第二十四話
陸軍が第二次総攻撃を仕掛けたのは10月24日であった。しかも攻撃は各隊ごとのバラバラでの攻撃であり第二師団は各個撃破に近い形であった。特に酷かったのは右翼方面であり右翼は残存川口旅団、残存一木支隊の約4000であった。右翼を率いていた川口少将は「せめて砲撃支援を」と願い、無闇な突撃には反対を表明していた。
しかし、現地視察に来た辻中佐から「戦意喪失也」と判断され百武中将等からも反対され攻撃直前に罷免されたのである。しかもこれを率いたのが辻中佐だった事もあり右翼隊は堪らなかった。(東海林大佐が次席指揮官だったが実際に指揮していたのは辻中佐であった)
結局、突撃した右翼隊は米軍の銃砲火を浴びて損耗し突撃を指示した辻中佐もジャングルの土に呑まれたのである。中央隊も右翼隊と同様であり突撃した第二師団は米軍の銃砲火で動きが取れなかったのである。
しかし、陽動隊であった住吉支隊と海軍陸戦隊はマタニカウ河の米軍守備陣地を突破に成功したのである。これは重火砲類が右翼隊等に移動出来なかった事もあり殆どがこの陽動隊に投入されていたのだ。
しかも戦車はノモンハン事件以来の活躍をしている九七式中戦車を36両、九五式軽戦車12両の戦車隊であり米第一海兵連隊第三大隊は激しく抵抗するも戦車を先頭に突撃する住吉支隊、陸戦隊に支えきれなかった。
しかも陸戦隊は九七式曲射歩兵砲での砲撃支援を行い、第三大隊の陣地を一つずつ潰していったのだから堪らない。第三大隊は攻撃開始から僅か48分で戦線が崩壊、後退するのである。それを見た米第七海兵連隊第三大隊も一個中隊の増援を出すも対戦車砲で破壊出来ないチハの前では敵ではなかった。
米海兵隊のマタニカウ河の戦線は完全に崩壊したのである。
「マタニカウ河方面が本隊だったのか!?」
報告を受けたヴァンデグリフト少将は右翼、中央隊の攻撃に掛り切りだったが直ちに増援を出した。ヴァンデグリフト少将は第一海兵師団から3個中隊を出して、右翼隊の攻撃を停止させ、米陸軍第164連隊をマタニカウ河方面へ向かわせたのである。しかし、ガダルカナル泊地にも第八艦隊が突入していたのである。
「此処が正念場だ!! 全艦気張れ!!」
三川中将は旗艦『鳥海』の艦橋でそう吠え、『鳥海』以下の甲巡(『衣笠』『石狩』)は三式弾をガダルカナル島の飛行場及び戦闘中であるマタニカウ河方面の米軍守備陣地等に叩き込むのである。第八艦隊の艦砲射撃で米海兵隊は混乱の渦に巻き込まれてしまう。
それを見た住吉少将は叫ぶ。
「海軍の努力を無駄にはするな!! 此処が203高地と思え!!」
マタニカウ河を越えた陽動隊はその右翼に展開していた米第七海兵連隊第三大隊を壊滅させ、史実では壊滅する歩兵第29連隊を半壊で収まらせるのである。残存歩兵第29連隊は住吉支隊と共に米軍守備陣地を蹂躙し阻止隊である第一海兵師団の3個中隊、米陸軍第164連隊と飛行場手前一キロで交戦をする。
「戦車、前へ!! 弾種、榴弾!!」
戦車隊は先頭に出て歩兵を守りつつその砲たる57口径57ミリ戦車砲が火を吹く。米軍は37ミリ対戦車砲で撃ち抜こうとするも正面装甲は撃ち抜けなかった。
「駄目だ、正面は無理だ!?」
「側面を撃ち抜け!!」
しかし、彼等はチハの榴弾で吹き飛ばされてしまう。そして0235、飛行場陣地を抜けた戦車隊は滑走路に躍り出たのである。
「滑走路に出たぞ!!」
「そのまま格納庫等に砲弾を叩き込め!! 手当たり次第にだ!!」
