ガチャ024回目:2日目の清算
俺はミランダさんに連れられて、今朝の応接室にやって来ていた。ここに通されたって事は色々話があるんだろうけど、これだけは言っておかなければ。
「あんまり遅くなると宿の夕食に間に合わなくなるので手短にお願いします」
「もう、ショウタくん~? お姉さん、色々言いたいことがあるんだけど……我慢するわ」
「ありがとうございます」
「今日のお昼も沢山食べていたものね。あの宿のご飯は安くて美味しいし、食べ逃しちゃうのは悲しいものね」
「そうですそうです」
この調子なら、俺が昼に4人前を平らげた事になっている件についても、特に深堀りされることは無さそうだな。あと、さっきの口論についても一旦流してくれるらしい。話の分かるお姉さんだ。
「それで、本題に入るけど、昨日見たときは無かったけど、ショウタくんは今日ホブゴブリンを倒した。間違いないわね?」
「はい、間違いないです」
「その上普通のゴブリンも11体も……。どんな風に遭遇したか、教えてもらえるかしら」
そうして俺は南の森で採取していると、スリーマンセルのゴブリン3組と、1体がホブゴブリンになったパターンの計4組と遭遇し、全て撃破した事を説明した。
「あの森でホブゴブリンが出現するなんて。まさかそれだけ巣の規模が大きくなっているという事かしら」
「あの、ミランダさん。あそこでは元々ホブゴブリンはいなかったんですか?」
「ええ、観測されていなかったはずよ。だから通常依頼にもホブゴブリンの討伐クエストは張り出されていなかったし、もしも手に負えない程存在が確認されていれば、常駐依頼にも回ってくるものなのよ」
「へー」
危険なモンスターは依頼という形で指名して、危険じゃないけど手が回らない程数を増していれば常駐依頼として回ってくるという仕組みか。なるほどなるほど。
「じゃあ明日も行くので、また遭遇したら倒してきますね」
「ちょ、ちょっと待ってショウタくん。私はあなたのステータスを知ってるわ。だから、どれだけ戦いに苦労しているかも想像できるし、とても疲労が溜まっているはずよ。なのに明日も行くの?!」
「だって、お金稼ぎたいですし」
あと、さっさと強くなってガチャを回したいし。
それからもっと強くなって、この世界に来た理由も暴きたいし。なんなら帰れるなら早く帰りたいし。ついでに言うとレベルアップで疲労も回復するし、解体がちょっと面倒だけど、ぶっちゃけあっちのダンジョン探索と違って新鮮味があって楽しいんだよな~。
「ショウタくんは、戦うのが好きなの?」
「まあ……そうですね。好きな方だとは思います」
だからといって殺し合いが好きな訳ではない。この世界の連中は全て生きているし、地球のようにただ倒せば終わりという枠組みには収まらないんだよな。だからこの世界では、モンスターを1体倒すたびに、生き物を殺したという実感が纏わりついてくる。
逆に地球に出現したダンジョンのモンスターは、生物というよりかはダンジョンというシステムによって形作られたデータみたいな存在だった。倒しても『生物としての死』ではなく、『データとしてのロスト』って感じで。
まあ、そのデータから逸脱した存在もいたが。イリスだったり、『テイム』でダンジョンから連れ出した幾つかのイレギュラーだったり。
だからあっちでの戦いの『楽しい』と、こっちでの戦いを『楽しい』と感じるのは、少しばかり意味合いが変わってくる。ただ、それを理解した上で先ほどまでの激戦を思い出しても、感じるのは生への実感だけだ。
そう感じるって事はつまり、俺は闘いそのものも好きなんだと思う。
「そう……。なら、しつこくは止めないわ。けど、時には休む事も大事なのよ。自分の身を案じられるのは自分だけなんだから」
「はい、ありがとうございます」
「それと、集まれば厄介なホブゴブリンを討伐したのに、何の報酬も与えられないのはギルドとして問題だわ。だから早期発見の報告も含めて、報酬を支払うわ」
おお、ラッキー!
「まずゴブリンだけど、レベル2が6体、レベル3が5体で大銅貨1枚、銅貨90枚ね。続けてホブゴブリンの討伐報酬は銀貨1枚。早期発見報酬として銀貨2枚よ」
「おおー!」
そんなに貰えるのか。ありがたいな!
「お金はどうする?」
「えーっと、明日の朝引き出します。武器屋さんで装備を新調したいので」
「良いけど……装備の新調って、防具も含まれているのよね?」
「あ、はい。武器屋のおじさんにも怒鳴られました」
「当然よ! 防具もなしでゴブリンと戦うのもそうだけど、そのステータスでホブゴブリンとも戦うだなんて。心配したんだから!」
「す、すみません……」
あー、これはアレだな。せっかく今まで見逃してもらってたのに、ミランダさんに連想させる単語を浮かべさせてしまったようだ。このままではお説教モードに入りそうだし、どうにか話題の変更を……。あ、そうだ。
「ミランダさん、さっきお金は全額振り込みって言いましたけど、大銅貨を8枚だけもらって良いですか? 宿の更新は早い方が良いと思うので」
昨日は銀貨1枚宿泊費2日分確保したけど、お釣りで大銅貨1枚返ってきちゃったからな。ずっと財布の中に1枚だけあって鬱陶しかったんだよな。
「……そうね。今の部屋が良いなら、契約が続いている間に更新した方が良いわ。処理をしてくるから少し待ってて」
そう言ってミランダさんは部屋から出て行った。
「……ほっ、なんとか誤魔化せたか?」
『(プル~ン)』
しっかし、硬貨が1枚でも財布に入ってるだけで邪魔に感じるんだし、次からはちゃんと預けてから冒険に行こうかな。預かりも引き出しも、手数料はかからないみたいだし。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!









