冒険の鍵
しっかり探さないとと周りを見渡した途端、右の壁にあるはずの無い物を見付ける。
確かめようと近づくと、そいつは壁に埋もれるようにして立っていた。
丸い頭部をしていて、小柄な身体に緩やかな衣をまとっている。
手には金属の棒を持っていて、その先端には丸い輪っかが連なっていた。
全体が石造りの「それ」は、日本人なら一度は見たことがあるもの。
「お地蔵様」だった。
「サイ。どうし、何だこりゃ?せんちょー。」
「あ?…オル。」
「あ~。アサイー帝が採掘場によく置いた守り神だね。事故が起こらないようにって。」
「さっそく見つけたか~。さすが。」
「いい勘してるよ。その調子で頑張って。」
「…はい。」
皆、お地蔵さんを確認したら散っていく。
俺はといえば、お地蔵様を凝視して一歩も動けないでいた。
ちょっと変だなとは思ったんだ。
偶然にしては俺が「見つける」確立が高すぎるって。
そりゃわかるわ。作ったのが同郷だもんよ。
たぶん、身長が同じくらいで、目線も同じくらいなんだろう。
そうなると、アサイー帝って名前からして怪しいよな。
「浅井さん」ってとこか?
俺以外にもトリップ経験者がいたってわけだ。
しかも土チート。羨ましい。
俺にはトリップ特典なんか無かったつうのに。
ブツブツと考え込んでると、頭にポンとでっかい手が乗る。船長だ。
「知ってるのか?」
「お地蔵様って言って、故郷の守り神です。」
「…。そうか。で、何かわかりそうか?」
これだよ。
ちっとは感慨にひたらせてくれよ。って無理か。船長だもんな。
「何だ?」
「いいえ。何も。」
だから、何でわかんだよ。
もうさっさと言われてる鍵でも探すか。
とと、その前にお地蔵様に手を合わせとこう。
お地蔵様が置いてある意味って、たしか鎮魂だしな。
ん?この錫杖の飾りって、何か変わってんな。
普通、錫杖っつったら、丸い輪っかが幾つもついてるもんだよな?
でも、これ輪っかだけじゃなく棒みたいなのもたくさんあって、じゃらじゃらしてる。
これってもしかして。
「あ。抜けた。」
「んだ?こりゃあ?」
「…船長、これって輪っかの飾りがついてるもんなんです。」
「…他にもいろいろついてんな。」
「多すぎます。」
「オル。ちょっと来てくれ。他はそのまま続けてくれ。」
船長に錫杖のことを説明すると、オルが呼ばれる。
俺が手に持ってる錫杖を手渡して、変だと思った所を説明するとしげしげと観察し始めた。
「…当りだよ。サイ。これがカギだ。」
そう言ってオルがつまんだのは、ひまわりの花の彫刻がついた棒だった。
手みたいな葉っぱが彫られてるとこまでさっきの紋章と同じだ。
これがカギだったらしい。
また大胆な隠し場所だよな。
でも、これ、彫刻のとこ以外はただの棒に見えるけどな?
これでどうやって開くんだ?




