いいもん見っけ
幾つか部屋を除いたけど、どれも普通の個室だった。
仕方なく、部屋の前にあった階段をそろっと登っていくと、装飾のされたドアが目に入る。
中に入ると、奥に大きな出っ張った窓のある、キンキラキンであちこち装飾された趣味の悪い部屋だった。
広いなあ。これ、あの船長の部屋か?
無いわー。この中で寝るとかどんな拷問だ?
そこもかしこもキンキラキン。うわっ。この壁、顔映るぞ?あ。鏡だった。
汚ねえ鏡だなあ。
この世界の鏡って地球と変わりねえくらい良く映るんだよな。
なのに、壁と同一化するほど曇ってるって…いったいどんな使い方したらこうなるんだか。
やっぱ、持ち主がイマイチだと持ちもんもイマイチなのかね?
まあいいや。
酒、酒。いいやつ持ってんだろ。
お。ベッド脇に金のかかってそうな戸棚はっけ~ん。
腰までの小さいやつだけど、上にガラスのコップと銀製の盆が乗ってるから当りだろ。
良し良し。幾つか高そうなビンがある。
お。奥にあったの未開封だ。これにしよ。
後は…枕の下、とか?
まさか。ははは…あったよ。
べた過ぎね?
もうチョイ頭使わねえと、あの船長、そのうち部下に裏切られんぞ。
汚ねえボロ布に包まれてたそれは、紫色の綺麗な球体だった。
水晶…かな?綺麗だなあ。
よし。これも貰ってこ。
シーツを失敬して、球体を包んで腰にくくりつけてと。
後は、とっとと逃げるだけだ。
とにかくあの船長が戻ってきちゃ困る。どっかに隠れないとな。
コンコンッ
ビクウッ
やっべ。見つかったか?
「…副船長?」
振り返った先にいたのは、何故か窓からノックしているバクス副船長だった。
う・し・ろ?後ろに行けってことか?
俺が数歩下がると、キンッて音がしたと思ったら窓が開いて中に入って来ていた。
すげえ。見えなかったぜ。さすが剣豪。
「よかったわぁ~。サイちゃんがすぐ見つかってぇ。心配したのよ?」
「ありがとうございます。すみません。俺、気を失っちまって。」
「いいのよ。相手は呪術師を雇ってたみたいだから。うちの船長でもない限り相手にするのは無理よぉ。」
呪術って、あの呪術か?
ヤバいのが相手だったんだな。
つうか、船長なら相手できんのか。
たまに思うけど、あの人ホントに人間か?
「それより、サイちゃんもちゃっかり頂いてきたみたいね?」
「はい。酒と何か良さそうな箱と、あとこの中、なんか水晶みたいなやつです。」
「あらっ。良く見つけたわねえ。こないだは見つからなかったのに。」
「水晶っすか?枕の下にありましたよ?」
「…そこは盲点だったわぁ。ま、いいわ。行きましょ。船長が暴れてくれてる間に。」
やっぱ暴れてんのか。すげえ音だもんな。
怒ってんだろうなあ。
あのアホ船長どもは、今頃地獄を見てんだろう。
悲鳴がひっきりなしに聞こえている。
こりゃ、全滅させる気かな。
成仏してくれ。ナムナム。




