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86 俺の目指す場所は

 その晩、俺は一人で考えていた。


 俺が、これから目指す場所について。


 俺が前世の記憶に目覚めてから最初に抱いた目標は『生き残る』ことだった。


 そのために俺は強くなろうと欲したし、そのための試練を乗り越えてきた。


 魔獣討伐戦。


 異空間の下級闘技場。


 騎士団長クラスの魔族ルインとの激闘。


 人間界潜入任務。


 成長カプセルの入手チャレンジ。


 聖女マリエルとの死闘。


 レキを失った後、魔界帰還後の修行。


 異空間の中級闘技場。


 そして、今――。


 もちろん、今だって『生き残る』ことは大きな目標だ。


 誰だって死にたくはない。


 俺だって、そうだ。


 まだまだ生きていたい。


 滅びの運命なんて覆したい。




 そして――仲間たちを守りたい。




 ラヴィニア隊長を、ミラやバロールを、他の3番隊のメンバーたちを。


 守れなかった、レキの分まで。


 それは俺がこの世界で生きていく中で、大きくなっていった感情だ。


「だから俺は、もっと強くならなきゃいけない」


 大切なものを守るためには、力だ。


 レキを守れなかったのは、俺に力が足りなかったからだ。


 今度の対抗戦――そして、その選抜戦も、今までとは違うスタイルの戦場になる。


 この戦いで俺はもっと強くなる。


 もちろん、これは命懸けの戦いとは違う。


 競技の延長上にある戦いだ。


 けれど、多くの強者たちと競い合うことで、きっと何かをつかめるはずだ。


「まずは対抗戦のメンバーに選ばれないと、な」


 俺はあらためて決意を固くし、闘志を燃やす――。




 翌日、その日は隊の装備の点検業務があった。


 装備といっても、現代の軍隊と違って、最低限の統一装備すらなくて、本当に各人バラバラだ。


 そもそも種族によって得意スキルや魔法、あるいは特殊能力持ちなど戦闘スタイルが千差万別のため、統一装備なんて作れないのだ。


 俺の場合、当初はメイン武器の長剣と予備の剣だけだった。


 けれどコンボスキル【バーストアロー】の改良型を会得してからは、大量の投げナイフとメイン及び予備の剣という装備に変わった。


 ナイフを大量に装備して重量が増えたため、鎧を今までより軽めにする……という微調整も同時に行っている。


 当然、他の隊員たちもそれぞれの戦闘スタイルに最適化した装備をしている。


 だから装備点検というのは、あくまでも自分の装備を自分で点検するという業務になる。


 俺は業務の有無にかかわらず、毎日のように点検しているけど、意外とものぐさな魔族もいて、こういう『全員で必ず装備を点検する日』を作らないとサボる奴が出てくるのだ。


 適当だなぁ、と思わなくもないけど、魔族の場合、装備に頼らずに自前の爪や牙、あるいは特殊スキルや魔法だけでも戦えてしまう者もいて、そういうタイプの場合は特に点検をサボりがちなんだとか。


 まあ、そんなわけで俺は剣やナイフ、鎧を点検しているんだけど――。


「……ん?」


 前方から見慣れない魔族が歩いてくる。


 たぶん、新入りだろう。


 けれど、その姿には見覚えがある。


 確かゲーム内で中ボスクラスの強さを誇る強キャラ――。


 魔族のサムライ、カザオト・レイガだ。

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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