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ガチャ062回目:高圧洗浄

「ふぅ~……。疲れたなぁ」

『プルル~ン』


 炎に呑まれた砦から撤退した俺達は、東の集落側へと戻って来ていた。西側に行けば冒険者達がいるのかもしれないが、まだゴブリンの残党が残っている可能性もあるしな。それに、イリスにはちょっと確認したい事もある。だから人けもゴブリンもいないこっちの方が都合が良かったのだ。


「なあイリス、さっきの炎の剣もそうだが、爆発した液体もお前が用意したものか?」

『プル~! プルプル~!!』


 なんか嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねてる。これで違いますとは言ってないだろう。という事は……。


「『性質変化』のスキルで、可燃性の液体を分泌できたってことだな?」

『プル~~』

「今レベル2になってるみたいだが、レベル1の段階でそれができたから、砦に火をつける事ができた感じか?」

『プルプル!』

「ふむ。じゃあ2になった事で別の何かができるようになった可能性がある訳か」

『プル~?』


 ふむ、試してないからよくわかんないと。

 まあイリス自身は自分のスキルの取得状況すらよくわかってないみたいだしな。俺が『性質変化』のスキルを取得している事を知って初めて、色々試した結果可燃性の液体が出せる事に気が付いたレベルだったし。


「まあでも、2になったことで一気に吐き出せる量が増えてたりもするかもな」

『プル! プルル!』


 うん、そんな気がする的な事を言ってる気がする。勘だけど。


「……さて、ここからどうしよっか」

『プル~~??』

「残党を倒すためにダンジョン側に行っても良いし、このまま帰っても良い。ただ、激戦に次ぐ激戦で精神的には参ってるし、なによりこれ以上アイテムが増えたら、イリスも大変だろ?」

『プル!? プルル!!』


 プルプルと身を震わせ拒絶の意思をはっきりと伝えて来ている。

 だよな、嫌だよな~?


「よし、じゃあ帰るか。キングもいないゴブリンの集団に、ベテランの冒険者達がやられるとも思えないしな」

『プル~』

「それに、この『魔法の鞄』を持ってることがバレたら、眼をつけられかねんしな」

『プルプル!』


 そうして俺達は帰路につき、途中で薬草類を採取しつつも、真っ直ぐに北上を続けた。そうして30分ほど経過したところで立ち止まる。


「この辺で良いか。イリス、人けがあるところに出る前に、錆び落としを済ませちゃおう」

『プル~』

「ただ、キングが持ってた『魔鉄の剣』は、俺のメイン武器にしたいから磨くだけ磨いておいてくれるか?」

『プリュ~』


 そこからのイリスの洗浄速度は圧巻だった。今までは1度に2、3本が限度だったのに、一気に4本5本と洗浄し、磨く速度さえ1.5倍くらいの速さになっていた。

 これは恐らくだが、『形状変化Lv4』による効果で、より洗浄するのに適した形と大きさに変化する事ができるようになったんだろう。後は、基礎的なステータスが跳ね上がっているのもあるか。なんせ今、全部のステータスが135もあるからな。


『プルル~~!』

「おー、意外と早く終わったな」

『プルプル!!』

「討伐した数だけでも180個。更には武器庫に転がってたものを諸々含めて、250個くらいはあったのに、流石だなぁイリスは」

『プル~』


 ぷにぷにボディを撫で回してやると、イリスはもっとプルプルした。可愛い奴め。


「んじゃ、今度こそ帰るか」

『プル~!』



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうして森の外に出ても冒険者の姿は無かったが、空はすっかり夕焼け空になっていた。なんだかいつも、バタバタしてたらこんな時間になっちゃうよなぁ。やっぱりダンジョン側を見に行かなくて良かった。行ってたら絶対日が暮れて晩飯を食いそこなってたよ。

 イリスを懐に入れ、駆け足ダッシュで門へと向かった。


「あー、ようやくザインさん達が視えて来たぞ」

『(プル)』

「……ん?」


 門の所に人が集まっているのが見えるな。

 速足で近付いていると、今朝見かけた冒険者達が泥まみれになっているのが分かった。重症の冒険者はいないみたいだったが、何人かは軽傷を負っているようで装備に血がついていたりしているし、包帯も確認できるな。

 そう観察していると、ザインさんが俺を見つけてやってきた。


「少年、無事だったか」

「ただいまです。彼らは、例の?」

「ああ。ダンジョン跡地に行って調査を進めていたようなんだがね。ダンジョンは活動していない事は確認できたものの、かなりの数のゴブリンに強襲されたみたいで、ボロボロになって戻ってきたようなんだ。死者は出ていないし、皆無事に戻ってきているのは不幸中の幸いだな」

「なるほど」


 俺はその展開を避けようとした結果なんとか最悪の事態は免れたけど、彼らはダンジョン内部で奴らに追い詰められたのか。そりゃまた大変だ。


「ところで少年、君の方はどうだったんだ?」

「バッチリです。昨日の2倍近くやりましたよ」

「ほ、本当か? 凄いな君は。しかし、君は連日働き過ぎじゃないのか? そろそろ休んでみてはどうだ」

「そうですね。粗方終わりましたし、明日はゆっくりしようかと」

「そうか! 冒険者たるもの、たまには身体を休めるのも大事だぞ。……とにかく、よくぞ無事に帰って来てくれた。ゆっくり休んでくれ」

「はい。それではまた」


 俺は例の冒険者組に見つからないよう、こっそりと門を通るのだった。

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