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♮120:蒼穹ですけど(あるいは、見上げて/go around/サウザンクロッサー)


<各自、ご搭乗お済みでしょうか? ただいまより、『摩訶★大溜将戦』二次予選を開始したいと思います!!>


 今回の実況少女は本当にクセの無い感じであっさりさっくりと進行をしてくるな……いや、それこそが求められるべきことなのかも知れないけど。


 通過順位ギリもギリだった僕らは、慌ただしく次の会場という場所に連れてこられるや否や、何か分からないけれどとりあえず選べと言われて、「搭乗機」とやらを選択した。


 したのだが。


「……」


 素立ちの態勢の翼はまだしも、その前に脚を開いて四つん這いの姿勢を取っている僕は何だ。あまり体の柔らかくない僕にとって、パイプに支えられているとはいえ、この時点で既にしんどいんだ↑が→


<各々の対局者たちは、バラエティ豊かな96種の『搭乗機』に乗り込み、これから大空への旅へとテイクオフしていただきます!!>


 VRってことか。乗る前に付けさせられた「バイザニック=ゴーグラー」(と言っていた)は、僕ら対局者の視界に、無駄に技術力高そうな感じで流麗な待機画面を展開しているものの、目の前に極薄の黒い長方形というその見た目は、明らかに映しちゃいけない人間の目許に入れられる黒目線のような佇まいをこれでもかというくらいに醸し出しているわけで。これで服着とらんかったら実録もんそのものじゃねえか……


 そんなことを考えている暇は無かった。


「……!!」


 突然、轟というような風の音が、確かに身体全体を包んだかのように感じた。いや、耳に付けた小型イヤホンからの音声だとは思うのだけど、それにしてはの臨場感だ。毎度毎度思うことだけど、ここの運営のカネの使い方は明らかにベクトルがおかしい。聴覚が捉えたその臨場感から遅れることコンマ3秒、視界360°近くがいきなり青一色に包まれた。


<……本機は、実際の飛行機のような、複雑な操作を必要とはしない。これはあくまでDEPを撃ち合い、その優劣を決める『対局』であるから>


 無線のような、いい感じのざらつき方の音声が耳元に届けられるけど、じゃあこんなんその物が要らないよね……という至極まともな突っ込みは、まともであればあるほど受け流されること必至であるため、僕はノーリアクトのまま流すに留める。


 どれくらいかは正確には推し量れないものの、かなりの高さの上空に、浮かんだままの状態の、イカれたタンデムで浮かんでいる参加者たち。ちょっとした前衛芸術を感じさせもする狂気の画が、いま確かに展開しているのであって。


 しかし、盛り上げるためなら簡単にその本質を諦めてくるのが運営のやり口だ。僕は即座に、前屈に近い態勢の自分の手元にある操縦桿らしきものをてさぐって確認する。先んずることが出来なければ、この場を制することはできないはずだからッ!!


 珍妙なる恰好にて僕は気合いを入れ直していく。


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