38、土御門神社に避難
突然の地震に、護たちは思わず、カバンで頭を庇ったり、うずくまったりして避難行動をとる。
幸い、周囲の建物が倒壊することはなく、その場にいた全員、大した被害を受けることはなかったが。
「み、みんな、大丈夫?」
「や、やべぇ……」
「こ、腰が抜けちゃった……」
突然の事態に、腰が抜けてしまったり、足が震えてすぐに身動きが取れない状態になってしまったりしてはいるが、ひとまず、大きなけがはないようだ。
そのことに少しばかり安堵した護と月美だったが、すぐに携帯を取り出す。
土御門神社と両親、そして先ほどまで電話していた光に連絡を試みるも。
「だめだ」
「こっちも全然つながらない」
どうやら、回線が混み合っているらしく、電話もメールもまったく機能していないようだ。
「光たちはともかく、父さんたちに関しては神社に直接行けばわかる」
「ここからなら、十分くらいだっけ?」
だが、幸いなことに護たちの現在位置は、土御門神社からさほど離れていない場所だった。
携帯で連絡を取り合うことができなくとも、直接、様子を見に行くことが可能な距離であるため、二人は神社へ向かおうとしたのだが。
「勘解由小路くんたちが一緒に行って大丈夫かな?」
清と明美、そして佳代をこのまま放っておくわけにはいかない。
だが、佳代はともかく、清と明美は土御門神社に訪問したことがなかった。
おまけに、小学生の頃に蔵に侵入した不届きなクラスメイト達のせいで、化け物屋敷と呼ばれた経緯もある。
護としては、見知った顔でも他人を家に上げることに抵抗があるのではないか。
そう考えて、月美は清たちが神社へ来ても大丈夫か問いかけていたのだ。
「こんな状況だ。蔵に入りでもしない限り大丈夫だろ」
だが、護の口から出てきた言葉は、清たちの訪問を許可するものだった。
とはいえ、あからさまに嫌そうな様子ではあったが。
「こんな状況で捨て置くことを選択できるほど、人間を腐らせた記憶はない」
「まだ何も言ってないよ?」
「意外そうな顔しといてよく言うよ」
ジトっとした視線を護から向けられ、月美は苦笑を浮かべる。
護としては、まだ文句が言い足りない様子ではあったが、いつ余震が来るかもわからない状況であるためか、早々に動き出すことを提案し、動き出した。
「立てるか?」
「だ、大丈夫。ありがとう」
「なんで俺には手を貸してくれないの?」
まだ調子が戻らないからか、その場に座り込んでいる佳代や明美に手を貸し、立ち上がらせた護と月美は、清の文句を聞きながら、土御門神社に向かって歩き始めた。
四人の後ろを、慌てた様子で立ち上がった清が追いかけていったことは言うまでもない。
清の文句を聞きながら、護たちはその場から歩きだし、十分ほどで五人は土御門神社に到着する。
「こっちだ、変なとこに入ろうとするなよ?特に清」
「え?お、俺、名指しなの?」
「お前が一番どっかに行きそうだ」
「し、失礼な!人様の家で単独行動を控えるくらいの理性はある!」
「ちゃんと人の目を見て行ってほしかったな、そのセリフは」
忠告した護は、清の口から出てきた文句に、ため息をつきながらそう返した。
護も清たちがこんな緊急時に、そんな非常識な行動をとると思っていない。
だが、自分の好奇心に非常に忠実な清がいる。
好奇心に負け、勝手に蔵に入っていく姿が、護にはありありと想像できていた。
「どうだか」
「なんか怪しい」
「目を離したら絶対どっかいきそう」
それは月美たちも同じようで、文句を言っている清に対して、ジトっとした視線を向けながら清の言葉の真意を疑っていた。
本人としては、否定したい気持ちはやまやまなのだろう。
だが、否定したくても護たちが想像している光景を再現する自信が清自身にもあったらしく。
「……認めたくないものだな、自分の性格ゆえに引き起こされかねん過ちというものは」
「なに赤い彗星の大佐みたいなこと言ってんだよ」
「カッコよく決まったと思うんだけどなぁ」
「いや、なんでそう思ったのよ?」
今も多くの人々に愛されるロボットアニメに登場するセリフをまねた言葉に、護はだけでなく、明美まで呆れたと言わんばかりの表情になる。
その反応に清は当然。
「なんだよ!いいじゃないかよ、友達の家の中探検したって!!俺の好奇心はいつも天元突破するんだからよぉ!」
あくまでも、自分の好奇心を満足させたいという欲求に忠実であるようだ。
「いやだめだろ」
「馬鹿じゃないの?あ、元からか。ごめん」
「まさかここまで馬鹿だったなんて思わなかった」
「さすがに、案内もされてないのに勝手にうろうろするのは……」
だが、清を除く四人は常識というものをわきまえている。
おまけに自分の好奇心を抑制して、行動に移すことを我慢する程度には大人だ。
これは護たちだけでなく、高校生以上ならば誰でもわきまえていること。
だというのに、目の前にいる同級生はそんなこともできないほど精神性が幼いらしい。
普段はおろおろするだけの佳代も、今回ばかりは清の言葉に引いているようだ。
「さてと、そんじゃこいつがどうなろうと自己責任ってことで」
「早く行こう?ある程度の地震なら耐えられるから、安全なはずだよ」
護と月美が明美と佳代を案内し、その場を離れ始める。
冷たい視線を向けられた挙句、置いてけぼりを食らいそうになっていた清は、その後ろをとぼとぼとした様子でついていった。
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