戦車隊は榴弾を手当たり次第に叩き込む。そのうちの一弾がヴァンデグリフト少将の指揮する天幕付近に着弾、爆風で天幕ごとヴァンデグリフト少将ら司令部要員は吹き飛ぶのである。
そして住吉支隊と陸戦隊は飛行場に遅れて躍り出たのである。陸戦隊は直ぐに沖合に展開している第八艦隊に発光信号を送った。
『我、飛行場到着。支援求ム』
発光信号を確認した第八艦隊は支援の艦砲射撃を続けつつ、第二機動部隊にも打電をした。
『陽動隊、飛行場滑走路占拠中。上空支援要請ス』
「滑走路を占拠したというのか!?」
「今のところはです。第八艦隊もそれを重要しているからこそ航空支援を要請したものと思います」
当直兵に叩き起こされた近藤は頭が混乱しつつも艦橋に飛び込んできて状況を白石から確認する。
(まさかの滑走路を占拠中か……これは……いけるかもしれん!!)
近藤は直ぐに決断を下した。
「吉岡、出せる攻撃隊はあるか?」
「0330までに夜間発艦可能なパイロットを中心に零戦6機、艦爆9機、艦攻8機を『加賀』から出します。此処からですと凡そ1時間と半過ぎ、0500にはガダルカナル島に到着すると思われます」
吉岡の報告に近藤は頷き、腕時計で時刻を確認すると0316であった。
「ん、それでいこう。第八艦隊に連絡、『第一次』攻撃隊を0330に出し0500にガダルカナル島に到着予定。それまで奮戦を期待すると伝えろ」
「はッ!!」
「長官、それはまさか……」
「ん。第二波も送るぞ。『雲龍』『葛城』に発光信号、第二次攻撃隊の準備を急がせろとな」
「はッ!!」
「『加賀』の航空隊は敵機動部隊出現に備えて待機だ……側面から突かれる可能性もあるからな」
「確かに。それは盲点でしたな」
「今出来るのがこれしかあるまい」
そう呟く近藤であるが内心は少々焦っていた。
(マジかぁ……飛行場占拠フラグか〜……泥沼化がヤバそうだな……)
近藤はソロモンで泥沼の死闘を演じつつ戦力を損耗させずにマリアナ沖で迎える予定であった。しかし、ガダルカナル島を占領するとなれば話は違ってくる。FS作戦の道筋が見えてくる可能性も出てくるのだ。
日本もそこまで攻める事は出来るが補給路はあやふやであった。海上護衛総隊は南方航路やトラック航路で活躍しているがソロモン航路にもなれば護衛艦隊を増強する必要もあり乗組員の錬成も必要になってくるのだ。
(それにガダルカナル島から米軍を追い出しても隣のマライタ島に航空基地を米軍が作れば……結果は一緒だもんなぁ……)
ガダルカナル島の隣にあるマライタ島も航空基地を作ろうと思えば米軍もあっという間に作れるだろう。そしてマライタ島を此方が新たに占領しようとすれば……予想は出来るのである。
(取り敢えずは……今の事態に対処するしかないか……)
そう思う近藤であった。そして悩む近藤を他所にガダルカナル島では日本軍有利になりつつあった。第二師団司令部及び第17軍司令部は陽動隊を支援するべく再攻勢を決定。右翼隊の川口旅団にも連絡(徒歩伝令)をし0400に再度の攻勢が仕掛けられたのである。川口旅団の正面を守備していた米第七海兵連隊第一大隊は持てるだけの銃器で奮戦、川口旅団は更に戦力を損耗し後退する羽目になったが第一大隊は撤退命令を受け取る事になる。
「何!? 将軍らが戦死だと!!」
「飛行場方面はジャップと白兵戦を演じていますが……状況は不利なようです。その為、タイボ岬まで後退しタイボ岬を周辺とした守備陣地を形成し味方の攻勢に備えるようです」
「……クソッタレだがやむを得んな……」
