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ガチャ057回目:火事場泥棒

「ふぅー……。結構戦ったな」

『プルル。プルルン』


 はぐれたゴブリンのパーティに強襲を仕掛け、残った1体に援軍を呼ばせ、隠れて不意打ちからの援軍殲滅を繰り返す事3度。合計20のパーティを殲滅し、60体のゴブリンを倒すことに成功していた。そしてこのゴブリンのパーティだが、どうも街側に重点的に展開されているようで、拠点の外周を更に東に回って行くとぱたりと遭遇しなくなってしまった。

 逆に西側のダンジョン側に回ればまた多くのパーティがいるのかもしれないけど、流石に腹が減ったのもあって、俺達は仲良くパンを貪り喉を潤した。


「ごちそうさまでした」

『プルルル!』


 食材を梱包していた葉っぱをイリスに処理してもらいつつ改めて状況を見る。まず討伐ゴブリンは60だが、昨日よりも集落北側の密度がすごかった。そして昨日遭遇した見回り集団は完全に姿を消していて、今も昨日居た連中の巡回経路が見えるところで飯を食っていたのだが、ゴブリンは1体たりとも見かけない。

 ということは、昨日集落で展開されていた工作部隊と見回り部隊は完全に解体されたと見て良い。そして逆に、撤退こそしたものの両者痛み分けという形で情報を持ち帰れた西側のダンジョン方面。

 北側にはしっかりと連携できるように60体も配備させていたが、集落付近や東側には余力が一切なかった点を鑑みて、他の戦力は全てダンジョン側に回したかもしれないな。

 となれば、今連中の集落はもぬけの殻ということになる訳だが……。どうなんだろうな?


「とりあえず、乗り込んでみるか」

『プルル!』


 イリスもやる気十分みたいだし、行ってみるとしますか。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「本当にもぬけの殻みたいだな」

『プルーン』


 集落を囲っていた木の柵から中を覗き見ても、中央にいたはずのキングの姿はなく、ゴブリンの気配も鳴き声も聞こえてこなかった。

 そういうわけで、柵をそっと斬り捨て中へと侵入し、息を殺しながら付近のテントや家々を覗き込んでみるが……。

 やはりいない。完全に集落全体で無人のようだった。


「逃げ出す……なら、北側に見張りを置く必要はないよな」

『プル』

「となれば、やはり全戦力で西のダンジョンに行ったのか。となれば今俺がすべきことは……」


 キョロキョロと物色しながら中央に辿り着くと、そこにはキングが座っていた玉座があった。ジェネラルが座っていたダンジョンのオブジェクトではなく、正式な椅子であり、王様というか人間の貴族が座っていてもおかしくないほど立派な作りをしている。まあ、背もたれの一番てっぺんや、肘掛けの先っちょには動物か何かの頭蓋骨があるし、人が座ってたら人格を疑われそうではあるが。


 名前:ゴブリン王の玉座

 品格:『最高(エピック)

 種別:家具

 説明:ゴブリン王の象徴とされる椅子。これに座るとゴブリンに対する支配力が高まり、保有者が戦闘中、玉座の付近にいるとステータスが向上する。

 ★現在の保有者:ゴブリンキング


「うおっ、ステータスバフ付きかよ。けど今は玉座から離れてるから、その恩恵は受けられないんだろうな」

『プルル』

「……なら、これを貰っていけば奴の王としての求心力が下がるんじゃないか?」

『プル!?』

「入るかなー」


 俺はそう言いながら、『魔法の鞄』に玉座を入れられないか試してみることにした。どう考えてもサイズ的に入らないはずだが、椅子の4脚の内1つでも入ると、あとはするすると内部に収納されていった。この辺の仕様は、地球の時と変わらないみたいだな。


「よし、これでキングがこの周辺で力を発揮できなくなったぞ。これでもう成果としては十分かもしれないが……」


 集落を見回し、いくつかのポイントを視る。すると数十ある住居の内、1つだけ物々しい建物があった。中には金属っぽいものが視えているし、あれは武器庫か!?


「ゴブリンに持たせておくのも良くないし、武器庫を漁って、最後にはあの篝火を使って燃やすか」

『プル!』


 そうして俺達は中のアイテムを根こそぎ奪い、ついでに王の居住と思しき大きめの家からもアイテムを拝借。テントを燃やして回っていると、ようやく騒ぎを聞きつけたのか正面入り口の方からゴブリンがやって来た。


『ゲギャ!?』

『グギャギャ!!』


 どうやら集落内の人員こそ出払っていたようだが、見張りだけはしっかりといたみたいだな。まあ、正面入り口で外側しか見張っていない辺り、ゴブリンの残念さが伺えるが。


「今更2体でどうにかなるわけないだろうに」

『プル』


 そのまま2体を片付け、更に火をつけていく。居住区の全てが燃え始め、外壁にも火が移ったところで俺達は西側にある入口から集落の外に出た。火に呑まれる集落を背に周囲を確認すると、火の手が伸びている事に気付いたゴブリンの集団が正面から迫って来ていた。

 一応左右も確認したが、そちらにゴブリンもなければ木々も無い。一応火をつける前に森に燃え広がらないか心配はあったんだが、連中が伐採しまくっていたおかげか集落の周辺には木々が無かった。まあそれでも燃え広がる時は広がるんだが、それは俺の運が仕事してくれることを祈ろう。


『ゲギャ!』

『ギャギャ!』

「ま、最悪ゴブリンのせいにしよう」

『プル~』


 さーて、キングはどこかなっと。

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