第186話 村からの依頼
「村長が、俺たちに用事ですか?」
「ああ。あんたたち、ちょいと表に出てみな」
「表……? って、うわっ!?」
番台のおばちゃんに言われて混浴温泉の建物の外に出てみると、そこには村人らしき男性が数人、ずらりと並んでいた。
「おおっ、お待ちしておりましたぞ、冒険者の皆様。どうか我らの頼みを聞いてくだされ」
「は、はあ……」
村人たちの代表らしき老人(村長のようだ)にそう言われて、俺たちはあれよあれよと、村の一番大きな建物(村長の家らしい)に連れていかれた。
中に入ると、会議室に使えそうな大きめの部屋に通される。
席に着いた俺たちは、お茶やお茶菓子などを振る舞われて丁重にもてなされた。
そんな俺たちの前には、村の代表者らしき男たちが数人集まっている。
彼らの前にはお茶菓子などがあるわけではなく、当然ながら、ただ歓談をするという雰囲気ではなさそうだ。
「それで、頼みたいこととは」
俺は村長に向かって問いかける。
「うむ。おぬしらを冒険者と見込んで頼みがあるのだ。モーリス」
村長が、背後に立っていた男の一人に声をかける。
モーリスと呼ばれた男は、弓矢や短剣を身につけた狩人風の出で立ちだが、冒険者のような「力」は持っていないようだった。
その狩人風の男が、こう口にする。
「動く死体の群れだ」
「ゾンビ、ですか?」
「ああ。この村を出て、西に四半刻ほど進んだ森の中に、今は使われていない神殿の跡地らしき建物がある。俺は今日、狩りの最中にそこを通りがかったんだが──そこにゾンビの群れがいたんだ」
ゾンビ。
モンスター図鑑によると、スケルトンと並ぶ最弱クラスの不死者型モンスターである。
スケルトンには以前にドワーフ集落の一件でお目にかかったが、ゾンビはいまだ遭遇経験がない。
とはいえ、何しろ最弱級のモンスターなので、今の俺たちの実力なら特に問題になる相手ではないはずだ。
狩人風の男は、こう続ける。
「俺がやつらの存在に気付かずに近くを通りかかったとき、襲い掛かられそうになった。それで慌てて逃げてきたんだが、やつらはすぐに追いかけてこなくなった。どうも神殿跡の周囲を支配領域にしているみたいだ」
そこに村長が話を継ぐ。
「だがそれも、真実かどうかは分からん。何しろ村のすぐ近くだ。いずれこの村に襲い掛かって来ないとも限らん。そこでそうなる前に、おぬしらにゾンビどもの討伐を頼みたいのだ。報酬は金貨で二十枚を考えておる」
「なるほど……」
問題が起こっている現場までは、すぐに行って帰ってこれる距離だ。
パパッと討伐を済ませてくれば、エスリンさんたちの護衛任務に支障はきたさないだろう。
報酬もゴブリン退治のようなものと考えると、依頼の難易度に対して適正額と言える。
それに加えて、俺たちにとってはプラスアルファもあり得る。
「話は分かりました。ところでモーリスさん、ゾンビの数はどのぐらいいたか分かりますか?」
「俺も慌てて逃げたから、はっきりとは分からないが、十体以上はいたと思う」
狩人風の男はそう答える。
よし、いい数だ。
未達成ミッションの中に「ゾンビを10体討伐する(獲得経験値2000)」というのがあったはずだ。
こっちも小遣い稼ぎレベルだが、リスクも低いし、やって損があるものでもない。
しいて問題点をあげるなら、温泉に入ってリラックスした後に働きたくないということぐらいだが──
などと思っていると、村長がこんなことを付け加えてきた。
「もう一つ、気になることがあるのだ。昨日のことだが、冒険者と思しきダークエルフの娘が一人、この村に立ち寄ったあと、西に向かっていったのを見た者がおるのだ」
「ダークエルフが……? 西っていうと、その神殿跡がある方角ですよね」
ダークエルフ。
肌が浅黒いエルフのことをそう呼ぶらしく、街で普通に見掛けることもある。
特に邪悪な種族とかではないらしいが──
ともあれ俺たちは、このゾンビ討伐の依頼を引き受け、街の西にあるという神殿跡へと向かうことにした。
こんな特別ミッションも出たしな。
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特別ミッション『西の神殿跡にいるゾンビの群れを討伐する』が発生!
ミッション達成時の獲得経験値……3000ポイント
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さてさて、鬼が出るか蛇が出るか。
ゾンビが出ることはほぼ確定だが、温泉で体を綺麗にしたあとだし、なるべく魔法で倒したいところだな。




