♭144:現行かーい(あるいは、コンベアマチック/アニオンペルソナ)
はっきりの、困惑。
いつもだったら、その「世代の私」に主導権諸々を譲り渡して静観決め込む私なのだけれど、今回のは、ええと、何だこれ。
覚えがねえ……よりにもよって「アタイ」呼びしてた頃の自分なんて、やっぱり無かったよね……と、記憶の奥底から浚いに浚い出してみても、結論は、「これ過去の自分やな↓い→」……
でも、そんな内底の私の逡巡も何とやら、「アタイ」の方は、完全にテンションギリ詰めのピーキーな人格を、隠すこともなく曝け出していこうとしているよ怖いよ……
「どうやら……やる気になったようだね……ッ!! それでいい……全力のお前を倒してこそ……アタイの『獣字』も呼応して輝こうものだし……」
間合い3mくらいを保ちながら、互いに珍妙な姿勢でなおも空中を飛翔し続けるという、悪夢もかくやな異世界空間の中、対局相手のユジシは、そこだけは特徴の乏しい、平たい顔に力を集めつつのたまってくるけど。
「ククク……そうさねえ……まあアタイの全力を喰らったら、相殺することもかなわん事態に陥るだろうことは火を見るよりも明らかだけどねい……」
それに呼応して私の口から出て来たのは、そんな正体不明の、何キャラか判別できない類の言葉であったわけで。いや、ほんと誰?
「……」
奇しくもアタイ同士の同キャラ対決みたいな様相を呈してきてしまってるわけだけど、私の脳裏には、ひとつの仮説めいたものが混沌思考の中で幅を利かせ始めて来た。
同調。
六年という、短いスパンでしか物事を……人生を考えられなかった私は、周りの人間関係をも、手っ取り早く済ませようとしていたんじゃあなかったっけ。
そのための、もう能力と言っても差し支えないほどの対人協調術、それが「同調」。私は決して深からず、かと言って浅からず……人との距離を絶妙に測りながら、関係を築いてきた。いつ終わってもいいように、自分の周りに「いかにも」な関係を、人物相関図みたいな整然としまくっている「関係」を、構築してやいなかっただろうか。
来る者は拒まず、去る者は追わず。
その結果、私は相対する「人」を鏡で反射するかのように、自分の表層の「人格」をも形作っていた……つまり、関わったヒトの数だけ、「私」がいる、ということに、
……なりやしないだろうか。
それが、カリカチュアライズされて今この瞬間、発動されたというのなら。
わかってきたぞ。私の中には、まだ、眠れるダメの能力があるということを……っ!!(いいのか悪いのかは置いといて)
こうなりゃ、それに乗っかってぶちかますのみ!! いっくぞぉぉぉぉぁぁぁぁっ!!




