90 選抜戦開始
「私の名はマーティ! 3番隊で最強のスライム族だ!」
全身が青く透き通った体の魔族が叫んだ。
最強のスライム――か。
「……ん? 3番隊のスライムって他にいたっけ」
「……私だけだ」
じゃあ、確かに最強のスライムだな。
「言っておくが、私の体に剣は通じん! 剣士である君にとっては最悪の相手――」
「【バーストアロー】!」
俺の放った一撃は衝撃波を伴い、マーティをその圧で闘技場の端まで吹っ飛ばした。
「ひああああああ……」
悲鳴と共に闘技場から落下していくマーティ。
はい、アウト。
いくら剣が通じないボディだからって、戦いようはあるってことだ。
「さ、次――」
周囲を見回したところで、
「背後を取ったぞ! ワシはガーゴイル族のジャオ――」
「【スカーレットブレイク】!」
振り向きざまにコンボスキル一閃。
魔獣ガーゴイルの一族であるジャオ――見た感じは七十代くらいの老人――は崩れ落ちた。
「つ、強すぎ……る……」
がくり。
失神したので、これは戦闘不能扱いだよな。
「ジャオ選手、失格!」
審判役を務めている魔族が宣言した。
よし、次だ。
とはいえ、さっきのジャオは俺がマーティを攻撃した直後の隙をついてきた。
今後はもっと気を付けないとな……。
俺は周囲を見回した。
闘技場が円形であることは既に説明したけど、ここは平面ではなく、小さな山が二つと、クレーターのような窪みがいくつか作られている。
山に登って高地から砲撃を行ったり、窪みに身を潜めて奇襲をかけたり――と様々な戦術が可能なわけだ。
既に山に登ろうとして、ぶつかり合う魔族もいれば、窪みに身をひそめ、周囲の状況をうかがっている魔族もいる。
俺も周りに気を配らないとな――。
と、
ぎんっ、ぎいいんっ。
二十メートルくらい先で剣戟の音が聞こえてくる。
二人の魔族が激しい接近戦を繰り広げているのが見えた。
あれは――。
「ミラとバロール!」
褐色肌の美少女が二本の剣を繰り出し、それを両腕の手甲で受けながら、反撃する伊達男。
二人の戦いは実力伯仲――。
……いや、
「くっ!? 以前より腕が上がっている――」
「当たり前だ! この俺はいずれ3番隊のエースになる女だぜ!」
ミラが二刀を繰り出し、攻勢に出た。
「へえ、すごいな……」
前に見た時より、さらに剣が冴えている。
どんっ!
と、俺の足元に魔法弾が着弾した。
「よそ見をしていていいのかしら?」
「ラヴィニア隊長――」
腰まで伸びる銀色の髪が、爆風でなびいている。
こうして、実際に隊長と戦うのは初めてだ――。
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