ガチャ067回目:読書日和
「ショウタくん。明日おやすみされるのなら、街の案内をしましょうか?」
「あ、ずるいよミランダ。あたしもショウタさんの案内がしたいのにー!」
「あー……。大変魅力的なお誘いではあるんですけど、明日はちょっと用事がありまして」
「そうなの? 残念ね」
「次のお休みの時は是非に」
そう断りを入れるが、おっさんはこの状況を楽しそうにほくそ笑んでいた。
「くくっ、うちの看板娘の誘いを袖にするたあ、一体どんな用事なんだよ」
「昨日おっさんが紹介してくれたでしょ。あそこで知り合ったエルフのお姉さんから、本を借りたんで読みたかっただけですよ」
「おお、ってことはあのババアのテストにも合格したのか。やるなあ坊主!」
「どういたしまして。あとでババアって言ってたこと伝えておきますね」
「す、すまん。それだけはやめてくれ」
坊や呼びされていたからもしかしてとは思ったが、頭が上がらないらしい。それにしたって口は災いの元だぞ。
「あんな美人のお姉さんをババア呼びする方が悪いですよ」
両隣からの無言の圧もあり、おっさんはたじたじになる。
「……悪い、気をつける」
「じゃあ詫びついでに、キングの王冠について取り扱い方法を教えて下さい。武器屋でも買取してくれず、魔導具店に行けと言われたんですけど、理由がわからなくて……」
「ああ、王冠か。それなら確かにバ……魔導具店なら高値で買い取ってくれるだろうな。キングの王冠ってのは、金の含有率が滅茶苦茶低い上に、妙な曰くが多いからな。まともな商店じゃ買い取ってくれねえんだ」
「曰く付き……!?」
マジで?
じゃあ地球で手に入れた王冠も……? アレって結局、どうしたんだっけ?
やば、急に不安になって来たぞ。
「まあ曰くと言っても、夢見が悪くなるとか街中で実害が出るとかじゃねえんだ。なんでもそれを持って街の外に出ると、ゴブリンに襲われやすいって噂が立ってな。それが転じて商売が成功しなくなるって噂されるようになり、誰もまともに取り扱わなくなったんだ」
「はー」
そういうジンクス系なら、地球では関係ないか。
よかった、安心した。
「それで魔導具店というわけですか」
「あそこならその手の呪いなんて、逆に取り込んで返り討ちにするだろうよ」
じゃあ玉座も似たような理由か。なんせあのキングが座ってた特殊効果付きの椅子だもんな。
「じゃあそういうことなので今日の所は帰りますね」
「おう、ゆっくり休めよ」
「ショウタくん、数日間本当にお疲れ様でした」
「あたしショウタさんを下までお送りしますね~」
そうしてレイチェルさんに見送られ冒険者ギルドを後にする。
その後いつものように宿屋にて4食分を2人で平らげ、俺達はぐっすりと休むのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「お兄さん、おはようー! 朝だよー!」
元気よく部屋に入って来たカリンちゃんが窓を全開にする。
「んぁ……。カリンちゃん、おはよう」
「今日も眠そうだね~」
「ん~……?」
窓を全開にしたのに部屋は明るくならない事に違和感を持ち外を見ると、空は曇り空だった。もしかしたら一雨来るかもな。
「ふあ~……。今日は雨かな?」
「ううん、お昼からは晴れると思うよー。雨は夜の内に降ってたんだー」
「え、そうなの?」
「ふふっ、お兄さんそれだけぐっすりだったんだね」
まあ昨日は久々の戦いのラッシュで疲労感はたまってたからなぁ。ああ、そうだ。カリンちゃんには言っておかないと。
「そういや言ってなかったけど、今日は冒険をお休みするんだ」
「そうなの? でも毎日頑張ってたもんね! お休みは大事だよ!」
「ありがとうな~。……それで、部屋でゆっくり本でも読もうかと思ってたんだけど、大丈夫かな?」
「うん、良いよ! お昼はどうするの?」
お昼か。そういや、ここの食事は朝と夕の2つだけだったな。
「あ~……。お昼はギルドの食堂で飯を食おうかな。いや、別にそこにこだわる必要は無いのか。カリンちゃん、他にもこの街に食事処とかある?」
「あるよー。お兄さんはやっぱり、ギルドの提携店の方が良いよね?」
「まあ、お金はあんまり持ち歩いてないからな。あと個室とか仕切り、もしくは持ち帰りのできる店なら尚良いかな」
「ふふ、お兄さんいっぱい食べるもんね。じゃあ、お兄さんにオススメのお店、教えてあげるね! でもその前に、朝ごはんだよー」
「うん、ありがとう」
そうして朝食を食べ、自室に戻った俺は読書を開始する。
この『マナと魔素の教本』は、目次こそ無いものの、最初は概念的な話から始まり、そして魔法の扱い方へとシフトしていく。体内のマナ……つまるところステータス欄の『魔力』を認識し、それを高い知識と技量を以て操作する事で体外にある魔素に干渉させ、魔法として発現させると書いてあった。そしてエルフならまだしも、他種族では魔素の感知が難しいらしい。
あと気になる内容としては、長く続いた『天魔戦争』もまた、世界中の魔素の量が極端に減った事で終結を余儀なくされたとも記載されていた。この辺の裏話はあいつらからかるーく教えて貰っていたけど、始まりは本当にくだらない理由で争いを始めてたからなぁ。終わりが見えなかったとも言ってたし、強制中断できてよかったのかもな。お互いに。
「さて、体内のマナの認識方法は……ここからか。イリスも魔法を使えた方が良いだろうし、2人でしっかり理解するぞ」
『プル~!』
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