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転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件【2026年アニメ化決定】  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第8章

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342.俺、寂しかった


 そして白泉先輩は隼人たちを応接室へ押し込んだ後、「あとはごゆっくり~♪」と言ってひらりと手を振り、この場を去っていく。彼女なりに気を遣ってくれたようだ。


「「「「…………」」」」


 互いの探るような視線が絡む。

 まるで会話の仕方を忘れたかのような沈黙。

 それだけ、春希とずっと話していなかった。

 そんな中、みなもが少し緊張気味に口を開く。


「き、キャベツがほぼ全滅しました……っ!」

「……へ?」


 唐突な話題に虚を突かれ、間の抜けた声を漏らす春希。

 それは隼人に一輝、伊織にとっても同様で、皆で目をぱちくりさせている。

 しかしみなもは、なおも必死に言葉を紡ぐ。


「す、少し目を離した隙に、虫に食われてボロボロになっちゃいましてっ」


 するとこの場の空気を変えようとしていることを察した一輝が、会話に入ってくる。


「あぁ、確かものの見事に穴だらけになってたね」

「その後、生き残った子たちは青虫に気を付けて育て収穫したんですが、今度は葉の間にナメクジがび~っしり!」


 みなもが両手を大きく広げ、こんなにも! と嫌そうな顔でアピールすれば、春希は堪らずといった風に「ぷっ」と噴き出した。


「それは残念だったね」

「すぐに塩かけて、懲らしめてやりましたよ。最近は春になったおかげか蝶々も増えてきたので、気を抜けませんっ」

「あはっ、園芸してると蝶って天敵みたいに見えちゃうよね」

「せっかく出た芽が、青虫に食べられちゃいますから」

「大変そうだ」

「はい、大変です。だから……春希さんもたまには手伝って欲しいです」

「みなもちゃん……」


 申し訳なさそうに眉を顰める春希。

 そこへ伊織が努めていつものおちゃらけた風を装い、みなもを援護する。


「そうだぜ、3学期とかほとんど顔出さなかったし。たまには学校に来てくれよな、二階堂。そんでアイドルと友達だって、オレの周りに自慢させてくれ」

「僕はアイドル業界の面白い話とかあったら、教えて欲しいかな」


 続けて一輝もおどけた調子で肩を竦めて話を広げれば、みなもも「それ、私も聞きたいです!」と興味を示す。

 この場の空気が緩むと共に、春希も頬を緩ませ苦笑い。


「そんな大したこと知らないよ。現場のことで手一杯で」


 すると伊織が頭の後ろで手を組みながら言う。


「でもオレらそういう業界のこと何も知らないし、ちょっとした話でも物珍しいから」

「そうですよ。どういうことをしているのか、気になりますもん」


 みなもも同意すれば、春希は顎に指を手を当てむむむと唸る。


「急には思いつかないよ。てか海童の方がお姉さん絡みで詳しいんじゃない?」

「僕が知ってるのは、姉さんのやらかしくらいだよ。別のスタジオに行ったり、大寝坊したり、着る服間違えて撮影して、誰も気付かなかって撮りなおしたこととか」


 一輝がげんなりした様子で姉の失敗談を語れば、皆からもくすくすと笑い声が上がる。

 そしてみなもが、ふにゃりと柔らかい笑みを春希へ向けた。


「皆さん知りたいんですよ。今の春希さんが、何をしているのかを」

「……そっか。ホント、なんてことないことしか話せないよ。それに多分、愚痴ばっかになっちゃうと思うし」

「その愚痴こそ、聞きたいんだよ。な、隼人?」

「っ!」


 伊織からこちらに話を振られると共に、パシンと背中を叩かれる。

 その勢いで隼人は一歩前に出る形になり、春希の前へ。


「俺は――」


 そこで一度、言葉を区切る。今、皆と春希は和やかな会話をしていた。

 きっとこの友人たちは、意識してそういう空気を作ってくれたのだろう。

 これまでと同じノリで話せるように、明らかにお膳立てしてくれている。

 そんな皆の心遣いをありがたいと思う。

 ――この流れに乗って、いつも通りの日常に浸ればいい。

 そのためにやってきた。そんなことはわかっている。

 だというのに隼人の口からは、今の感情を濃縮した言葉が零れてしまった。


「俺、寂しかった」

「…………ぇ?」


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― 新着の感想 ―
本音が零れる程の感情があったわけですね。
春希さんがいなくなる前の日常を友人達が求めている中、隼人さんの口から出た言葉は全く違うものだった。それはもしかしたら本心の表れなのかもしれませんね。
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