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ピエトロ・ロペスの風・後

おじさんと少女のまどろっこしい恋愛か親愛だかわからない距離感大好きだったりします。


 今さらどんな顔をして、と気が重くなりながら訪ねた『王都新聞』の編集部で、テオドール・ヒューズは彼を見るなり獲れたての特ダネを捕まえたといわんばかりに目を輝かせた。


「ピエトロ! よく来たな!」

「テオ!?」


 がっちり腕を摑まれ引っ張り込まれたテオドールの机の上には、大量のメモとノート、山積みになった資料、そして何度も訂正し書き直された書類が待っていた。


 新聞社といえどもここまで散乱している机を見るのはこれがはじめてだ。説明を求めてテオドールを振り返れば、目の下にクマが色濃く浮き上がり、頬もやつれていた。


「どうしたんだ、テオ。何人か食い殺したような熊を飼ってるぞ」

「宰相、いや、執政か。とにかくクラストロ公爵がすごいんだ……」


 クラストロの名に反応したピエトロに、あいかわらずだなと疲れた顔で笑ったテオドールは椅子を勧めた。


「……で?」

「今、国民議員の候補たちは執政による教育を受けているんだ。全員政治に関心を持ってはいるが、携わったことのない世界だからな。傍聴席で見物してクラブで批判するのとは別物だと、嫌というほど思い知らされている最中だよ」

「それは、なんとも贅沢な話だな……」


 20年間出てこなかったとはいえ相手は天下のクラストロである。執政マクラウドから直々に手ほどきを受けるなど、贅沢としかいいようがなかった。


「お前はあの方を知らないからそんなことが言えるんだ……」


 鬼だよ、あの人。テオドールの声は疲れ切っていた。


 正式に国民議会が発足し、議員候補が議員になる記念すべき第一回国民議会はこの春に開かれることが決定した。どさくさに紛れて貴族が圧力をかけ、うやむやのまま潰させないというマクラウドの本気を見せつけるがごとき速さである。政治に新たな場が開かれる場合、通常なら何年もかけて貴族の間を折衝し、利害の帳尻を合わせ、それでも出てくる問題を解決あるいは踏みつぶしてからどうにか漕ぎ着けるのが流れであった。


 しかし、それでは間に合わないとマクラウドは言う。そうこうしているうちに帝国に嫁いだ王女が子を産み、帝国に都合の良い王が誕生しかねない。そうなれば国民議会は単なる愚痴の吐き捨て場にされかねなかった。


「実際、帝国はそうしている。国民議会が貴族議会の法案に反対しても、結局はよしよしとあやされて貴族の良いようにされているからな。帝国から来る王もそのつもりだろう」

「クラストロの声がかりなら我が国だって同じじゃないか」


 なにしろ執政である。宰相と違い、執政は王に代わって国を支配する権利を得ているのだ。あの男の思うままにされるのなら帝国と何ら変わりはない。ピエトロの嫌悪にテオドールはため息でもって応じた。


 執政は王が政を行えない時に王に代わって政治を執行する、暫定的な地位である。過去の例を挙げれば三歳で王位に就いた幼王や、男子が生まれず特例として女王がいた時期に執政が現れている。ちなみに女王は男子が生まれて成人するまで王位に有り、その間の政治は執政が執り行った。


 そしてマクラウド・アストライア・クラストロは、国王エドゥアールが第一王子であったアルベールの不始末の責任を取る形で退位したため、王と王太子が不在の間の措置として執政に着いた。


 つまり第二王子のマルセルは王子のまま、ルドルフとヘンリーもまた王太子候補ということである。


「まあ王太子はマルセル王子でほぼ決まりだろう。この空白の時間を使って王や貴族から国民議会を認めさせ、その権力を剥ぎ取るおつもりだ」


 悪党、と言いかけてピエトロは口を閉ざした。そうなれば王家や貴族の恨みは国民議会ではなくマクラウドが一身に集めることになる。そこまでしてなぜ彼がこちらに協力的なのか、マクラウドを知らぬピエトロには疑問だった。


