一応成長してた
女帝は意地でも報酬はいらないと言うので結局報酬は無しになった。
報酬を受け取ったら完全に裏切り行為になってしまうのでそれだけは避けたいらしい。
まぁ一応今の状況なら俺の隷属化による影響として、あまり罰せられないギリギリのところを攻める事が出来るかもしれない。
もちろん都合のいい部下として使っている奴隷メイド達は返す。
隷属状態なのは変わらないが、俺達に危害を加えないと言う設定をしてから自由意思を与えるつもりだ。
「ところでさ女帝。お前にとっての平和ってどんな感じだ?」
「何を言っているんだ大罪人。以前話し合っただろうが」
「いや、改めて聞いておきたくて。お前の言う平和は今も獣人達を皆殺しにした先にあるのか確認したくて」
「……不思議と今はそこまで考えていない。確かに貴様の言うように彼らには生まれた時から鋭い牙と爪、凄まじい身体能力がある。だが私達の理想のために殺す必要はないと思っている」
「そっか。それならいいか」
やはり思考を誘導される様な洗脳方法をされていたらしい。
前に話した時に比べるとだいぶ落ち着いたように感じる。
「そんじゃスパイ活動よろしくね」
「その言い方は止めろ!!私はポラリス側の人間だ!!」
そう言って女帝たちはポラリスに帰っていった。
さて、俺達は愛の国に向かうか。
「ちょっとだけ待って。お腹痛い」
「え、マジ?そんじゃもう少し様子見るか行くか」
なんて俺とユウがやり取りをしていると妙にレナが鼻をひくひくと動かしている。
するとレナは意外な事を言う。
「ナナシ様。ここはユウのためにもう1週間ほど様子見た後でもよろしいでしょうか」
「ん?別にいいが……まさか妙な病気とかはないだろうな」
「そういったものではありませんが、多少知識が必要だと思いますのでそこらへんも説明しておこうかと」
「よく分からないがその方がいいならそうするか」
あまり理解できていないがそのままレナはユウを連れて行ってしまった。
よく分からず首をかしげていると、ネクスト以外の女性陣は何か察したようで「あ~」だの「そっか」などと言っている。
「お前ら分かんのか?」
「分かるけど多分ユウが自分から旦那様に言うと思うから待てばいいんじゃない?」
そうジラントは言った。
そのうち分かると言うのであれば待てばいい。
女帝の件は片付けたが、だからと言ってすぐに出ていかなければならない事情はない。
それになんだかんだで金を払おうとしたのだがレナにあげた獣槍を獣人の国に返すと言ったら金は要らないと言われてしまった。
それに姉の夫、義兄だから金を取るつもりは元々なかったと。
とりあえず数百年ぶりに帰ってきた獣槍はどんなもんかと国の人達が見学している。
中にはあのバカデカいのを使えるかもしれないと持ち上げようとしたらしいが、結局失敗に終わったらしい。
なのでもう数日泊まる事をシリウスに伝え、ゆっくりしているとジラントの予想通りユウが自信満々に俺の前にやってきた。
「これでもう子供とは言わせない!!」
「……何言ってんだお前?」
全く理解できない事を言われたので俺は首をかしげながらテキーラをショットで飲む。
うん美味い。
獣人の国の酒って度が強いけど美味いんだよな~。
「無視してお酒飲まないでよ!!私は今日大人になった!!」
「何を基準に大人になったっていうつもりだ」
「あの日が来た!!」
「どの日だよ」
「だから……あの日!」
「…………何でもない日おめでとう?」
「ごめんそれもっとよく分かんない……」
「俺だって全く分かんねぇよ。今日お前の誕生日だったか?」
大人になったと聞くと成人したという意味が一般的だと思う。
でもユウの誕生日なんて調べてないし、ステータス画面にも出てこないのでどう調べればいいのかも分からない。
もしかして覚えていたのか?と思ったそうでもなさそうだ。
「だから……女の子特有のあの日!今日来たの!!」
「…………ああ!初潮か!」
「そう!つまり私も赤ちゃんを産めるようになったんだよ!!これでもう子供とは言わせない!!」
「あれ?初潮ってそう言う意味だったっけ?」
確認するようにレナに聞くとため息をつきながら言った。
