55 託された者
なろうに投稿している別作品『死亡ルート確定の悪役貴族~』書籍版の発売日です! 宣伝を兼ねて今日は一気に5話投稿します~!
一人でも多くの読者の方に届きますように……(祈り)
レキが動かなくなった瞬間、俺の体の内側に燃えるような熱が宿った。
「くっ……おおおおおおおおおおおおおおおおおっ……!」
この『熱』は――。
レキの魔力が、俺の全身に宿っている。
いや、これはただの魔力じゃない。
レキの、命そのもの――。
『大丈夫です。ゼルさんなら、きっと……』
俺のすぐ側で、レキが語りかけてくるような気がした。
俺に宿ったこの魔力を通じて、彼女の存在を感じる。
レキが一緒にいてくれる。
「そうだな、君がいれば――必ず勝てる」
俺たち二人で、必ず。
どんっ!
床を蹴り、爆発的な勢いでマリエルへと迫る俺。
普段の【突進】とは速度の桁が違っていた。
あまりのスピードに周囲の空間が悲鳴を上げるように歪んでいく。
「そんな!? 空間転移に準ずる速度を、たかが下級魔族が――!?」
「俺は……俺たちは、未来をつかむ!」
生きて、必ず。
「だから、相手が人間でも――俺は斬る!」
そうだ、守るべき相手と倒すべき相手。
それを見誤ってはいけないんだ。
たとえ異種族であろうと――たとえ魔族であろうと、レキは守るべき仲間なんだ。
たとえ人間であろうと――今のマリエルは、倒すべき敵だ。
倒さなきゃ、俺が、レキが、殺される。
と、
「【悪滅の矢】!」
マリエルの手から無数の光の矢が飛んできた。
この矢の一本一本に【浄化】の力がこめられているんだろう。
「一本でもかすったら――死ぬ」
俺はゴクリと息を飲んだ。
【集中】して【見切り】を発動する。
飛んでくる矢の一本一本がスローモーションに見える。
俺はそれらをすべて避けながら、マリエルへと接近した。
「ちいっ、ちょこまかと避けて――」
マリエルが舌打ちする。
「ならば、これなら――【悪滅の楽園】!」
こうっ!
マリエルの全身からまばゆい光が放射状に広がった。
まずい!
全方位に広がるこいつを避けるすべはない!
たぶん射程距離が短くて、俺が接近するまでは使ってこなかったんだろう。
いくら俺の速度が瞬間移動並に上がったとはいえ、この距離とタイミングでは――逃げられない。
マリエルの光が俺のいる場所まで到達し、
ばしゅっ!
その瞬間、俺に宿った魔力が俺から離れ、前方で盾のようになって広がった。
「レキ……!?」
彼女の魔力が、俺を守ってくれた――。
きっと、これで最後だ。
今、レキの命は俺の元から去り、俺を救うためにすべてを使い果たそうとしていた。
『今しかありません、ゼルさん……』
レキの声が、聞こえた気がした。
「ありがとう。この一撃を撃てるのは、君のおかげだ」
俺はマリエルに向かって踏み込む。
すべての決着をつけるべく、最後の一撃を放つ。
「くおおおおおおおおおおおおおっ……!」
周囲に残留するレキの魔力が俺の手に集まり、剣となり――。
ざんっ!
マリエルの首を刎ね飛ばした。
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