「……夢、だったんだそうだ」


 ふっとテオドールは憐れむように呟いた。


「夢?」

「ああ。……エドゥアール王と、幼い頃にこの国を世界で一番良い国にしようと語り合ったんだと」

「それは……」

「クラストロのことだから王を操作する一手だったのかもしれんが。少なくとも執政殿はその夢を忘れなかった」


 机の中からテオドールが取り出したのは、マクラウドの国民議会草案の写しだ。読んでみろと促されたピエトロの目に、20年以上も昔の貴族の情勢や社交界での繋がり、外国とのバランス、果ては裏社会がどう動くかの予測まで飛び込んできた。


「国民の男女を別なく道を拓く。言うだけなら簡単そうだが実行するとなれば大事業だ。人生を賭けた大勝負。執政は、それに国を賭けて挑んできた」

「……悪党だ」


 ピエトロは今度こそ口に出していた。負ければこの国は帝国に呑み込まれる。ニヤリと笑ってテオドールも同意した。


「ああ、悪だ」


 歴史へようこそ、とあの時彼は言った。貧しさを理由にピエトロは一度も『雨の首飾り』に足を運んでこなかった。テオドールもまた誘えるほどの余裕はなく、ピエトロを思い出したのはマクラウドが彼の不在に気づいてからだった。


 ピエトロ・ロペスはいないのか。そう言った時、マクラウドはわずかに落胆した顔を見せた。あのクラストロが末端といっていい弁護士を知っているのも驚きだが、ピエトロに期待しているのにはもっと驚かされた。国民議会、その議長の椅子はまだ空欄のままだ。誰の名を刻みたいか、本人だけが知らない。


「まあ頑張ってくれ。ところでいきなり引っ張り込んだのはこの話をするためか?」

「君が聞いてきたんだろう、まったく。いや、仕事を頼みたい。国民議会設立法案についてわかりやすく解説してくれないか?」

「それこそテオの得意分野だろう」

「手が足りないんだ。政治部の連中は国民議員と貴族と王家を追っている。貴族はマルセル王子に媚びているが確約が得られないとなったら強硬手段に出るかもしれん。どの王子が王太子になるか、骨肉の争いだ。議員たちへの反感もある。ここで国民議員が暗殺されたら今度こそアルベールの騒ぎどころじゃなくなるぜ。自粛ムードで静かに見えるが王宮は大嵐の真っ只中だ」


 今でこそ国民の関心は政治に向いているが、知らないうちにあれこれ変わっているくらいの認識しかなかった。新聞を読むのも字が読める者の中でもほぼ男のみで、貴族はともかく労働者階級はせいぜい世間を騒がせた事件の時くらいでは、わざわざ買ってまで読まないのが一般的だった。新聞は社会の情勢を知るとともに社交の動向を知るツールでもあった。


 それが変わる。自分たちが変えるのだ。


 テオドールは、それなら仕方がないといわんばかりの体を作って足取り軽く出ていくピエトロに、胸を焦がす熱が伝わることを祈った。


***


マチルダ・ポルクは簡単な文章と足し算引き算程度の算数ならできるが、新聞記事など読んだことのない無学であった。そもそもが実家の手伝いで覚えたものなので、必要のないものは覚えることもなかったのだ。別に珍しくもない、よくある平民の一人だ。


「ごめん、何言ってるのか全然わかんないわ」


 ピエトロがテオドールからわかりやすくと頼まれた記事を語って聞かせても、マチルダはポカンとしただけだった。読ませたのではない、語り聞かせた。それでもさっぱりだとマチルダの反応は鈍かった。


