労働からの解放を
剣聖グレイが地形を変え、建物を作り、城壁を作る。
そして、ラインバッハが人を集め、俺が転移魔法で新都市『ガルクドウルク』に大量の人と物資を転移させてから一週間位経ち。色々と落ち着き始めた今日この頃、俺はライン財団の本部建物で昼食を取っていた。
『ガルクドウルク』ライン財団・本部
カチャカチャ‥‥‥ポロッ‥‥‥‥ガシャーンッ!
「おっと‥‥‥‥スプーン落ちた‥‥‥‥」
「セツ君?!」
「ちょっと、大丈夫?神成君‥‥‥凄い疲れてる顔をしてるわよ」
忙しさの山場は超えた‥‥がっ!連日の激務で疲れが貯まっているようだ。
「‥‥‥‥このまま此処にずっと居たらライトニング商会やライン財団の社員達に頼られ続けられちゃうな‥‥‥‥あれ‥‥‥‥作るか」
「あれ?ですか?それはいったい?」
「つうか?本当に大丈夫?さっきからブツブツと‥‥‥私の部屋来る?」
「なっ?!恵!どさくさに紛れて何言ってるんですか?イヤらしい!」
「はぁ?貴女こそ何言ってるのよ!神成君の寝床に毎日の様に入り浸ってるくせに!でも、最後にはルシファーさんに檻に入れられて何もできずに終わってるだっけ?」
「そ、それを何故、知ってるのですか?」
「ラファエルさんが教えてくれたわ。あの子は頭が良いのにセツナが絡むとバカになるとか言ってね」
「な、なんですか!!それは!!」
俺の近くで少女2人が言い争いを始めたが気にしない事にした。最早、いつもの事である。
「えっと‥‥‥‥魔道具箱はこれで道具は‥‥‥‥昔の残骸がこんなにあれば‥‥‥いけるか」
カチャカチャ‥‥‥‥
俺はある代物を造るために黄金の宝物倉から『魔術院』時代に使っていた魔道具箱と各種パーツを取り出して行った。
「だから、私達は裸の付き合いをしていてですね」
「‥‥‥‥それって裸を見られても最早、反応すらしてもらえ無いって事じゃないの?」
「そ、そんな事ありませんわーー!!セツ君も何かの言って下さ‥‥‥‥セツ君?」
「何か作り始めたわね?何してるのかしら?」
‥‥‥‥俺がこの世界『アリーナ』に訪れた時、スマホ、タブレット、パソコン等も持って飛ばされてきた。
その中には地球でのあらゆる知識や情報が詰まった電子書籍等を述べ数十万冊をアプリとしてインストールさせていたのだ。
これも地球での身分。分家としてとはいえ、神成家の人間として恥じぬ教養を身につけろと本家の人達に言われていたからである。
だが、その事が幸いしてか知らずか。異世界に飛ばされてからもアリーナ世界の勉強と平行して地球の知識も忘れずに身に付ける事ができたのだった。
そう、俺はアリーナの魔法文明の技術。地球の機会文明の技術。その両方を知っている人間になったということだ。
そして、その技術を生かして、『魔術院』時代は自作魔道具の作成やヘファイストス地方の『オアシス』の魔道具技師達や鍛冶師と協力して色々な試作品を造ったものである。
‥‥‥‥そう、色々と造り。カミナリシリーズやら魔道具技師『ナルカミ』とか言われた時期があったが、別にそれは俺が最初から1人で考えて造り上げた物ではないのだ。
スマホ、タブレット、パソコンにインストールされている地球の知識をこの機械技術が発展していないアリーナの世界に組み込んだだけなのである。
オマケに神成家は代々、技術者の一族。幼少期には、勉学、武道と並んで。機械工学の事まで教育キャリキュラムに入っていたのだ。
そのお陰なのか、魔道具作成にもかなり役にたった。
そして、思い知ったのだ地球のあらゆる技術は魔法世界のあらゆる技術をも両替機していることを。
魔法というのは本当に便利だが、それだけであらゆる事が解決してしまう。悪く言えば発展が無いのだ発展が、まるで人類を進化させない為に『想像主』が人類に考えるのを放棄させているように俺は考えてしまった。
‥‥‥‥おっと!いけない、いけない、今はある代物を急ぎ造り終えなくては‥‥‥危うく、この世界のタブーの事を考えてしまうとこだった。
神や―女神―等と言われる天井の方々は居る‥‥‥そう居るが、俺は思う。その更に上の存在が居るのだと。今はエウロペ大陸の為に『益』として見られている為、何も干渉はないが‥‥‥心の中では幾らでも『想像主』の事を考えても良いだろう。だか、発言には気を付けなくてはならない。
彼らに目を付けられては一貫の終わりなのだから。
「フゥー!できた!できた!これがあれば俺は解放される。サラバだ!労働よ!ハハハ!」
しかし、これだけの量の部品よくもまぁ、入ってたな。タマキの中(黄金の宝物庫)は‥‥‥『妖精国』の時もこの中に兵士を数万人単位で居れてたし、ヘファイストス地方の石油も全て回収したとか言ってたし‥‥‥‥この袋の中、大陸一つ分位に広かったりするのだろうか?
