冒険のための一時帰還
戻った俺たちを残ってた皆はホッとした顔で迎えてくれた。
危険な場所に行ってたんだ、戻ってこないかもしれないもんな。
外はすっかり夕方だ。
もう日も沈む。この時間に戻って来れて良かったな。
「おかえり。」
「ああ。ただいま。」
「ただいまぁ。」
船医のオルが出迎えてくれる。
テキパキと船長以下、先行メンバーの様子を見てとると、「大丈夫そうだね。」と笑って頷いた。
「中はどうだった?」
「完全な未発掘だった。罠がすべて健在だ。対策がいる。」
「もう、あちこち罠だらけよぉ。」
そんなことを話しながら、渡し板を渡って船に戻っていく。
俺はどうすればいいんだろうか?
松明の後始末をしているヤジスさんを見ると、首を振って船長と行けと指示された。
船に戻ったら船長の世話をするって話だったし、それでいいんだろう。
ヤジスさんに了解の意味で頷いて、急いで船に戻る。
船長の世話となると、待たせるわけにはいかないからだ。
とっくに船長室に行ってると思ったのに、船長たちは甲板にいた。
俺が来たのを見て笑ってる。だから、何だよ?
「サイ。お疲れ様。大活躍だったんだって?」
「何がですか?」
「自覚が無いのよねぇ。サイちゃんすごいことしたのよぉ?」
すごいことって何だ?
俺、ヤジスさんたちについてっただけなんだけどな。
首を傾げると、船長が俺の頭をガシガシとかき混ぜる。
ちょ、首がもげるって。
「初めてにしちゃあ、上出来だ。やっぱりお前はここと縁があるな。」
「呼ばれてるのねぇ。サイちゃんが気づいた罠はヤジスもミランも気づかなかったのよ?」
「すごいよ。先行部隊に入れて良かったね。」
褒められてんのか?
そっか。俺、役に立ったんだ。
嬉しくて頬が緩むと、船長たちもつられて笑ってくれる。
必要とされるっていいよな。
俺、日本でこんなに働いたこと無かったけど、こんなに必要とされたことも無かった。
生きてるって実感のある毎日ってのはいいもんだ。
「サイっ。部屋にエール持って来いっ。」
…すげー働かされるけどな。