「ど、どのあたりだ?」

「やたら難しい言葉使われても、それの意味を知らないですし」


 まさかのそこから。ピエトロは依頼の難しさを改めて思い知った。


 テオドールは議員にならず、彼らのために国民に事実を伝えていきたいと新聞社に留まることにした。国民の国民による国民のための議会。そのためにもまず広く知ってもらおうと、無学の者にもわかるようにとピエトロを指名したのだ。友人の期待を裏切るわけにはいかなかった。


「そうか……。では、また持って来る。読んでみてくれ」

「いいですけど、もっと頭の良い人に頼んだ方がいいんじゃないですか? クラーラさんとか」


 もっともな提案にピエトロは首を振った。


「国民議会は広く国民全体に理解され支持されてはじめて機能するべきものだ。君のような少女にもわかってもらえるようにしなくてはならない」

「でもさ、字も読めないのに支持されたって」

「字が読めない者なんてたくさんいる。読める者に話してもらえばいいだけだ」


 だがせっかく聞いても言葉がわからなければその人は読んでくれた者に意味を訊ねる。肝心の朗読者もまた意味を理解していなければ質問に答えることもできず、結局はよくわからないもので国民議会は終わってしまう。それを助けるのがピエトロの役目だ。


「貴族の言葉使いはとにかく難解で、我々が頭を捻っているうちに物事が決まってしまう。その結果が今の国だ。みんなでこの国を良くしていこうという第一歩が国民議会なんだよ」


 へえ、とマチルダは感心した。冴えないおじさんだったピエトロが実は弁護士で、マチルダにはよくわからない世界の偉い人だという。そのわりに彼は気さくで、偉そうな態度などどこにもなかった。字が読めないマチルダを馬鹿にするでもなくまっすぐに協力してくれと頭を下げ、無知に呆れることもなく教えてくれる。仕事にやる気を出し嬉しそうにはにかむところは可愛いではないか。


「私で良ければいつでも手伝いますよ。店の仕事は夕方からだし」


 実家を出てからの友人は大人ばかりだ。そう思うとなんだかおかしくてマチルダは笑ってしまった。なぜかピエトロが真っ赤になったのがますますおかしかった。


***


 ピエトロが『金のリンゴ亭』のツケをようやく支払い、マチルダもクラーラへの支払いを終えた頃、ずいぶん草臥れた様子のクラーラがやって来た。


「お久しぶりです、クラーラさん!」

「おや久しぶりクラーラ。疲れてるな、店の客足が戻ってきたのか」


『金のリンゴ亭』もマチルダ効果に慣れ、セクハラは鳴りを潜めいつもの雰囲気である。へらりと笑ったクラーラはピエトロがいるいつもの二人掛けテーブルに当然のようについた。


「お久しぶりねぇ二人とも。お客といえばそうなんだけど、大口の仕事が来てね。うちだけじゃあ手が回らなくて王都中の仕立て屋で仕上げてるのよ」


 ビールを注文したクラーラは疲れをごまかす余裕もないようだ。結構なことじゃないかと飲みかけのグラスを持ち上げたピエトロに薄く笑う。カチン、と乾杯した。


「仕事があるのは良い事だ。人生に張りが出る」

「例の記事ね? アタシも読んだわ。わかりやすくて頭にスッと入ってくる。あれなら王都だけじゃなくて地方の人々にも伝わるでしょうね」

「すごいですよね! 私にもわかりましたもん、ピエトロさんて本当にすごい人だったんですよ!」

「見直しちゃった?」

「はい! これからはピエトロ先生って呼ばなきゃダメですね」

「それは止めてくれ。私はしがない弁護士だ、記事ひとつ書いたところで依頼人も来ないよ」

「あ、ごめんなさい」


 そこで謝られてもそれはそれで傷つく。ピエトロは話題を変えた。


「大口の仕事って何かあったのか」

「あなたにも関係のあることよ、ピエトロちゃん」


 クラーラは待ってましたとばかりにスケッチブックを取り出した。


「あら、ドレスじゃないんですね」

「これは……」


 興味津々に覗き込んだマチルダはがっかりしたように首をかしげ、ピエトロは息を飲んだ。


 スケッチブックに描かれていたのは男物の衣装だった。ジャケットというには袖がなく、ベストにするには裾が長い。中途半端ではあるが大きな襟と、留め具の飾りのためか洗練されたデザインだ。左胸に、翼の紋章が入っている。


