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自滅 (草稿版)  作者: メガスターダム
自発
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自発10

 西田は吉村からその報告を聞いた上で、事件の大枠が判明したと同時に大きな違和感を感じていた。この一連の犯罪の目的が義隆の殺害及び遺産もしくは経営の専有にあったとしても、飯田景子だけならその父親が明確にはっきりはしていない以上、何らかの偶然で押し通す事ができたかもしれない。しかし紫苑のケースは明らかに違う。


 紫苑の母親が紫苑と疎遠になっていることで、発覚するまでの時間がどの程度掛かるかはともかく、いずれ紫苑と高須の血縁関係は実母からバレる可能性が高かったという点だ。飯田景子まして高須自身が、紫苑の実母と面識があった上に出生の経緯に密接に関わっている。紫苑の高須家との血縁は、飯田景子の血縁関係と違って確実にバレる可能性が高いのは自明だ。


 直接の紫苑の殺害にはアリバイ上は高須が関与していないとしても、その時点で間違いなく再び相続などで疑われる要素が出て来る。一方、飯田景子についても完全にいつまでも実相が浮かび上がってこないとまでは断言出来ないが、確率的には紫苑絡みよりバレル危険性は少ないだろう。とにかく、ここまで大掛かりで綿密だと思われた仕掛けと比較して、少なくとも紫苑の件からは大きなほころびがあるようにしか思えない。


 ただ、義隆が紫苑の出生並びに存在を知らなかっただろうということもはっきりしたので、義隆には紫苑が殺害された時点で不都合なことがバレなかった可能性が高いこともまた事実と思われた。


 吉村にもその点を指摘するとともに同意を得た。その上で、吉村がまだ竹下に連絡していないと言うので、取り敢えず竹下にまず報告させ、その件についても竹下に指摘しておいてくれと、取り敢えず指示を与えた。無論、竹下ならこのことに気づかないはずもなかったが……。


※※※※※※※※


 15分もしないうちに竹下から西田に電話が入った。やはり竹下も大いに違和感を抱いたようで、

「今回の目的は想像していたものとは違う可能性が高くなったように思います」

と西田に告げた。ただ、その声は落胆というより、新たな謎に立ち向かう気概のようなものが含まれていることを、電話越しではあるが西田は感じていた。


「今の所なにか思うことはあるか?」

訪ねた西田に、

「正直、なにかこれと言って断定出来るほどの動機は思い浮かびません。ただ、本質的に一連の殺人が、最終的にバレること自体は恐れていない感じがするのは確かでしょう。いずれバレても良かったんだとしか思えない」

と答えた。

「バレても良かった? 取り敢えず相続関連目的は除外した方がいいんだな?」

「多分そう考えて良いと思います」

竹下の回答に更に踏み込む。

「そうなってくると、佐藤貴代についてはともかく、全体的には血縁関係絡みの事件である構図は維持したままだから……。目的は復讐とかそういうことになると言うのか?」

西田は部外者に聞かれているわけでもないのに最後は声を潜めた。ここで竹下は一呼吸置きたかったか暫しの間沈黙を貫き、意を決したかの如く、

「仰る通り、その可能性は十分にあるのではないかと」

と頷きながら呻くように告げた。


「そうなってくると、この一連の目的の最終着地点が見えないが? 捕まっても構わなかったのか? だったら、時間稼ぎにしてもここまで大掛かりにしたことと釣り合いが取れない。なんだこりゃ」

匙を投げたかのような言い草の元上司に、

「その点は明瞭にはなってないのは、我ながら残念としか言いようがないのが本音ですよ」

と竹下が半ば同意してくれたのは嬉しいが、頼みの綱とも言うべき竹下も皆目見当が付いていないのは困ったものだ。




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