表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/97

ガチャ070回目:異種族

『(プル~)』

「満足そうだな、イリス」

『(ププルプル~~)』


 プルプルしているイリスを撫でつつ、俺達は街の大通りを進んでいく。

 あの後追加注文でベルを鳴らしたら、やってきた店員さんは片付けに呼ばれたと思ったらしく、笑顔でやってきてそのままお帰り下さいとだけ伝えてそのまま出ていこうとしたので、慌てて引き留めたんだよな。

 そして引き留めた店員さんは2度驚いていた。1つは、4つのプレートがきれいさっぱり平らげられている事実に。そして更には、呼んだ目的が追加注文として2品+デザートも2品オーダーする為だったという現実にだ。その驚きで、数秒ほどフリーズしていたのが印象的だった。

 まあ、気持ちは分かる。胃袋的にどう考えても入らなさそうだもんな。常識的に考えて。

 だがそこもプロの店員さん。すぐに持ち直して、注文を承ってくれた。結果イリスは大満足し、俺も満腹をちょっと超過してお腹いっぱいになったのだった。

 まあ唯一の誤算は、フルーツが思いのほか高く追加料金で銀貨1枚が飛んだことだが……。まあ、その程度誤差だろう。うん。


『(ププルプルプルーン)』


 この世界に来て初めてかと思えるくらいには上機嫌だ。やっぱり美味い飯を沢山食べられたのが効いたようだな。


「また行こうなー」

『(プルー!)』

「……ん?」


 なんか、向こうのほうが騒がしいな。人混みができているようで、何かを取り囲むようでいて、それでいて危険物を見つけたかのように警戒しているようでいて……。なんだなんだ?


「うーん、困りましたね」


 人垣の向こうを見てみれば、透き通るほど真っ白な肌を持つ美少女が、困り顔でそこにいた。だが、それは決してただの人間が出せる美しさではない。まるで先日出会ったエルフのお姉さんのように、常軌を逸した輝きと白さを持っていた。

 それもそのはず、彼女の背中には一対の純白の羽があったのだから。


「……天使、か?」

『(プルー?)』


 天使。

 それは神の代行者であり、神界が保有する戦力の1つとして数えられる存在だ。俺が向こうのダンジョンで出会った天使達も、名前付きかどうかで強さの最大値が変わっていたりはしたが、その全てが100レベルを超える怪物達だった。そんな天使が、こんな人間の街に……?

 そりゃ周囲の人達も、遠目に見て困惑している訳だ。刺激する訳にもいかないが、かといって話しかけるのも勇気がいるし、悲鳴を上げて逃げ出して刺激するのもよくない。そう考えたのか、一定の距離を取るだけ取って、あとはどうしようもできなくて動けなくなってしまったんだろう。

 対してあの天使の少女だが、どうにも純粋に困っている様子だ。あんな風に腫れ物扱いされている事にも慣れているのか、そこには怒りも呆れもないし、最初から敵意らしきものはない。なら、彼女の事を一ミリも恐れていない俺が話しを聞きに行くべきだろう。

 俺は列を割って、彼女に向かってまっすぐ歩いた。


「君、どうしたの?」

「おお……? なんと珍しい。人の子から話しかけられました!」


 そんな驚くほどの事なのか。

 まあ天使だしな。敬われてなんぼなんだろう。この世界でもそうなのかは知らんけど。


「人の子よ、私が怖くないのですか?」

「別に怖くはないですね。圧は垂れ流してる感じがしますけど」

「申し訳ありません、人の子よ。私もまだまだ修行の身、力を抑えきれぬのです」

「まあそういうことなら仕方ないですね。俺は慣れてるので平気ですけど」


 『威圧』の抑制かぁ。俺にとってはスキルでのオンオフくらいの感覚だけど、天使系統からしてみれば、種族特性的なものなのかね? そりゃまた大変そうだ。


「それで、何か困っていたように見えたんですけど」

「ええ、そうなのです。人の子に話を聞こうとしていたのですが、誰もが距離をおき、顔を合わせてくれず……」


 こんなに可愛いのに勿体無い。


「ええと、この辺りでですね、何か変わった事はありませんでしたか?」

「変わった事?」


 なんだろう、何かあるのかな?

 そもそも、この世界の常識すらない俺が答えられることなのか、それは。


「うーん、具体的には?」

「ぐ、具体的にですか? ううーん。そうですね、なんと言いましょうか……」


 なんか言葉にするべきか悩んでる感じだな。人の多いところだと言いにくい感じか?

 あ、そうか。言いにくい事なのか。それなら1つ心当たりがあるぞ。


「天使ちゃん、君の求める答えかどうかわからないけど、変わった事ならあったよ」

「おお、本当ですか」

「うん、ただここじゃ言いにくい事だから、冒険者ギルドに行ってみると良いよ。そしたら話を聞けるかも」

「冒険者ギルドですか、盲点でした。人の子から話を聞く事にばかり意識が向いておりました」


 ファンタジー世界で噂話を聞くなら、酒場か冒険者ギルドが鉄板だしな。今回の件で言えば、この世界基準での異常事態を指すのであれば、ダンジョンが発生した事だろうし。

 まあもしそれが違ったとしても、他にも何か俺のあずかり知らぬところで問題が発生していた可能性だってある。それならギルドが情報を持っているはずだし、情報を持っていないならそもそも何も起きていないか、誰にも気付かれずにひっそりと動いているかのどちらかだろうしな。

読者の皆様へ


この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、

ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版第四巻 12月20日より好評発売中!
レベルガチャ1巻表紙絵 2巻表紙 3巻表紙絵 レベルガチャ4巻
コミカライズ第一巻 6/14より好評発売中!
コミカライズ1巻
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