ガチャ060回目:ゴブリンキング
『ゲギャァ!?』
『グオ?』
砦内に残るほぼ全てのゴブリンを無力化したところで、ようやく前を注視していたキングが振り向いた。
「よお、やっと気付いたのか?」
『グオ!?……グオオオッ!!』
キングが叫ぶが、彼の背後にいた連中が集合したくらいで、その数は10にも満たなかった。そこでようやく奴は自軍の状況を正しく認識した。
『グオオ……!』
「悪いが、俺達は戦争しに来てるもんでね」
『プルル!』
ここからは集団戦かつ、ボスもいる。剣の二刀流では火力面はさておき、防御面に心配がある。なので俺は鞄から『鋼鉄の槍』を取り出し、地面に突き立てると、双剣は腰のベルトに戻した。ここからならすぐに取り出せるしな。
槍を持ち上げ刃先を蹴り、クルクルと回転させ構える。やっぱり槍もまた手に馴染むな。
【スキルの獲得条件を満たしました】
【スキル:槍の心得Lv1を取得】
おっ、早速か。まあこんな動き、スキルでも持ってないと逆に不自然ではあるか。
「さあ来い!」
『グオオオッ!!』
『ゲギャー!』
『グギャギャ!』
『プルルー!』
キングは配下に指示を出しふんぞり返っている。ジェネラルもそうだったが、こいつら自分から前に出ないスタイルなのか? 楽できていいけどさ。
「イリス、ゴー!」
『プル~ン!』
厄介な槍持ちにはイリスを投擲し、先頭の集団には足払いを仕掛ける。すっ転んだ仲間を後続のゴブリン達はジャンプして乗り越えようとするが、足払い後にすかさずもう1回転して回って来た俺の槍がクリーンヒットする。
今ので2体。それから仰向けに転がっている連中にもトドメを刺して行き、合計5体のゴブリンを仕留めた。
【スキルの獲得条件を満たしました】
【スキル:槍の心得Lv2を取得】
うん、順調!
『ゴキンッ!』
よし、今のでまた1体減ったな。
『グオオッ!!』
業を煮やしたのか、キングが前に出てこようとするが、それよりも俺達の方が速かった。追加で2体のゴブリンを始末し、残りの2体は戦意を喪失したのかキングの後ろへと逃げて行った。
まああれくらいは見逃しても良いだろう。今はこのキングを相手にする方が何よりも重要だ。こいつの武装は昨日確認したのと同じく、『魔鉄剣』と『魔鉄鎧』の2つだ。一応性能を見ておくか。
名称:魔鉄剣
品格:≪希少≫レア
種別:片手剣
武器レベル:16
説明:魔力が込められたことで変質した特殊な鉄で作られた剣。鋼鉄の武器よりも鋭く折れにくい為、戦士にとってマストな武器ではあるが、知名度が低い。
名称:魔鉄鎧
品格:≪希少≫レア
種別:鎧
防具レベル:15
説明:魔力が込められたことで変質した特殊な鉄で作られた鎧。鋼鉄の防具よりも硬く取り回しが良い為、戦士にとってマストな防具ではあるが、知名度が低い。
ふむ。キング専用にカスタマイズされた魔鉄ではなく、標準的な魔鉄装備か。鎧はまあキングに合わせて巨大化しているが、剣だけは通常のサイズのためか、ちょっとちんまりとして見える。3メートル越えの巨体からしてみれば、あんなの短剣みたいなものじゃないか?
そんなふざけた格好ではあるが、どちらも通常の鋼鉄装備よりもレベルが高い事に変わりはない。ステータスでも負けている以上、打ち合いをしても負けが見えている。となれば、鎧のない腕や足、首元を狙うのが筋だろう。
『グオオオオ!!』
「ははっ、すげー殺気だ。イリス、援護はお願いするが、無茶はするなよ」
『プル!』
『グオッ!!』
キングが剣を振り下ろし、横に回避して懐へと潜り込む。
「うおおらっ!」
『ドスッ!』
槍の一突きがキングの足に突き刺さるが、感触で分かった。差し込みは甘く、骨にまで届いていないことに。
『グオオァッ!?』
「うっ!?」
慣れない痛みだったのか、奴はついた虫を払うかのように蹴り上げる。差し込みが甘かった影響か、すぐにスポッと抜けてしまい、俺は数メートル吹き飛ばされる。
「くっそ、思った以上に硬いな」
『グオオオ!!』
「うおっと!?」
傷の恨みか、キングは俺にしか目が行ってないようで突撃をかまして来た。慌てて避けるが、その攻撃は止まることなく凶悪な振り下ろし攻撃を繰り返して放って来た。
流石にここまで暴れ回っている相手の懐に忍び込むのは容易ではないし、体力切れまで少し回避に専念してみるか。槍だからか、防御と回避に専念すれば片手剣よりも維持する力はずっと上だからな。
「そういやイリスは?」
逃げ回りつつ周囲の状況を伺ってみると、イリスがゴブリンの死骸から剣を奪い、磨きの作業の後に何か工作をしているのが見えた。何をしているのかは全く不明だが、アレがイリスにとっては今できる最大の援護なのだろう。だから、今は信頼してコイツの攻撃回避に集中しよう。
それに奴の攻撃もまた、攻撃を避けるたびに動きが洗練されていっている気がする。もしかしたらコイツも、戦いの中で成長しているのかもしれない。一歩でも間違えば致命傷だし、俺も油断はできない。
そうして回避し続けること数分。燃え盛る砦の内部に留まっているせいか、空気も薄いし何より暑い。けど、ここから外に出ればゴブリンに囲まれる危険性がある。なんとかこのまま耐え抜かなければ。
そう思っていると――。
『プルーン!!』
イリスが元気よく何かを掲げた。それは、燃え盛る炎の剣だった。
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