昇月決戦・〖世界は月影を赦し降ろす〗No.1 月と世界よ
外界と異界を繋ぐ『蜃気楼の屋敷』
今回の旅の目的の一つである〖世界〗による月への復讐。
オルビステラの親友である〖太陽〗の人格を歪ませ、フレイがフレイヤ地方で暗躍する切っ掛けになった存在が〖月〗である。
その親友の仇が異界の扉をあちら側から破壊し、突然、現れたのだった。
「ジーンさん。何でアイツ等。自力で異界側から、あんな頑丈そうな扉を破壊出来るんですか? 俺はまだ〖赤い指輪〗を使っていませんよ」
「わ、私だって。あの扉の鍵に触れてもいないわ」
俺とモルジナ王女は隣に立つジーンに質問したが、ジーンさんの表情はとても曇っていた。
「……〖博士〗の技術でしょう。彼は昔からヘファイストス地方の蜃気楼の研究にかなり熱心でしたから」
「〖博士〗?」
「ちょっと! それよりもどうするのセツナ様。エリスちゃんだけ、あっちに吸い込まれちゃったわよ。助けに行かないと!」
「……ああ、だが。その前に扉から出てくる奴等をどうにかしないといけないな」
「ですね……〖アマゾネス〗〖メジェド〗の一族ですね。アリババ国のキャラバン皆さん! 扉から出現する方々の対象をお願いいたします。彼女達がこのフレイヤ地方を侵略する敵対者です」
「「「「「オオオオオォォ!!」」」」」
〖異界 イシス〗を繋ぐ扉から出てくる兵士は皆、女性ばかりだ。だがその身体は筋骨隆々で強靭な肉体をしていた。そんな奴等がどんどん現れ向かって来る。
「おう! 任せとけ。ジーンのおっさん。〖赤宝石〗」
「……女の戦士ばっかり。〖青宝石〗」
アラムとディアスは収納魔道具から数個の宝石を取り出し空中へと放り投げ、何かの詠唱を始めた。すると空中に投げられた宝石が、空中で螺旋を描きながら扉からやって来る奴等を攻撃していく。
「あれは火と水の魔石を使った遠隔操作の魔法か? フレイヤ地方の……〖イシス〗の屈強な兵士があんなに簡単に倒されるなんて……」
「ええ、あれはアリババ国特有の魔法になります。魔石を使用した属性攻撃になります。そして、あのご兄妹はその魔石操作にかなり長けておられるのです」
「……成る程。だから。第一陣のキャラバンに選ばれたんですか」
「その人選で育てさせて頂きましたから。では、私はアラム様とディアス様の所へ向かいますので、新ボス様はオルビステラ様の元へと向かって下さい」
ジーンさんはそう告げると金色のランプを懐から取り出し擦り始めた。すると黒い煙がランプから吹き出し始め、その煙が青竜刀のような大型の刀に変わった。
「そのランプ……やっぱり。貴方は昔、一度ここを案内してくれた〖魔神〗でしたか」
「はい、あの時は大変お世話になりました。勇者様……申し訳ありませんが今回もご助力宜しくお願い致します。〖香切・甘〗」
煙の刀から甘い香りが敵側周囲に漂い始めた。そして、その煙を吸った異界の兵士達は可笑しな躍りを躍り始めた。
「ジーンさん。その技は幻覚系攻撃ですか?」
「はい。とても強力な魔薬です。しばらくはこれで時間を稼ぎ、その間に扉の修繕を行いたいと思います。この隙に新ボス様はオルビステラ様の方へ!」
「ありがとうございます……ジーンさん。転移魔法〖転〗」シュンッ!
俺は転移魔法で少し離れた場所に居た。オルビステラの元へと転移した。
ズズズ……
「おお……〖匣〗と併用で使うとこうなるのか」
「あら。来てくれたの? 〖担い手〗さん」
「オルビステラ……大丈夫か? 顔が暗いぞ」
「そりゃあ。そうよ! あれだけ虐めて遊んであげた私と再会したんですもの。さっきも強い言葉で私を罵倒してたくせに、太陽の話をしたら縮こまっちゃたんですもの」
「……あれが〖月〗。オルビステラの敵か」
「ええ……そう。復讐対象よ」
「そうか。分かった! 天雷魔法〖嵐雷〗」
ドガアアアンンン!! バリバリ!!
「キャアアアアア!! 何よ? いぎなり? 攻撃ぎいぃ?!」
「な?……何してるの? 〖担い手〗さん」
「アイツは〖神々の黄昏〗なんだろう? だったら俺にとっても復讐対象だ。やるぞオルビステラ。奴にこれまでの罰を報いらせる為に」
「……フッ……流石、自分から私の復讐を手伝うとか言った変な人。何で私よりもやる気になっているの……そうね。やりましょう。このフレイヤ地方を怖そうとする悪いお月様退治をね」




