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104 魔族の剣士VS魔族のサムライ3(カザオト視点)

「【疾風の太刀】!」


 ばしゅっ!


 カザオトの斬撃から風の刃が放たれる。


「くっ……」


 幻惑されていたゼルは回避が遅れたようだ。


 ざしゅっ……!


 右肩を浅く切り裂かれ、血を流しながらよろめくゼル。


「まだまだぁっ!」


 さらにカザオトは刀を振り回し、風や炎を飛ばす。


「遠距離攻撃の連発で仕留める!」


 腕も千切れよとばかりに、刀を振る。


 振る。

 振る。

 振る。


 そのたびに風と炎が発生し、四方からゼルに襲いかかる。


「ぐあっ……!?」


 さすがに避けきれず、何発かの直撃を受けてゼルは吹っ飛ばされた。


「好機!」


 倒れたゼルに向かっていくカザオト。


「ま、まだ……だ……」


 その瞬間、ゼルが立ち上がる。


 が、遅い――。


「終わりだ!」


 カザオトの刀がゼルの首筋に突きつけられる――。


 ヴンッ。


 その瞬間、ゼルの姿が消え失せた。


「えっ……!?」


 予想外の現象にカザオトの動きが止まった。


 まるで稲妻を思わせるジグザグのステップで、ゼルが彼の脇をすり抜けたのだ。


 そのフェイントにカザオトの反応速度はついていけず、まるでゼルの姿が消えたように見えた。


「君の動きを真似させてもらった、カザオト――」


 すさまじいスピードで遠ざかり、大きく迂回しながら、ふたたび近づいてくるゼル。


「ちいっ……」


 意表を突かれたカザオトは対応が遅れてしまった。


 ふたたび逃げるよりも早く、ゼルが数メートルの間合いにまで侵入する。


「ここは俺の距離だぜ――!」


 完全に――カザオトには勝ち目のない距離だ。


「さあ、決着だ」


 その声を、カザオトは絶望的な心地で聞いていた。


    ※


「さあ、決着だ」


 俺は剣を手に、じりじりとカザオトに近づいていく。


 正直、さっきの遠距離攻撃連打は答えた。


 奴の動きに幻惑され、こちらの動きが硬直した瞬間に、撃ちまくられてしまい、防ぎきれず、避けきれず――。


 一瞬、意識を失ったし、そこから目覚められたのは運が良かっただけ。


 そして、とっさにカザオトの動きを真似した歩法で、奴を惑わせることができた。


 だから、こうして俺に有利な間合いまで詰められたわけだが――。


 やはり、運や勢いによるところが大きい。


 カザオトは、強い。


「だけど――だからこそ、俺は君に勝つ。勝って、もっと強くなるんだ」

「拙者とて、負けられぬでござる」


 カザオトがうめいた。


「負けられない理由が、ある」

「俺もだ」

「ならば、いざ尋常に――」


 カザオトが刀を掲げる。


 勝負――!


 俺はそれを受けるように剣を中段に構え、【突進】する。




「――そこまで!」




 と、ラヴィニア隊長の声が響き渡った。


「えっ……」


 カザオトと対峙していた俺は、そこで動きを止めた。


「どういうことでござる……?」


 カザオトも刀を構えたまま戸惑った様子だ。


「対抗戦に出場する五人が決まったわ。その他のメンバーはたった今、最後の一人が脱落したから」


 と、ラヴィニア隊長。


 見回すと、俺とカザオト、隊長以外にミラとバロールの姿がある。


「むむむ……不覚を取ったわ」


 そして、闘技場の外に倒れているのは巨大な竜――メリザガルドだ。


 状況からして、ラヴィニア隊長がメリザガルドを闘技場の外に落としたところで、ちょうど残り人数が五人になったらしい。


 選抜戦、これにて決着――。


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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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