「正確に言うと赤ん坊を産む準備が始まった日と言う方が正しいかと。この後安定し、月に1回月経が来れば安定したと言えるでしょう」
「そんじゃまだ子供産めないじゃん」
「当然です。そんな突然赤ん坊を産めるようにはなりません」
つまりユウの勇み足だったわけだ。
ユウはそう言う意味だっけ?っという感じで首をかしげている。
俺はため息をついた後一応祝っておく。
「まぁ一応おめでとさん。ようやく第二次成長期が来るな」
「だいにじ?」
「簡単に言えば体つきが女らしくなるって事。まぁはっきりと性別が分かれる時期って事だ」
「ふふん。やっぱり大人になってる」
「まだその途中だろうが。そんなに祝ってほしいなら赤飯炊くか?」
「おせきはんって美味しいの?」
「個人的にはそんな美味いもんでもない」
俺基本豆は豆のまま食いたいんだよね。
だから枝豆とか煮物の豆は普通に食うけど、ペースト状になった奴とか苦手。
あんこ?あんこはこしあん派。
中途半端に豆が残ってるのが1番苦手。
「一応食べてみたい」
「え~っと。もち米と小豆、あと何が必要だっけな……それとももういらないか?」
いざ作ろうと思うとこれでいいんだっけ?っと思う事が多い。
まぁ何で祝うのかよく分かんないけど。
なんて話しているとユウがなぜか俺の事をじっと見ている。
「…………」
「……何だよ」
「いや、エッチなことしないのかなって」
「何度も言わせるな。子供を抱く趣味はない」
確かにユウはだいぶ成長して中学生か高校生くらいには見えるくらい成長した。
でも俺の中ではまだ子供と言う感じが抜けず、抱きたいですか?っと聞かれると全くないと言うのが心情。
俺はユウの事を全く性的に見ていないし、多分これから先もそういう目では見れないと思う。
もちろんだからと言って愛していないのかと聞かれるとそうでもない。
ユウは俺の物と言う気持ちはあるし、誰かに奪われても構わないかと聞かれるとそんなわけがない。
ただレナ達、つまり抱いたことがあるメンバーとは何か違うが大切には思っているという事だ。
「また子供って言った!」
「初潮来ただけで大人気取ってる奴は子供だろうが」
「む~。ならどうなったら大人だって認めてくれるの?」
「そりゃ…………なんだろ?」
「せめて大人になった条件を教えてよ!!」
そう言いながら俺の肩をゆするユウだが、確かに何を持ってユウを大人として扱うのか決めてなかった。
というか決められるの物なのか?
……なんか無駄に壮大な話になりそうだから深く考えないでおこう。
「まぁとりあえず大人への階段を一歩踏み出したって事なんだからそれで今は満足しておけ」
「え~」
「え~だろうがへ~だろうが関係ない。で、身体の調子はどうなんだ」
「どうって……おしっこと一緒に血みたいなのがドバっと出て驚いただけ」
「そうか。体調が悪くないならさっさと愛の国に行った方がいいな」
「その理由は?」
「生理用品もあそこは何故か充実してるんだよな……」
「私もあの国の生理用品を使っています」
「あ、分かる。コナハトの生理用品ってすごく充実してるし、履き心地も悪くないんだよね」
「ちなみにレナとジラントはナプキン派、私とズメイはタンポン派です。ユウちゃんとネクストちゃんは未体験ですよご主人様」
サマエルが反応に困る報告をした。
そして俺と肉体関係のないズメイに本気の拳を食らっていたがあっさりと受け止めた。
本当にこの話題って男はどこまで突っ込んでいいのか全く分かんねぇんだよな。
というかそれ以前に話について行けない。
「タンポン?ナプキン?」
「生理用品の種類だ。俺は詳しくないからレナ達に聞け」
「は~い」
「マスター。私も後学のため話を聞いてきます」
こうして生理用品未経験の2人は他の女性陣に話を聞きに行った。
それにしても初潮か……
あいつ本当に肉体的にも成長しているんだな。
なんか無表情で何も感じない生きた人形みたいな状態から随分変わったもんだ。
さて。
今のあいつは幸せそうにしているし、俺も心地いいと感じてる。
だからこの環境を壊そうとしている連中、まとめて殺す準備しておくか。




