表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/121

87 魔族のサムライ

「お初にお目にかかる。ゼル・スターク殿とお見受けする」


 と、カザオトが俺の前で足を止めた。


 涼しげな顔立ちの少年で、赤茶けた髪を高い位置で結い、垂らしている。


 まさしくサムライという感じだ。


 身に付けているのは、これまたサムライ然とした着物に手甲と脚絆(きゃはん)だ。


「拙者、一週間前に3番隊に配属になったカザオトと申す者。お見知りおきを」


 堅苦しい言い回しで一礼するカザオト。


 外見通り、性格や言葉づかいまで完全に武士のそれである。


「ゼル・スタークだ。よろしく」


 俺も礼を返す。


 あらためて彼を見つめた。


 ……うん、間違いない。


 ゲームに登場するSSRキャラ、カザオト・レイガだった。


 独自の剣技と、闘気を使用した闘法を操り、魔法が効きにくい相手にも遠距離攻撃でダメージを与えたり、色々と重宝するキャラだったことを覚えている。


 が、登場するのはゲームの中盤以降。


 もちろん3番隊に同行して序盤で死ぬ……なんてシナリオではない。


 それがなぜ3番隊に配属されているんだ?


 俺は訝しんだ。


 序盤で全滅する運命の3番隊に、ゲーム中盤以降に登場するカザオトがいる――。


 これは、何を意味するんだろう?


 カザオトだけは全滅から免れるということか?


 それともカザオトも全滅に巻き込まれ、本編とは違う死を迎えるのか?


 いずれにしても――シナリオが変わり始めているのかもしれない。

 と、


「光栄でござる」


 カザオトが恭しく礼をした。


「人間界での潜入任務において、【聖女】と呼称される人間を撃破したとか」


 俺を見つめながら、うっとりとした顔で告げるカザオト。


「拙者もあなたを見習うとしよう。戦果を挙げられるように、さらなる精進を致す。その手始めとして――今回の対抗戦の一員に選ばれることを目指しているのでござる」

「戦果……か」


 俺は、人を殺したんだ。


 しかも二人。


 色々なことがあって、その事実とキチンと向き合わないまま時間が過ぎてしまった。


 レキの死。


 そして、その後の修行の日々。


 いや、きっと俺は忘れようとしていたんだ。


 何かに没頭していれば、それ以外のことを忘れ、あるいは薄れさせることができる。


 そうやってレキの死の悲しみを遠ざけるのと同時に。


 俺は、人を殺したという重みからも逃げていた。


 けれど、カザオトの言葉で久しぶりに思い出してしまった。


 そう、俺は人間を二人殺したんだ――。

【大切なお知らせ】


エンターブレイン様から『死亡ルート確定の悪役貴族』の書籍版が発売中です! なろう版から4割近くを書き下ろし、新規エピソードがたくさん入ってますので、なろうを読んで下さっている方もぜひよろしくお願いします~!


広告下の書影をクリックしてもらえると公式ページに飛べます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼書籍版2巻がKADOKAWAエンターブレイン様から6/30発売です! 全編書き下ろしとなっておりますので、ぜひ!(画像クリックで公式ページに飛べます)▼



ifc7gdbwfoad8i8e1wlug9akh561_vc1_1d1_1xq_1e3fq.jpg


▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