表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/121

61 これから、ミラが目指す道2(ミラ視点)

 そんなある日、ミラの家をゼルが訪ねてきた。


「突然来て、悪いな」


 謝りながら、ゼルは切り出した。


「隊を休んでいるみたいだから、ちょっと気になってさ」

「……ただの休暇だ」

「休暇だっていうことはラヴィニア隊長からも聞いたよ。ただ、本当にそうなのかな……って」


 ゼルがミラを見つめる。


「心配だったんだ」

「何が言いたいんだ?」


 たずねながら、ミラは自分の声に力がないことを自覚した。


 今からゼルが話す内容は、容易に予測できる。


 そのことについて話すのは、気が重かった。


「レキのこと……だよな?」

「……ああ」


 ミラはうなずいた。


「色々考えちまってさ。お前は、どうなんだ?」


 と、ゼルを見つめる。


 彼は真剣な表情でうなずき、


「俺も色々考えたよ。彼女のことを。彼女が、殺されたときのことを」


 ゼルがぽつりぽつりと話し出す。


「レキを守れなかった……その事実は消えない。痛みも消えない。きっと後悔も――でも、俺はまだ生きているんだ。だから、生きている者ができることをしようと思ったんだ」


 言って、顔を上げる。


「彼女が死んでから、ずっと考えていたんだ。俺はどうすべきだったのか、って。もっと上手く立ち回れば、彼女を死なせずに済んだんじゃないか、って……自分を責めたりもしたし、悔んだりもした」

「……そうか」


 ミラはその場にいなかったが、ゼルはその場にいて、レキが死ぬところを目にしているのだ。


 ミラとは違う心の痛みがあるはずだ。


「お前も……いや、お前の方が苦しんでたんだな」


 つぶやくミラ。


「いや、それも違うと思う」


 ゼルが首を振った。


「君だって苦しんでいたはずだ。様子を見れば分かる。レキといい友だちだったんだろ?」

「友だち……か」

「俺は、レキとの付き合いがそれほど長いわけじゃない。ミラはどうだったんだ?」

「んー……だいたい10年くらいの付き合いかな」

「けっこう長いんだな」

「まあ……そうかもな。性格は全然違うけど、妙にウマがあったよ」


 ミラが小さく笑う。


「俺は友だちがたくさんいるタイプじゃないけど、あいつとは……本当にいい友だちだった、って今になってわかる」

「ミラ……」

「普段は一緒にいるのが当たり前だったから、そんな風に意識することはなかったんだけどな、はは」


 ミラはため息をついた。


「いなくなってから気づくんだよな……こういうのって」


 ふいに、目頭が熱くなった。


「レキ、いい奴だったのにな」


 ぽつりとつぶやいた。


 そう、ミラは彼女のことが好きだった。


 自分で考えている以上に、きっと胸の中に大切な存在としていてくれたのだ、レキは。


 だから、悲しい。

 だから、寂しい。


「あたしの……大切な友だちだった……」


 ミラがうめく。

 声が震える。


 胸が詰まるような思いとともに、ミラは涙を流した。


「大切な……」


 言葉にならない。


 ああ、そうか――。


 ミラはやっと分かった。


 自分はただ、悲しみたかったのだ。

 友のために、涙を流す時間が欲しかった。


 ゼルと話しながら、やっと自分の気持ちが整理でき始めた。


 ミラはしばらくの間、ずっと泣いていた。


【大切なお知らせ】

エンターブレイン様から書籍版が発売中です! なろう版から4割近くを書き下ろし、新規エピソードがたくさん入ってますので、なろうを読んで下さっている方もぜひよろしくお願いします~!

広告下の書影をクリックしてもらえると公式ページに飛べます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼書籍版2巻がKADOKAWAエンターブレイン様から6/30発売です! 全編書き下ろしとなっておりますので、ぜひ!(画像クリックで公式ページに飛べます)▼



ifc7gdbwfoad8i8e1wlug9akh561_vc1_1d1_1xq_1e3fq.jpg


▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