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ガチャ069回目:休日の過ごし方

『プルーン……』

「わぁー」


 とりあえず説明のために、カリンちゃんの手にイリスを乗せてみた。イリスはどうしたものかとプルプルしているが、カリンちゃんは怖がる様子はなく、むしろ不思議なものを見るかのように目を輝かせている。


「カリンちゃん、この子はイリス。見た目はこんなだけど俺の大事な家族なんだ」

『プル』

「家族……。そっか、お兄さんの大事な子なんだね」

「ああ。変なやつに目をつけられたくなくて隠してたんだ。だからカリンちゃん、この事は誰にも……ご両親にも内緒にしてくれないかな?」

「うーん……」


 カリンちゃんが悩んでいる間も、イリスはプルプルしていた。


「えっとねお兄さん、お兄さんがいっぱい食べるのって、この子のため?」

「あ、ああ。そうだよ」

「じゃあこの子は、お兄さんと一緒にご飯を食べてたの?」

「ああ、この宿のご飯は美味しいからな」

『プル!』

「ふふ、そっかあ。イリスちゃんもうちのご飯好きなんだ?」

『プルーン!』


 イリスは先ほど以上にポヨポヨと跳ねると、カリンちゃんは満面の笑みを浮かべた。


「分かった、良いよ! 内緒にしてあげるね!」

「本当か! ありがとう、カリンちゃん」

『プル~~!』

「えへへ」


 カリンちゃんに撫でられイリスは嬉しそうだった。

 いやー、一時はどうなる事かと思ったが、カリンちゃんが良い子で良かった。


「あ、それでねお兄さん。お昼ご飯が食べられる場所だけど」

「ああ、そういやそうだった。もうそんな時間なの?」

「うん。さっきお昼の鐘が鳴ったんだよ。気付かなかった?」

「え、そうなの? 俺もイリスも集中してたからなぁ……」

『プル~』


 そういやお腹も空いてきた気がする。イリスも心なしかぐんにょりしてる。


「イリスちゃんがいるから、個室か持ち帰りを希望してたんだよね」

「うん、そうだよ」

「お兄さん的にはやっぱり、一緒に食べれる方がいい?」

「そりゃね。できれば同じ物を同じタイミングで食べたいところだし」

『プルプル!』


 イリスだけ食べれず俺だけ食べるってのは気が引けるんだよな~。


「うーん、お兄さんの求めるギルドの提携店で、個室のあるお店はあるよ。けど、ちょっと割高なの」

「一食どのくらい?」

「200Gくらいなの」

「おう、それなり」


 この宿の食事が50G、ギルドの食事処が100Gと考えればかなり高い。


「まあ高いって事はそれなりに味も良いのかもしれないし、そこにしてみようかな」

「お兄さん、お金は大丈夫?」

「ああ。俺達稼いでるからな」

『プル!』

「そっかー、じゃあ大丈夫だね。お兄さん、街の地図ある?」

「ああ、ザインさんに貰った物なら」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうしてカリンちゃんに教えて貰ったのは、魔法具店よりちょっと北側に寄ったところにあるお店だった。お店はお洒落な内装で貴族受けも良さそうな感じで、裕福な人も良く来るんだろうか。完全個室制のようで、店の中に入っても店員以外客の姿はまるで見えなかった。


「いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてですか?」

「はい」

「畏まりました。注文はこちらで先にして頂くか、部屋に入ってからベルを鳴らして頂く事で店員が駆け付けます。如何なさいますか?」


 メニューを見せてもらう。確かにカリンちゃんの言うように、どれもお高いが、50G~300Gといったところか。とりあえず、勝手は分からないし定番で行くか。


「この150Gのランチプレートと200Gのハンバーグセット」

「と、当店の料理はかなり量がございますが、大丈夫ですか?」

「はい。それぞれ2人前ずつで」

「に……か、畏まりました」


 おお、一瞬ひきつったがすぐに立ち直った。プロ根性あるなこの人。


「支払いは今済ませちゃった方が良いですかね?」

「は、はい。お願いします」


 冒険者証を手渡すと、店員さんはさっと受け取りさっと処理を済ませてくれる。可能な限り個人情報は見ないように努めてくれているようだ。教育が行き届いている。


「引き落とし完了しました。ご確認ください」

「……はい、問題ありません」


 残高が750G減って、23万7220Gになった。

 うん、最早誤差だな。


「……では6番の個室へどうぞ」

「どうも~」


 やって来た個室は6畳くらいの広さをしていて、中には4人掛け用のテーブルがあった。そして採光目的かと思った窓にはちゃんと外の景色が見て取れた。外からは窓の中が視えなかったけど、マジックミラーのような特殊な造りをしてるのかもな。この部屋は息苦しさもないし……中々良い店なんじゃないか?

 そうして食事が来るまでの間も、本を読んで待機していると、15分ほどで料理が到着した。4人掛け用のテーブルに所狭しと料理が並べられ、店員が出ていくと同時に待ちきれなくなったイリスが飛び出し料理に飛びつく。


『プル~! プルル!!』

「おー、美味いか?」

『プル!』

「んじゃ俺も」


 とりあえず俺も手前から食べてみる。


「おお」


 香辛料の類がふんだんに使われているらしく、味に奥深さが出ている気がする。ボリュームもそうだが1つの料理の中で複数の皿があって彩り豊かだし、肉も野菜も豊富で美味いし、栄養バランスまで考えられてる気がする。

 確かに美味いし、向こうの料理を思い出す出来栄えだ。これならリピートするのも悪くないかもしれない。といっても、休日の昼間限定だろうけどな。


『プル~! プル~!』

「なんだ、もう食べちゃったのか?」

『プル~』


 俺がランチプレートを食べ終わるころには、イリスはハンバーグセットも食べ終えていた。普段ならイリスに俺のハンバーグセットをあげているところだが、これなら俺も入りそうではあるんだよな。てか、こっちの世界のハンバーグがどんなものか気になるし、イリスが好きであるように俺もハンバーグが好きだから食べてみたい。


「よし、お代わりしようか。イリス、好きな物頼んでいいぞ」

『プル!? プル~~!』


 そうしてイリスはメニュー表を掴み上げ、そのまま器用に座席へと飛び移った。


『プルプルプルプル』


 鼻息荒くメニューを吟味するイリスに向けて、俺は追加は2皿までと付け加えるのだった。

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