ガチャ028回目:新調
「おう、やっと来たか」
「すみません、遅くなっちゃって」
なんだかんだでミランダさんのダンジョン解説は小一時間くらいあったからな。昨日は朝飯後にすぐ来るつもりで伝えてたのに、だいぶ待たせてしまった。
「まあ良い。受付嬢の嬢ちゃんに捕まってたんだろ? 話は大体聞いてる」
「そ、そうなんですね」
話が早いというか、情報筒抜けというか。流石冒険者ギルドの提携店だ。ミランダさんに聞いたところ、このお店は冒険者証さえ持っていれば、現金がなくても預けているお金でお会計までできるらしいのだ。冒険者ギルド付属の食堂もそうだったし、魔導具が普及してる社会はすげえや。
「それで、いくら貯まったんだ。見せてみろ」
「はい。6480Gですね」
昨日は最終6880Gだったけど、食堂のテイクアウトのサンドイッチ1つが100Gだからな。ちょっと割高だし、宿の食事の2倍するけど、イリス曰くこの世界で一番美味しいらしいし量も多いのでオススメなのだそうだ。まあ、まだ宿の飯と食堂の2カ所でしか食べてないけど。
「結構あるな。なら昨日の7300Gと合わせて13780Gだな」
おおー。5桁になると謎の感動を覚えるな。
「それで、お前さんが第一に欲しいのが片手の長剣だったな。今扱っている中でこの金額で買えるのは、この2つだ」
おじさんはカウンターに剣を2本並べた。
見た感じ片方は鋼鉄製だけど、もう1つは……銀か?
名称:鋼鉄の剣
品格:≪希少≫レア
種別:片手剣
武器レベル:9
説明:精錬された鋼鉄で作られた剣。扱いやすく折れにくい為、剣士にとってのスタンダードな武器。
名称:亜銀の剣
品格:≪希少≫レア
種別:片手剣
武器レベル:13
説明:鉄と亜銀を混ぜることで斬れ味を増幅させた剣。攻撃能力が高まった分、若干脆くなっている。
「うーん……。安定性を取るべきか、威力を取るかべきか」
流石にイリスでも、へし折れた剣をくっつけるなんて真似は出来ないだろうしなぁ。いやでも、イリスのコーティングなら耐久度も上げられたりするか……?
そう吟味をして俺がうんうんと悩んでいると、おじさんは呆れたように言った。
「おいおい、お前さんは説明もなしに武器の特性が解んのかよ。随分と良い眼を持ってるみてぇだな?」
「あっ……」
し、しまったー!!
「まあお前さんが迂闊なのは今に始まったことじゃねえけどな」
「……ええと、ちなみにコイツらの値段は?」
「ふっ、『鋼鉄の剣』は銀貨3枚。『亜銀の剣』は試作品だから銀貨4枚だな」
「え? 試作品って事は、おじさんが打ってるんですか?」
「たりめえよ。そうでもなきゃ武器屋は名乗れねえな」
おおー。ん? じゃあ……。
「俺が取ってきた『鉄の短剣』は、鋳潰してるんですか?」
「おうよ。傷一つない完璧な武器からは、良い素材が取れるからな。だが、それでも300Gでの買取はギリギリラインだ。これ以上の譲歩はできねえぞ」
「いえ、値崩れしないかの心配だけだったので、それなら良いです」
素材に還元してたのか。なら安心だな。
「へ、そうか。なら今後もじゃんじゃん持ってきてくれや。磨いてる方でも良いぞ」
「いやー、でもアレは……」
お茶を濁そうとしたが、おじさんはニヤリと笑った。
「なあお前さん、ここが冒険者ギルドの提携店だと嬢ちゃんから聞いてるんだろう? って事はだ。お前さんがここで何を売り買いしてるかも向こうには筒抜けだし、お前さんが何を倒して武器を持ち込んで売り捌いているかも筒抜けなんだぜ?」
「……」
おっとぉ……?? それはちょっと想像してなかったゾ。
冷や汗をダラダラと流していると、おじさんが笑い始めた。
「ガハハ、だから細え事は気にすんな。もう手遅れなんだからよ!」
『(プルーン……)』
「……はぁ、分かりましたよ。比率はどのくらいが良いんです?」
「そうさな……。鉄7:研磨3の割合でいいぞ。あまりにも数が多いようなら研磨も鉄の値段で買い取るがな」
「分かりました、期待しててください」
やれやれ、とんでもないことになったが、話のわかる人で良かった。
「それじゃ次に防具なんですけど、おじさんのオススメはどれなんです?」
「おう、そうさな。コイツは俺の弟子が作った品なんだが、お前さんは防御力より身軽さを求めるタチだろ。だからこの沼リザードの革装備がちょうど良いんじゃないかと思うぞ」
そうして並べられたのは、頭、胴、両手、両脚、靴の5点装備だった。
名称:沼リザードの全身装備セット
品格:≪希少≫レア
種別:防具
防具レベル:8
説明:沼リザードの皮を丁寧になめした装備。身軽で動きやすく、鉄製の武器程度であれば刃を通さない。
おー。良いね良いね。
「これはおいくらで?」
「全身セットで銀貨3枚だな」
「安い。買った! あと剣もそれぞれ1本ずつください。そんで使い勝手の良い方はまた今度来た時に追加で買います」
「なら、使い勝手が悪い方は磨いて出してくんのか?」
「流石にそんな事は……。それに、最悪折れてるかもしれませんし」
「ははっ、ちげえねえや。よし、んじゃ合わせて銀貨10枚だな。サービスでコイツらの鞘をつけてやる」
「ありがとうございます!」
よし、大枚叩いたし、これで森のゴブリンなんて楽勝だ! ホブは……やってみないと解んないけども。開幕亜銀が折れたら泣くぞ俺は。
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