「予算があまり取れなくてね、木綿じゃなくて麻の生成り。その代わりデザインは凝ってみたの。東洋風よ、素敵でしょう? 自由に向かって羽ばたく翼。渦を巻いて飛び立つのよ」


 スケッチブックを凝視するピエトロに、クラーラがやさしい声で告げた。


「国民議員の正式外装よ」

「……クラーラ……」


 ピエトロの未練ともいえる象徴だった。愕然と目尻に涙を溜めるピエトロにクラーラがうなずき、ページをめくった。


「そしてこれが」


 現れたのは先程のものに手を加えて少しだけ豪華にした服だった。


「議長の服。あなたのものよ」


 クラーラの真剣な眼差しに耐え切れず、ピエトロは目を反らしてうつむいた。マチルダが叫びそうになった口を押える。


「クラーラ、なんてことを言うんだ。私にそんな資格はない」

「あるわ。あなた以外に適任はいないのよ。ピエトロ・ロペス、あなたがどれだけ庶民のために身を削り心を砕いてきたか、みんなが知っているわ」


 テーブルの上で握られた手をクラーラが包み込む。ビクッと跳ねた手は、しかし振り解かれることはなかった。クラーラはさらに続けた。


「国民議会がどういうものか理解したでしょう? 記事を書くために法の穴はないか、どういう手段がとれるのかあなたは徹底して調べたはずよ。議員候補はしょせん素人、貴族を相手に一歩も引かない人間がどうしても必要なの」

「あれはそういうつもりだったのか。テオもグルだな」

「テオドール・ヒューズは喜んで共犯になってくれたよ」


 クラーラの声色が変わった。


「君に降られて僕がどれだけ落ち込んだか。あんなに酒を交わして議論を重ねた仲だというのにつれない男だ」


 ピエトロは顔を上げられなかった。突然のことに頭がぐるぐると回る。まさか、そんな、と否定ばかりが浮かび、互いに酔ってほとんど喧嘩腰になりながら激論を戦わせた夜を思い出す。


「クラーラ……」

「言わなかった僕も悪いんだが」


 彼の声にせつなさが滲み、ピエトロは鼻の奥がつんと痛くなった。顔を上げる。

 まぎれもないクラーラの顔が、男の顔をしてピエトロを射抜いた。


「助けてくれ、ピエトロ」


 ああ、とピエトロは胸の奥底で響いた感動にため息を吐いた。たった一人で真意を隠し、戦い続けた者への称賛であり、友人に――この男に認められたのだという感激であった。


 どれほど孤独であったのだろう。仕立て屋として貴族を探り、平民との懸け橋となり、社交界の流行を作り上げるのは並大抵の苦労ではない。笑顔の裏に志を秘め、クラーラはずっと機を窺っていたのだ。


「この、悪党」

「知っている」

「全部計算づくなのか、こうなったことも」

「軽蔑してくれてかまわない」

「卑怯だぞ、そんな言い方」


 マクラウドは国を巻き込んでエドゥアールへの復讐を果たした。王への不満を溜め、第一王子であったアルベールに点火させ、すべてを失わせた。愛するフローラも、あたたかな家庭も、王の位も。そしてかつて夢見ていた未来まで奪おうというのだ。誰一人としてマクラウドを非難できない復讐である。ごく自然に国をそういう方向へ持って行った。完璧な悪とは彼のことであろう。


「えっと、よくわからないけどピエトロさんが議長になるんですよね!? やだー、すっごーい!!」


 空気を読まない今時娘のマチルダが素直に歓声をあげ、ニックとミュートに大声で知らせに行った。たちまち酔漢どもからやんやの喝采があがる。彼らこそがピエトロと、そしてマクラウドが守るべき国民そのものだった。


