら、それを回復させるための『魔力回復』の知識も、載っていなきゃおかしい……! イリス、悪いが本にそれが載っていないか、調べてくれないか」

『プル! プルプルプル……』


 魔法を習得した以上、しばらくはこの感覚にも付き合い続けなければならない。イリスが見つけてくれるまでの間、この感覚の付き合い方を考えなくちゃな……。

 いや、そもそもあのエルフのお姉さんのお店なら、魔力回復の薬とかも扱ってるんじゃないのか? 地球では使用する事はまずなかったが、今のこの状態じゃ必要になるかもしれない。明日、買いに行ってみるかな……。

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