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転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件【2026年アニメ化決定】  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第8章

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335.春希のいない冬


 元旦に鮮烈なアイドルデビューを果たした春希と茉莉。

 同業のアイドルの中でも頭一つ抜きんでた清純派の容貌に、本業の歌手すらも圧倒する歌唱力、それから切れのあるダンスに豊かな表現力。更に、ともすればただのスキャンダルにしかならない大女優田倉真央の隠し子ということも、ネタとして消化し、明るいキャラを演じるための話題にするトーク力。

 春希たちはたちまち世間の注目を集め、瞬く間に人気を獲得していった。

 年明けの教室は当然というべきか、ハチの巣を突いたような大騒ぎ。


「おい霧島、どういうことだ、何か聞いてないのか!?」

「二階堂さん、めっちゃブレイクしてない!?」

「年末とか、そういう気配全然なかったよね!?」

「オレ、デビュー曲鬼リピしてるし! てか頼めばサイン書いてくれるかな!?」

「いや、それは……」


 登校するや否や即座にクラスメイトたちに囲まれ、質問を雨あられのように浴びせかけられる。隼人だって何も聞いておらず、寝耳に水だったのだ。聞かれても何も答えられるはずがない。むしろこちらの方こそ、色々と聞きたいところ。

 とはいえつい先月まで一緒の教室で学んでいたクラスメイトが、冬休みを境にトップアイドルへと駆けのぼろうとしているのだ。些細な情報でも知りたいという心境は、わからなくもない。

 それに今まで隼人が誰よりも春希の近くにいたのも事実。

 隼人が何を言えばいいかと答えあぐねていると、春希の情報を出し渋っていると思われたのか、周囲からは不満の声が滲みだす。

 どうしたものかと手をこまねいていると、背後から伊織が明るい声で割って入ってきた。


「おいおい皆、気になるのはわかるけど隼人のやつをイジメてやるなって。マジで何も知らないんだよ。正月、オレたちにもどういうことかって訊ねてきたくらいだし。な?」

「そうそう、私も春希ちゃんに何度かメッセージ送ったけど、守秘義務がどうこうって言われたらそれ以上何も聞けなくて。ね、霧島くん?」


 続いて恵麻も擁護の言葉を紡いでくれ、こちらに向かって片目を瞑る。隼人は友人たちの気遣いをありがたいと思いつつ、申し訳なさそうに片手で頭を掻いた。


「俺も本当に、何も聞いてないんだ。むしろ教えて欲しいくらいで……」


 実際、隼人も正月テレビに映る春希を見てすぐ、どういうことかを訊ねるメッセージを送っている。


『お母さんと本気で向き合ってみようと思って』

『何かあると頼るし、今はボクを信じて』


 しかし数日遅れの返事でそういわれれば、相棒(・・)としても見守るしかなかった。



 3学期が始まった春希のいない学校は、彼女のことで連日盛り上がっていく周囲とは裏腹に、隼人にとって無味乾燥とした張り合いのない日々が、ただただ漠然と過ぎていく。

 一方春希の方はといえばテレビCMに街中ではタイアップされたポスター、ファッション雑誌でインタビュー、ネットの各所では特集記事が組まれ、2ヶ月もすれば彼女の姿を見ない日なんてない。

 それだけ精力的に活動していれば当然、学校に来る余裕はないようだった。


 ――出席日数とか大丈夫なのだろうか?


 薄ぼんやりとそんなことを考えるも春希のこと、ちゃんと計算しているだろう。

 しかし定期考査は受ける必要がある。学力的なことは心配していないが、そちらの方はどうするのかと思って迎えた3学期の期末テストの日。

 この日も春希は登校時間に姿を現さなかった。

 しかしSHRの最中、ふいに窓際の生徒が驚嘆の声を上げる。


「おい、あれって二階堂じゃね!?」

「あ、ホントだ! 試験受けに来たのかな?」

「まぁ今の人気だと、普通に登校するわけにいかないもんな」


 にわかに教室が騒めき出す。隼人も窓から校門の方を見渡せば、タクシーで乗り付け駆け足で学校へとくる春希が見えた。他のクラスでも春希の姿を見つけたのか、校内全体が騒然としていく。

 春希の登校は織り込み済みだったのか、担任教諭が特に何か言う様子もない。ただ色々配慮した結果、春希が別教室でテストを受けるという旨が伝えられ、皆の口から落胆のため息が漏れた。

 当たり前の措置だろう。今や春希は押しも押されぬトップアイドル街道を驀進中。その人気はいかほどのものか。もし万が一、校内で春希に何かあれば一大事。

 その後も春希は隼人たちの教室に顔を出すこともなく、一足早く迎えに来たタクシーで学校を後にした。

 必要なことだと、理屈として頭ではわかる。

 だけどこの一件が明確に今の春希のいる立場との差を実感させられ、現実を突きつけられた形になった。

 その後、沙紀から聞いた話によると、この年の受験希望者は過去に類を見ないほど数が多かったらしい。おかげで入学倍率がとんでもないことになったのか。

 春希の影響がこんなところに出ていたようだった。

 どこか置いていかれていくような焦燥感に駆られる隼人。遠く離れていてもすぐに駆け付けられるようにと、お守り代わりに取得したはずの原付免許が、やけに頼りないものに思えてしまう。

 だからというわけじゃないが二輪免許の教習所に通うようになり、あっという間に春休みも過ぎていく。

 そして訪れた4月。

 隼人たちは2年に進級し、沙紀が後輩として1年に入学してきた。


これまで毎週金曜日投稿でしたが、しばらく不定期更新になります。

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― 新着の感想 ―
お久しぶりです。急展開。 置いてきぼりで距離があって、届かなくて。 もどかしい気持ちが伝わって来ます。 続き楽しみにしています。 いつもありがとうございます。
考えてみれば転校してからずっと隼人さんは春希さんと行動を共にしていたわけですし、沙紀さんも受験で忙しかったので、刺激の少ない三学期になったのでしょうね。進級したことで何が変わっていくのか、続きを楽しみ…
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