「‥‥‥‥まさかな」
「セツ君。何ですか?‥‥‥」
「この大きな門は?」
「ん?転移魔道具だ。これをヘファイストス地方の各都市部に設置すれば擬似的な転移ができるんだよ。アルトネ大陸の『あの人』にも一つあげたな確か。」
「転移魔道ですか‥‥‥それよりもセツ君が機械技術もあるなんて知りませんでしたわ」
「ん?そうか?まぁ、アヤネには俺の特技なんてまんまり見せて無かったしな。それにこれは地球技術のただの応用だからな。そんな、対した事じゃないぞ。要はパクリだよ。パクリ」
「‥‥‥‥ねぇ、アヤネ、パクリでこんなに複雑な作業できる物なの?」
「そ、それは、私の口では何とも言い難いですが‥‥‥この転移門に使われている技術が凄いのは良く分かりますわ」
「そうよね‥‥‥何でこの男はこんなにも無駄にハイスペックなのかしら?変態のくせに」
「それは私の許嫁ですから当たり前ですわ」
「『元』ね。天王洲 アヤネさん」
「‥‥‥ブチン!‥‥‥水魔法『水割』」
シュバシュバ!
「へ?」
俺の後で何か布が擦り切れる音がした。俺は振り向かない事にした。
「‥‥‥しばらく、調教してませんでしたね。恵!‥‥‥えいっ!」
ズボっ!
「は?何ではだ‥‥‥‥‥ニャアアアア!!何を入れて!!!ニャアアアア!!」
「フフフ、久しぶりの素晴らしい光景ですわ」
少女、二人の大乱闘ならぬ。ランデブーが突如として始まった‥‥‥‥俺は絶体に後を振り向かないことに決めた。まだ、生きていたいからだ。
「神成!!タシュケテエ!!ニャアアアア!!」
「フフフ!恵!!!」
「‥‥‥『我の大切な契約者達よ。憩いの部屋へと戻れ』」
俺がそう唱えると。
シュン!シュン!
「「へ?」」
2人は黄金の宝物庫の中へと強制送還されていった。
「此方の世界まで来て、何をしているだよ‥‥‥‥あぁ、床をこんなに散らかして。全く!」
俺はそう言いながら、散らかった部屋を粛々と掃除し始めた。
数刻後。
元十字軍占領地『テンプル』
俺とラインバッハは剣聖グレイによって解放の地となったテンプルに来ていた。
「どうだ!ラインバッハ。転移魔道具の効果は?」
「‥‥‥‥まさか、ガルクドウルクからテンプルまで一瞬とはな、それもナルカミ氏の転移魔法無しか。素晴らしいな」
「だろう?これをヘファイストス地方と各地方の境目の検問所に設置すれば俺が最早、不要になるだろう?」
「確かにな‥‥‥‥だが、転移魔道具に使われる魔力は何処から来ているんだ?よもや、ナルカミ氏の魔力を?」
「いや、『ガルクドウルク』の龍脈とライン財団の社員の魔力を微小して動かしている。」
「何?龍脈とうちの社員達の?‥‥‥成る程」
「あぁ、ちなみにこの事を社員達に話したら、ラインバッハ様の為ならばやりましょう!とか、言ってたぞ」
「‥‥‥‥俺に一言、相談して欲しかったが‥‥‥お互い忙しかったから無理だたようだな。仕方ないか」
「これで俺は用済みだな?ラインバッハ!」
「‥‥‥お前、何でそんなに目を輝かせているんだ?まさかこの多忙な時に去るとでも言う気か?ライトニング商会・社長ナルカミ氏よ」
ガシッ!
「手を放せ!ラインバッハ!俺は最早、自由の鳥。何人も俺の旅を邪魔はさせない」
「俺が貴様を逃がすと思うか?さぁ、労働の喜びを共に分かち合うぞ!ナルカミ氏よ」
ラインバッハがそう答える。そして、俺の掴む手に凄い力が加わる。絶体に逃がさないという気持ちの表れだろうか?
「‥‥‥‥なら、これを貸してやるよ。ラインバッハ、ほれ!『写しみの虚像』だ。ほれ、発動!!」
ぺカーン!!!
『写しみの虚像』が輝き、ラインバッハの分身が現れた。
「これは?‥‥‥‥確かユグドラシル様の権能。何故、お前が使える?ナルカミ氏」
「それは秘密だ。だが、これでラインバッハの負担も幾らか減るだろう?そして、俺を労働からさっさと解放しろ」
「‥‥‥‥良いだろう。これなら俺もお前の旅に同行することができるしな」
「ラインバッハ様。よろしくお願いいたします。」
ラインバッハの分身は深々とお辞儀をし、ラインバッハはそう言って俺の腕を離した。
「同行って‥‥‥まさか一緒に『オアシス』まで行ってくれるのか?」
「あぁ、そのつもりだ。今回の『悪魔の淑女』での件では借りができたしな。そして、俺も『オアシス』には用事があるのでな」
「用事?」
「そうだ。鍛冶屋の里にちょっとな‥‥‥‥詳しく教えられんがな」
「ふーん、そうなのか。まぁ、俺は労働から解放してくれるなら何でも良いがな‥‥‥俺は最後にはやる事があるから『ガルクドウルク』に先に戻ってるからな。じゃあな、ラインバッハ」
「ん?そうか?『テンプル』の町を見物していかなくて良いのか?お前の仲間のお陰で『テンプル』の都市は解放されたんだぞ?」
「まと、後で来るさ。それよりも今日はあの羊に変えられていた子達を『魔術院』に連れて行くことが先なんでな。じゃあな」
シュン!
「何?魔術院だと?‥‥‥って、もう行ってしまったか‥‥‥忙しない奴だな。ナルカミは‥‥‥」
ラインバッハはテンプルの都市を見ながら1人呟いたのだった。