報告を受けた大隊長は撤退及びタイボ岬まで後退を発令、第一大隊は守備陣地を放棄して後退するのである。なお、右翼隊は再度の偵察で第一大隊が撤退しているのを確認すると飛行場占領の為に突撃するのである。
0500、第二機動部隊から発艦した第一次攻撃隊がガダルカナル島上空に到着。未だ抵抗勢力がある飛行場東方面に爆撃を開始した。第一次攻撃隊は60キロ爆弾等の小型爆弾であったがそれでも上空からの支援は地上部隊から有り難かった。
「重砲の移動を急がせろ!! 迫撃砲の残弾は残り少ないんだぞ!!」
住吉支隊に属するの中尉が叫ぶ。ガダルカナルの女神になりつつあった迫撃砲ーー曲射歩兵砲の砲弾は相次ぐ連射により残弾が一門辺り20発程度になっていた。それでも米海兵隊の残存抵抗勢力は格納庫等で抵抗していたが0720に到着した第二次攻撃隊の攻撃により皆無となったのである。
0900、破壊された米海兵隊司令部に日の丸が掲げられたのである。
『万歳!! 万歳!! バンザァァァァァァァァイ!!』
第二師団、元より日本軍は遂に飛行場奪還に成功するのであった。米海兵隊の残存勢力はタイボ岬まで後退、その数は約8000弱であったが守備陣地を再構築した事でより堅固になるのである。飛行場占領の報を受けたGF司令部でも山本は笑みを浮かべるに留まった。
まだ、敵機動部隊を撃破していないので油断は禁物であったからだ。その点、大本営は万歳三唱をしたりして完全に油断しているのである。
奪還したとは言え、第二師団の兵力は損耗していた。所属する3個連隊(歩第四、歩第16、歩第29)は合計して4000弱の戦力しか残っておらず(負傷者が多かった)川口旅団も動ける者は約1000名足らずしかいなかったのだ。陸戦隊も同様であり報告を受けた第17軍司令部は師団の入り替えが必要と判断し大本営に具申し大本営も第38師団を投入する事を決定したのである。
しかし、師団を入れ替える前に米海兵隊は再攻勢を仕掛け飛行場は再度奪われるのは南太平洋海戦が終わった後であった。
10月25日、日本軍は数日前から見失っていた米軍機動部隊を求め索敵を活発に行ったが、米機動部隊の発見には至らなかった。近藤は機動部隊を南下させ、補給を終えた第八艦隊もガダルカナル島から第二機動部隊方面へ向かっていた。
翌日の26日0330、第二機動部隊は再度偵察機(艦偵6機 水偵6機)を発艦させた。そして『加賀』から発艦した二式艦偵が0450に米機動部隊を発見したのである。
「敵空母サラトガ型1、戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦16、針路北西です」
「我が機動部隊から125度210浬になります」
「長官」
「……第一次攻撃隊全機発艦!! 始めェェェェェェ!!」
第二機動部隊で準備していた第一次攻撃隊は発艦を開始したのである。
第一次攻撃隊
指揮官 村田少佐
制空隊 志賀大尉
『加賀』零戦18機
『雲龍』零戦9機
『葛城』零戦9機
艦爆隊 高橋定大尉
『加賀』彗星9機
『雲龍』九九式艦爆9機
『葛城』九九式艦爆9機
艦攻隊 村田少佐
『加賀』天山18機
『雲龍』九七式艦攻9機
『葛城』九七式艦攻9機
誘導 二式艦偵2機
合計101機の第一次攻撃隊は米機動部隊ーーキンケイド少将の機動部隊に向かうのである。
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