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転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件【2026年アニメ化決定】  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第8章

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347/376

347.有名税

「誰がおばさんだ!」


 すぐさまジト目で鋭い声を返す春希。

 しかし茉莉はぶすっとしたままの顏で言葉を続ける。


「だって、おばさんはおばさんじゃん。私のお母さんの妹だし」

「そりゃ続柄はそうだけどさ。誰かに聞かれたら困るし、外でその呼び方は止めてよね」

「はーい、叔母さん(、、、、)

「……ったく」


 茉莉は春希の忠告にまるで悪びれもせず、自分の着替えを入れたロッカーへ向かう。

 春希は思わず大きなため息を零す。茉莉の母は、春希の腹違いの姉だ。そして百花や愛梨たちのマネージャーを務める桜島清司の実姉にもあたる。

 こうして茉莉と組んでアイドル活動をすることになったのは、春希が芸能界入りを決めた時、母ではなく清司に話を持っていったからだった。

 女優である母と向き合うのだから本人を頼るのは筋違いだし、それに百花や愛梨をプロデュースしたというのも大きい。

 事実、清司の手腕は確かだった。それは現在の春希たちの人気が証明している。

 元々、ソロデビューをしようとしていた茉莉と組ませたのも清司の案だった。

 茉莉を往年の名優、桜島清辰の孫として売り出そうとしていたところに、乗っかった形だ。茉莉自身もコネ案件と言われればそうかもしれないが、茉莉としても、同じく人気絶頂の田倉真央の娘である春希と組むことは、面白くもないだろう。

 また春希にもなりふり構っていられないとはいえ、横入りして申し訳ないという気持ちもある。だからある程度、茉莉に関しては鷹揚でいるつもりだ。

 それに茉莉は春希へのあたりこそ強いものの、仕事に関しては人一倍真剣だった。

 才能も有り、努力も怠らない。

 つい先ほどの雑誌の表紙の撮影だって、春希のアドリブに即座に対応していた。

 芸能界に来てからというもの、春希の演技に呑み込まれないだけでなく、切り返してくる相手は稀だ。しかもそれだけじゃなく、茉莉は春希の背筋をゾクりとさせる演技を見せることもある。

 まるで抜き身の刃によるやり取りのような緊張感、気の抜けない真剣勝負。正直、茉莉とのそうした応酬はひどく楽しく、少し意地が悪いと思いつつもやめられない。

 それに実感はないものの、茉莉は姪だ。姪が自分に対抗意識を燃やしてぶつかってきて、どんどん実力を伸ばしているのは、少し上から目線ではあるが微笑ましくもある。

 春希がくすりと笑いながら自分も着替えようとロッカーを開け――その中身の惨状を見て、困った声を上げた。


「うへぇ」

「どうしたの、おばさん?」

「……これ」


 春希は僅かな逡巡の後、実物を見せた方が早いと思い、刃物でズタズタに切り裂かれた私服をロッカーから取り出し茉莉へと掲げる。

 するとそれを見た茉莉はみるみる顔を嫌悪に歪め、吐き捨てるように言う。


「はぁ、何それ、意味わかんない! また(、、)嫌がらせ?」

「うん、そうっぽいね。ここのセキュリティ、ガバガバだし」

「ダサッ! 妬みでしょ、それ。やるなら裏でこそこそせず、直接言えってーの!」

「そんな度胸あるなら、こんなこすいことしないって」

「わかるけどさ! あーっもう、ムカつくッ!」


 春希がされたことを、我がことのように怒りを露わにする茉莉。

 こういうところがあるから、茉莉が春希に生意気な態度を取っても憎めない。茉莉は基本的に、性根は真っ直ぐなやつなのだ。

 彗星のごとく現れ、たちまち人気を獲得していった春希を疎ましく思う者は多い。

 今回の雑誌の表紙の撮影だって、急遽決まったことだ。

 それはつまり、この雑誌の表紙から降ろされた人がいるとも言い換えられる。

 こういう嫌がらせはアイドルを初めて以来、何度もあった。

 春希は諦め交じりのため息を吐き、茉莉を宥める。


「ま、有名税として割り切るしかないね」

「でもっ!」

「そういう奴らには、実力で殴り返せばいいだけ。違う?」

「それはっ……違わないけど……」


 不承不承といった感じで矛を収める茉莉。

 春希は肩を竦めながら言う。


「とりあえず、ボクの服をどうするかなぁ。この衣装で帰るわけにはいかないし」

「あ、それだけど、これ」

「これは……?」


 ふと茉莉が何かを思い出したように、ロッカーから取り出した紙袋を渡してくる。

 それを受け取り、どうしたことか春希が聞き返すと、茉莉は素っ気なく呟いた。


「予備の着替え、おじさ――マネージャーから」

「兄――清司さんから?」

「うん、こういう事態もありそうだからって言われてて、持たされてたやつ」

「へぇ」


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― 新着の感想 ―
嫌がらせに怒れるまっとうな精神性を、茉莉さんはこれからも大事にして欲しいです。当の春希さんが動じてないのが逆にお労しさすら感じますね。幼少期から一体どれだけつらい目に遭ってきたのかと。
荒波どころじゃない揉まれ方してますね。アニメ化おめでとうございます。
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