第130話 ダンジョン探索
爆炎と風刃の嵐が、モンスターがいた部屋全体に巻き起こる。
それらがやむと、四体のモンスターのうち二体は消滅し、魔石へと変わっていた。
ガーゴイル二体を撃破し、残るはフレイムスカル二体だけ。
計算通りだ。
「風音さん!」
「うん、大地くん!」
俺と風音さんが武器を手に、部屋の中へと踊り込む。
フレイムスカルの魔法の発動より、こっちの近接攻撃のほうが早い。
俺は槍を、風音さんは二振りの短剣を、それぞれ一体ずつのフレイムスカルに突き立てた。
二体のフレイムスカルも黒い靄となって消滅し、魔石が落ちた。
戦闘終了だ。
「「「イェーイ!」」」
俺と風音さん、弓月の三人でハイタッチ。
なんか懐かしい流れだな。
「す、すごいですわ……。あの強敵を、こんなにあっさりと……」
アリアさんはそう言って、目を丸くしていた。
適正レベルの相手なら、数が重要なファクターになるからな。
一人だと敵わない相手も、三人いればこんなもんよ。
あと状況も良かった。
十分な情報があって、地形条件も奇襲で範囲攻撃魔法を叩きこむのに都合がよかったとあれば、こういう結果にもなるだろう。
ちなみに、このぐらいのモンスターになってくると、獲得経験値もなかなかバカにできない。
一体につき、ガーゴイルは200ポイント、フレイムスカルは300ポイントの経験値が撃墜者に加算される。
一体あたり13ポイントのオークなどとは、文字どおり桁が違うわけだ。
さて、モンスターの群れを撃破して、障害は排除した。
部屋には俺たちが入ってきた扉とは別に、奥にもう一つ扉がある。
その扉のほうから、カチャッと音がした。
歩み寄って手をかけると、扉は問題なく開いた。
さっきの音は、それまでかかっていた鍵が解除されたか何かだろう。
扉の先には、なおも通路が続いている。
「こいつらを倒したらダンジョン脱出、というわけにはいかないみたいだな」
「このダンジョン、結構長いんすかね?」
「さあ? 進んでみるしかないんじゃないかな。行ってみよう」
「皆さん、迷いなく進みますわね……」
俺たち三人が通路を進んでいくあとを、アリアさんがおずおずとついてくる。
しばらく進んでいくと、再び扉に突き当たった。
風音さんによると、扉の先にモンスターの気配はないとのこと。
警戒しながら扉に手をかける。
扉は問題なく開いた。
扉の先は、再び部屋になっていた。
大きさは、先ほどと同じ五メートル四方ほど。
左手側の壁に扉があって、ほかには進路らしきものは見当たらない。
が──
「宝箱が三つ……ですわね」
アリアさんが、そうつぶやく。
彼女が言うとおり、部屋には宝箱があった。
それも部屋のド真ん中に三つ、左右に並んで、これ見よがしにだ。
異世界に来てから、宝箱に遭遇するのは初めてな気がする。
やはりこの世界にもあるのか、宝箱。
いや、ここが俺たちの世界のダンジョンである可能性もあるのか。
「アリアさん、こういう宝箱に遭遇したことは、これまでに何度かあります?」
「宝箱自体を見たことは、もちろん何度もありますわ。こう見えてもわたくし、冒険者を始めて四年になりますの。でもモンスターを倒してもいないのに、こうしていきなり宝箱があるのは初めて見ましたわ。誰かがここでモンスターを倒して、開けずに立ち去ったとかかしら?」
このアリアさんの返事から分かることがいくつかある。
まず異世界──アリアさんたちが住む世界にも、こうした「宝箱」そのものは存在すること。
そして宝箱は、モンスターを倒すことで出現するのが一般的だということ。
四年間も冒険者をやっているアリアさんでも、モンスターから出現する以外の宝箱は見たことがないほどのレアケースのようだ。
だが……この宝箱、どうにもキナ臭い。
「たしか風音さんも、スキルポイント1点残しておくようにするって言ってましたよね。今もスキルポイント残ってます?」
「奇遇だね、大地くん。私も今、たぶん大地くんと同じこと考えてるよ。じゃあせっかくだし、ここであのスキル取っちゃおうか」
「ですね。お願いします」
「おっ、風音さん。ついに取るんすね、あのスキルを」
「ついに取るんです。あのスキルを」
風音さんはステータス画面をちょいちょいっと操作する。
それを見て、アリアさんがきょとんとした様子を見せる。
「……? 皆さん、先ほどの強さから見て、レベルは25まで届いていますわよね? スキルポイントなんて残してありますの?」
「あー……それはいろいろありまして」
実は俺たち、限界突破中なんです──とか言ったらどういう反応を見せるんだろう。
別に一所懸命に隠す必要もない気はするのだが、変に目立っても面倒そうだし、一応言葉を濁しておこうと思う次第。
そうこうしているうちに、風音さんのスキル取得が終わったようだ。
風音さんは宝箱に手をかざし、一つずつスキルを使ってチェックをしていく。
「いくよ──【トラップ探知Ⅱ】!」
これが、風音さんが新規に修得したスキルだ。
遺跡層で取り損ねた、「ミミック」をも看破するトラップ発見スキルである。
すると宝箱は、三つとも赤く光った。
スキルを使った本人である風音さんが、微妙な顔をする。
「うーん、予想どおりというか、なんというかだね。三つのうち、『左』と『真ん中』のはミミックだ。『右』のは毒ガス。解除しないで開けると、あたりに毒ガスがぶわっとなるやつ」
「解除できます?」
「もちろん。全部無力化できるよ。──【トラップ解除】!」
風音さんは三つの宝箱に、一つひとつ【トラップ解除】のスキルを使用していく。
俺たちの世界のダンジョンと同じ法則なら、「ミミック」も、看破さえできていれば【トラップ解除】で無力化できるはずだ。
そして無力化すると普通の宝箱に変わるとかいう謎仕様のはず。
「オッケー。全部解除したよ。それじゃ開けるね」
風音さんは三つの宝箱を、左のものから順に開けていった。
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