ガチャ030回目:待ち伏せ
「……あれがそうかな?」
『プル~』
俺達は茂みから顔を出し、目的地と思しき洞窟を眺めていた。洞窟の入口はそこまで大きくはなく、大人が3人横並びになったらもう限界という程度の物だった。そして奥は薄暗く、地下に続いているようで遠くからでは中の状況が読めない。
「しっかし、話に聞いてはいたけど謎だよな。俺達のよく知るダンジョンとは何もかもが違い過ぎる」
『プル~。プルプル』
地球におけるダンジョンは、内部に入って各階層に出現するモンスターを倒して、ドロップアイテムを手にして地上へと帰るというのが標準的な攻略スタンスだった。そして長期間放置したり、敵の出現速度が討伐速度を上回るようなら、ダンジョンは氾濫を起こし外に流れ出てしまう。この現象を地球では『スタンピード』と呼んでいた。
けど、この世界のダンジョンは内部にモンスターが湧き出る点は同じでも、一カ所に留まって溢れたら出てくるというタイプではなく、出現した後は一定時間で勝手に外に出てくるというのだ。内部の広さもダンジョンによってマチマチで、ダンジョンの基となった土地によってその姿形は千差万別であるという。以前ここがダンジョンになった時は、洞窟内部は大体3部屋くらいで構成されていて、一番奥ではモンスターが湧き出るポイントがあったとか。
……正直それを制圧できるならしてしまった方がこの街のためにはなるんだろうけど、聞いている限り奥にあるという『魔素の噴出口』は人間の手でどうこうできる類のものではないらしい。いわゆる地脈だの龍脈だのと呼ばれる、地中に存在する大きなエネルギーが流れる川の支流にすぎず、根元を断たなければイタチごっこになりかねないし、この魔素とやらがこの世界にどれだけ重要な物かもわからないんだよなぁ。
とにかく、世界はそういう風に作られているとここは諦めておくのが上策だろう。その上で、何かできそうであればその時に考えればいい。
……なんて、暇すぎて色々考えながらぼーっと洞窟を見ていると、ようやく動きがあった。内部からゴブリン達が出てきたのだ。
『ゲギャ?』
『グギャギャ』
『ギャギャギャ!』
『ゲッギャギャー』
出てきたのは4体のゴブリン。それぞれレベル2、レベル2、レベル3、レベル4だ。彼らは何かを話し合った後、東に向かってまっすぐ歩き始めた。
正直この辺も疑問はあったんだよな。生まれてきた連中はすぐに集落に向かうのか、ウロウロと森の中を彷徨って、その果てに集落に辿り着くのかと。だが、今の連中の反応を見るに明確に何らかの方法で集落の位置を特定しているように見える。その方法は謎だが、とにかくゴブリンの出現は確認できた。あとはその頻度と、ゴブリン以外が出現するかどうかだな。暇ではあるが、これは調査なのだ。頑張って耐えよう。
……にしても、生まれてくる奴らは最初からレベルが違ったりするのか。
「生まれてすぐに格差があるのは、なんともな話ではあるよな~」
『プル~』
◇◇◇◇◇◇◇◇
そうして前の連中が移動後、ポジションを変更し別の場所から監視し続けること十数分。再び内部からゴブリンが出てきた。
『グギャ?』
『ゲッギャギャ!』
『ゲギャ!』
出てきたのはやっぱりゴブリンだが、1体だけ存在感が違うやつだった。
*****
名前:ファイターゴブリン
レベル:5
腕力:25
器用:21
頑丈:16
俊敏:13
魔力:2
知力:3
運:なし
【Pスキル】剣の心得Lv1
装備:鉄の剣、レザーアーマー
*****
革の装備を身に付けた戦士ゴブリンだった。地球でも何度か見かけた事はあるが、ゴブリンとは完全に別種の扱いだったはず。
それからついでにレベル2とレベル3のゴブリンと。……よし、狩るか。
『ゲギャギャ』
『グギャ!』
奴らは早速東の集落に向かうんだろう。ファイターを中心とした一列に並んで、こちらに向かって行動を開始した。
「……」
息を殺して待機する中、連中は俺の存在に気付かず通り過ぎようとしていた。そうして1体目はそのまま見逃し、2体目が俺の横を通ろうとした瞬間、奴らの隊列に躍り出てファイターゴブリンの喉元を掻っ切る。
『ガッ……!?』
3番目にいたゴブリン達が何か騒ごうとするが、上から降ってきたイリスに取りつかれ、言葉を発する事叶わず溺死。
「……ッ」
先頭を預かるゴブリンは背後で起きている強襲劇に気付く事なく進み続けていた。追撃を掛けたいところだが、俺はファイターゴブリンから噴出した血液をモロに浴びてしまっていた。そのせいで顔の半分が鮮血に染まり目を開く事すら困難に陥ってしまう。
『(プル!)』
そんな俺の状況を察知して、イリスが俺の腕にしがみついてきた。たったそれだけで彼の考えを察知した俺は、剣を地面に突き刺し、無事だった片目を開けて腕を前方のゴブリンに向けてフルスイング。
そのタイミングで、ようやくゴブリンは異変に気付いたのだろう。振り返った奴の視界には、捕捉のためにアメーバ状に広がったイリスの姿が映ったはずだ。
『プルー!』
『ギャギャ!?』
『ゴキンッ!』
付近に残存戦力は残っていないため、最後は盛大に首の骨を折って撃破を選択したようだ。
【スキルの獲得条件を満たしました】
【スキル:投擲Lv1を取得】
お、ラッキー。スキルをゲットだ。
「さて、一応証拠隠滅のために連中の死体は少し離れた茂みの中に隠しておくか」
『プル!』
そうしてズルズルと引き摺って現場から引き離し、飛び散った鮮血ごと証拠を別の場所に吐き捨てると、俺達は戦利品の見分を始めた。
【リザルト】
・錆びた鉄の短剣2本
・鉄の剣
・レザーアーマー
うん、美味しい美味しい。レザーアーマーはゴブリン用の革鎧だし、人が装備はできないだろうけど、武器屋のおじさんなら再利用はできるだろうな。嵩張るが一応背負い袋に入れておくか。最悪戦利品が増えまくって入らなくなったら、コイツを捨てれば良い訳だしな。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!









