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ただいま

副船長と一緒に縄を伝って、船長室の下に付けていた小舟に降りた。

上からは悲鳴と喧騒しか聞こえねえ。



もう大砲の打ち合いはしてないみたいだ。

まあ、相手の船がすぐそばまで来たら意味ないもんな。



「おう。無事だったか。サイ。」

「はい。戦利品です。」

「くくくっ。やるじゃねえか。」



迎えてくれたのはヤジスって船員。

俺がメシを食いっぱぐれてた時にパンを取っといてくれた人だ。



俺が来る前はこの人が船長の使いっぱしりだったんだとか。

だから、この人は俺に対してことの他気を使ってくれる。自分のために。



俺がいなくなったら、また怒鳴られて蹴られる日々に逆戻りだもんな。

「健やかに眠れるっていいなぁ。」とか聞いた時は涙が出たわ。



俺は寝てる途中で船長にたたき起こされたことなんか無いけど、結構あるのだそうだ。

どうやら俺は船長の機嫌を取るのが上手いらしく、俺が来てから怒鳴る回数も減ったらしい。



あれで減ったって、どんだけ不機嫌だったんだ。

そっちの方が怖ええよ。



まあ、そのおかげで、俺は船長の世話役として船の中での立ち位置を確立しつつあるんだけどな。

おかげで、他の船員とも上手くやっている。



最近なんか、船長に会う前に俺に機嫌を確認に来るくらいだ。

俺の予想が大体当ってるからだけど。



俺はもう普通の生活は出来ないだろう。

海賊船が居心地いいだなんてな。夢にも思わなかった。



副船長が華麗に船に降りると、俺たちを乗せた小舟はこっそりとヴァルヴァンク号に向かって漕ぎ出した。

右舷を敵側に付けたらしく、左舷の方に回ってる。



降ろされた縄梯子を上っていくと、すぐに中に通された。

外はいろいろ飛び交ってて危ねえもんな。



そのまま船長室まで副船長と一緒に行って、ここで船長が帰ってくるのを待つように言われた。

この船では、船員が船に返ったら最初に挨拶するのは船長と決まっているのだそうだ。



今まで船から降りたことなかったから知らんかった。

まだまだあるんだろうなあ。



そんなことを考えながら、船長の部屋を掃除したりしつつ、気長に待った。

どれくらい経っただろう。窓から差し込む光が強くなっていく。



もう夜明けか。

結局ほとんど寝てねえな。



そんな風に思っているとどたどたと荒々しい足音が聞こえてきた。

船長か?まずは謝らないとな。



「おうっ。戻ったか。」

「はい。先程戻りました。すみません。ご迷惑おかけしました。」

「おめえのせいじゃねえだろ。あのアホが悪い。」



不機嫌そうな顔で唸るように船長が言う。

朝日が金髪に反射してすげえ迫力だ。



やっぱ船長はかっけえよな。

海賊ってのはこうでなきゃ。



ってそんなこと言ってる場合じゃねえ。

マズい、マズい。戦利品渡さなきゃ。



「あの。これ、とこれとこれ、頂いてきました。どうぞ。」

「おう。…ってこりゃあ、ギンジョの特級じゃねえか。あの野郎。よくこんないい酒持ってたな。」

「隠してあったんで頂いてきました。」



「はははっ。そんで?この箱は?」

「あ。鍵かかってたんで、中までは…。こっちは水晶です。」

「そうか。後でヤジスに開けさせるか。こっちは…おおっ。こないだん時に見つからなかったやつじゃねえかっ。どこにあった?」



「枕の下です。」

「ぶっ。まさかそんなとこに隠す海賊がいるとはなっ。はははっ。」



俺の戦利品で船長は上機嫌だ。

良かった。これで、後でいきなり思い出して不機嫌になることもないだろう。



それにしても、隠し場所としてやっぱり枕の下はあり得ないようだ。

あの船長、いつか自滅すんな。もう死んでるかもだけど。



「さて、お前の土産もみたことだし、メシ食いに行くぞっ。サイっ。」

「はいっ。…え?」

「?どうした?サイ?」



「あ、あの、名前。」

「ああ。お宝ぶん捕って来れたんなら、もう見習いじゃねえだろ?」

「あ。はいっ。」



認められた。船長に。

名前で呼ばれたっ。



それだけのことに浮かれて、疲れてるはずなのに身体が軽い。

船長について行きながら俺は心を決める。



これから、この傍若無人な船長について行くんだ。

ここが俺の家だ。皆が俺の家族だ。



帰ってこれたんだ。

ただいま。


これで、見習い時代は終了です。

海賊が好きというノリと軽さだけで突っ走りました。

お付き合い下さりありがとうございました。


まだまだ冒険はしてもらうつもりです。

船の描写の書き加え作業も一応終わりました。


船の構造上、変だなって部分もあるかもしれません。

ですが、魔法も使う世界なので、勉強した上で創作したりしました。

そういうもんだと思って頂けると嬉しいです。


現在、アルファポリスさんの方で連載を再開しています。

更新したら活動報告でお知らせしますので、また覗いてやって下さい。

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