 裏切られたという思いはない。やられた、という痛快さが心を吹き抜けた。それがクラーラの――マクラウドから吹く風であると気づいた時、ピエトロの肚が決まった。


 重ねられた手を動かし、しっかりと握りしめる。


「服を作るならサイズを測らないといけないな」

「任せてちょうだい」

「言っておくが、金はないぞ」

「心配いらないわ。国から出させるもの」


 パチン、とクラーラがウインクした。とかく無駄遣いといわれる公共事業も、これなら文句は言われまい。愉快さが突き抜けてきて、ピエトロは泣くほど笑い出した。


***


 癖の強い猫のような黒髪を後ろへと撫で付け、風呂に入って髭を剃り、議長の服に身を包んだピエトロにマチルダは頬を染めてはしゃいでいた。あのおじさんがどう見ても立派な紳士に変身である。


「ピエトロさん、すごいです!」

「そんなに変わったか」

「全然違うよ! こんなにかっこいいなんて知らなかった。どこから見ても立派な……」


 喜びのあまりぽろりと涙を零したマチルダに慌ててピエトロが駆け寄った。


「ど、どうした?」

「ううん、あのね、私ピエトロさんがこんなにすごい人だと思ってなかった。嬉しくて……」

「マ、マチルダ、泣かないでくれ」

「う、嬉しいのに、なんだか遠くなっちゃったなぁって、思っちゃって」


 マチルダの肩に置こうとしたピエトロの手が空中で止まる。親子ほども歳の離れた少女だ、抱きしめて慰めるには不相応すぎた。


 マチルダは涙できらきらと光る瞳でピエトロを見上げた。


「すごいよ、尊敬する。ホントよ? 元気でね、ピエトロさん」


 議長になり収入が安定すれば生活も立て直せる。離婚歴のあるピエトロにも新しい妻をと縁談が舞い込むだろう。農家の娘などではなく、知識階級でしっかりとした女性が。


「マチルダ、私は君に勇気づけられた。議長になろうが私は私だ。ずっとそばにいるよ」


 だが、マチルダのように心からピエトロを励まし支えてくれる女性はもう二度と現れないと確信できた。ピエトロは想いを込めて彼女の細い肩に手を置き、抱きしめた。ふんわりとしたやわらかな弾力が胸に当たり体温が伝わってくる。


「私だけ、じゃなくて、みんなの力になってくれるんでしょう?」

「あ、うん。そうだな。私はみんなの為に力を尽くす。マチルダや、マチルダのご両親も笑顔でいられるようにする」

「それでこそピエトロさんだよ」


 甘えるように肩口に頬を擦り寄せたマチルダに、ピエトロはわたわたと背中に回した手を動かしていた。


「……あれはちょっと事案じゃなぁい?」


 ピエトロのアパート前で、祝いの花束と料理を持って駆けつけたクラーラと『金のリンゴ亭』の顔ぶれは、野暮もできずにこそこそと顔を突き合わせていた。


「いや、ピエトロさんみたいな人にはマチルダの底抜けの明るさが必要なのさ。アタシの目に狂いはないよ」

「ミュートさんの目はいつも正確だわねぇ」

「いいじゃねえか。若い嫁さんなんて男冥利に尽きるってもんだぜ」


 常連たちもデバガメよろしく覗き込み、「いけっ、そこだ」「もうひと押し!」「くっそー俺たちのマチルダちゃんが」などと好き勝手に囃し立てている。ピエトロの前妻が復縁を狙っているという話だが、もはや付け入る隙はなさそうだ。苦難の時に見捨てておいて上手くいったら元通りなんて、この連中が許すまい。


 王都に春の風が吹き、クラーラの頬を優しく撫でていった。


「秘密の仕立て屋さん」第一巻よろしくお願いします!


挿絵(By みてみん)


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