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35、潜入開始

 怪し気な施設を見つけた護と月美だったが、侵入口がわからず立ち止まって思案していたが、いい案が浮かばず、五色狐に周囲を探索させていた。

 探索をさせてから数分後。


「主、姫」

「黒月、戻ったか。で、場所はわかったのか?」

「あぁ、ここから少し離れた場所に鉄の蓋のようなものがあった。おそらく、そこから行ける。今、黄蓮が見張りについている」


 黒月が探索から戻り、どうにか侵入できる場所を見つけ、報告に戻ってきた。

 どうやら、ほかの五色狐が目印の代わりになってくれているようだ。


「ありがとう。ついでに、散らばっている他の五色狐たちに、黄蓮のもとへ集まるよう伝令を飛ばしてくれ」

「了解だ」


 護からの追加指示に従い、黒月が姿を消した。


「行こう、月美」

「え、うん……けど、場所、わかるの?」

「おいおい、俺と五色狐たちは主従。主人と使鬼だぞ?」

「わかってるけど、それにどんな関係があるの?」

「使鬼と主人の術者の間には特殊なつながりがある。それをたどっていけばいい」


 主人と使鬼の間には特殊なつながりがあり、それを『通路(パス)』と呼ぶ。

 この通路がつながっているために、使鬼と契約した術者は感覚を共有でき、通路をつないだもの同士の居場所を知るための手掛かりとして用いることもできるのだ。

 今回、護はその通路をたどるつもりのようだ。


「そんな方法もあるんだ?」

「あぁ。さ、うるさいのが来る前に、さっさと行こう」


 自分の使鬼を持っていない月美が軽い感動を覚えながら口にした言葉に、頷きを返した護だったが、この場から離れるように促してきた。

 うるさいの、というものがいま周辺で巡回をしている調査局の職員であることは言うまでもない。

 護の意図を察した月美がうなずいて返し、二人はなるべく物音を立てないように注意しながらつないだ通路をたどり始めた。

 数分して、二人は黄蓮が待っている場所へとたどり着く。

 運がいいことに、調査局の職員はこの場に一人としていなかった。

 どうやら、ここに抜け穴があることはわからなかったらしい。


「黄蓮、ご苦労だな」

「なに、ただ座っているだけの退屈で楽な仕事だったよ」

「……なら、これから暴れるか?」


 苦笑を浮かべながら、皮肉を言ってくる狐精に問いかける。

 すると、姿勢こそ変えないものの、黄蓮の口角がつりあがり、その瞳に獰猛な光が宿った。

 それに気づいた護と月美は、それなりに苛立ちを募らせていたことを察したようで。


「ねぇ、護……黄蓮って、もしかしなくても暴れん坊な性格だったり?」

「いや、普段はどっしりとというか、わりとのんびりとしてるというか、結構おおらかなやつだ。ここまで獰猛な目をすることは、あんまりないんだけど……」


 黄蓮から視線をそらし、聞こえないようにささやき合っていた。


「何をぶつぶつ言い合っている?さっさと行くぞ、主、姫」


 だが、そのささやきは噂されている本狐(ほんにん)の耳にしっかり届いていたようだ。

 あまりの獰猛なその瞳の光に、月美が護に問いかけると、護は引きつった笑みを浮かべながら返してきた。

 五色狐たちのその本性は狐の精霊だが、それぞれの属性に沿った個性を持っており、土の属性を有する黄蓮はおおらかな性格をしている。

 だがそれは、あらゆるものを受け止める許容量が大きいというだけであり、何をされてもおおらかなまま、というわけではない。

 どんなものにも、いずれ限界はくるように、ここ数日にわたる意味があるかもわからない用事で使われていたことに対し、苛立ちが限界を迎えたようだ。


――たまりにたまったストレスをここで発散するつもりか?


 そう解釈した護は、あまり待たせてしまったために大噴火を起こされても困ると考え。


「それじゃ、さっさと降りるとするか」

「う、うん」

「俺が先行しよう」


 さっさとその場から移動を始める。

 しばらく降りていくと、一行は薄暗い通路のような場所に出た。

 足元が見える程度の明かりがある、ということは、まだ使用されているということだ。

 おそらく、ここにいままで襲撃してきた狼男たちにつながる何かがある。

 そう感じ取った護と月美は、周囲の気配を慎重に探ったが、幸いなことにここには二人以外には誰もいないようだ。

 ひとまず、この場の安全の確保はできたのだが、次なる問題が発生していた。


「……護、どっちに進んだらいいのかな?」

「正直、わからん」

「だよね」

「地図があれば話は別だったんだけど……」


 言い訳をしながら、護はため息をついた。

 地図の存在がないこともないのかもしれない。

 だが、護がここを見つけることができたのは、あくまでも占の結果によるもので、多少の資料は参照したが、いずれも内部の地図などはないものばかりだった。

 光なら見取り図を持っているかもしれないが、互いに互いが気に入らないと感じてしまっており、見せてもらうことはできないということはわかりきっている。

 もっとも、手段がまったくないというわけでもない。


「どうするの?」

「人工物に囲まれてるから、どうなるかはわからないけど」


 月美の問いかけに返しながら、護は刀印を結び、目を閉じた。


「……風の轍、我にさし示せ」


 言霊を口にした瞬間、ふわり、と護の髪の毛が踊ると同時に、通路にも風が通り抜けていく。

 風が止むと護は目を開き。


「あっちだ」


 左手の方へ向かって走り出し、月美もその後に続く。

 どこに向かっているのかわかるのか、そんなことを聞く気はなかった。

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