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褒美の話

 パーティーが終わった後、本当に本人なのか調べるための検証に付き合う事になったが、ぶっちゃけ『嫉妬』による変身で姿を変えていたのだから証拠らしい証拠は出てくるとは思えない。

 だが最後に残った誰か、初めて『嫉妬』の対象にした男を調べれば何かしら証拠が出てくるのではないかという事で渡した。


 で、簡潔に言うと男は良家の一人息子だった。

 貴族とかではないが、中の上の家であり、貴族に仕える家だったらしい。

 だがその一人息子、勉強や周囲からの期待などから素行不良に走っていたがある日それが改善されたらしい。

 おそらくそれが例の男と本物の彼が入れ替わった日なのだろう。


 危険な街に入り、大怪我をしたことで改めるようになったと両親は考えていたそうだ。

 その代わり記憶があやふやになり勉強などにも支障が出たが、すぐに取り戻したという。

 その後はエリート街道一直線であり、下っ端ではあったが近衛騎士団に入団していたそうだ。

 先代の王や現女王を暗殺するための情報はこの近衛騎士団に入っている間に手に入れたと考えられる。


 と言ってもまぁ見ず知らずの誰かになる『嫉妬』を使用されては本当にそうだったのか特定することは出来ない。

 彼の両親になんと伝えるのかはこの国に任せるし、これ以上干渉するつもりはない。

 あとはどうするのか、それはこの国の方に任せるしかない。


「それでどうするの?『嫉妬』は」


 ユウにそんなことを聞かれた。

 確かに『嫉妬』所有者がいなくなったという事はまた誰かが手に入れる可能性があるという事だ。

 だがまぁこれに関してはな……


「ぶっちゃけ俺達に『嫉妬』は手に入れる事が出来ないんだよね……やるとしたら少年に頼めるかどうか……」

「結局『嫉妬』の取得条件って何なの?」

「『嫉妬』の取得条件は自分よりもレベルの高い相手を100人殺すことだ。だから俺達レベルが90超えが多いから無理」

「えっと、魔物とかじゃダメなの?この間のモビーディック・ムーンみたいなの」

「対象は人類限定だ。だから人間でも獣人でも良いって言えば確かに良いんだが、ぶっちゃけこの世界の人類のレベルは300年前の比べるとだいぶ平均は下がったからな。できるとすれば少年だけだろうな」


 ぶっちゃけ言うとこの条件結構難しい。

『嫉妬』を使っている状態ではないから当然自身のレベルは上がる。

 最初はレベル1だったとしても、殺せばレベルは上がるのだから最低でもレベルが1つ上の誰かを殺さなければならない。

 自分より下、もしくは同じでは全く意味がない。

 せめてもの救いはモンスターやレベルの低い誰かを殺したとしてもリセット、最初から100人殺しなおさなければならない、みたいな事にはならなかったことだ。

 だが常に自分よりレベルの高い人類を敵に回し続けるのは非常に難しい。

 それを可能にしたのが例の町だったのかもしれないが、まぁそれに関しては想像でしかない。


「それじゃ……私達には手に入れる事が出来ないの?」

「ああ。俺はレベル99だから同等はいても俺以上はいない。それ以前に90超えはプレイヤーでも全然いなかったし、この時代だと60超えればかなりの強者扱いだし、100人殺せないんじゃないかな……今ユウのレベルっていくつだっけ?」

「私は今67」

「そのレベルで100人殺すのは難しいな。できるとすれば……ネクストだけか?ネクストは今レベルいくつだ」

「私のレベルは現在27となっております。マスター」

「それならまぁ……行けなくもないか」


『嫉妬』を本気で手に入れたいのであれば可能な限りレベルが低い方が手に入れやすい。

 プレイヤーがいた頃は最低でもレベル20くらい必要だと思ったので20になってから旅に出たが、これでもこの時代だと高いのかな……


「お待たせいたしました。どうぞお越しください」


 メイドさんがそう言いながら扉を開けた。

 事件の振り返りはここまでで、この後は女王様からのご褒美タイムだ。

 玉座の間に行って女王様と会う。

 心なしか女王様の表情から肩の荷が下りたように感じる。

 まぁ命の危険にさらされ続けたのだから当然と言えば当然だが。


「ナナシ、そしてその仲間には礼を言います。褒美は決まりましたか」

「決まったよ。俺は金と今晩1発ヤらせて」

「分かりました。では今晩私の寝室に来てください。報酬に関しては金貨10万枚でいかがでしょう」


 お、報酬も結構いいじゃん。

 それから本当にヤらせてくれるなんて思ってなかった。


「良いのか?金の方は問題ないが本当にヤらせてくれんの?」

「むしろ今回の事件に関しては私の身体で済めばいい方です。ただしお願いが」

「処女か?優しくするぞ」

「それもですがどうせなら確実に孕むようお願いしたいと思っています」

「…………マジ?」


 確かに貴族相手に本気で孕ませるつもりでヤったこともあるが、王族の方から頼まれるのは初めてだ。

 それなら入念にしてやらないとな。


「分かった。なら今晩頼む」


 これで俺の方はオッケーっと。


「では次の方、褒美を言ってください」


 次の褒美を言うのはレナ。


「私は人をいただきたい」

「人?人材が欲しいという事でしょうか」

「はい。しかしこの王城で仕事をする者ではなく、ある町の者を人材としてこの都市から出る事を許可いただきたい」

「それである町とは」

「例のスラム街の者達です」


 へぇ。レナも面白いもの欲しがるじゃん。


「よろしいのですか?彼らは素直に従うとは思えません。それに彼らを一から育てるのは非常に時間がかかりますよ」

「構いません。ですのでご許可を」

「認めます。詳しい人数を聞いても?」

「可能な限り多く連れていきたいと思います」

「分かりました。ではその際に船を用意しましょう」


 意外とあっさり決まったな。

 てっきりあのスラムには何か重要な役目でもあるのかと思ったが、そうでもなかったようだ。


「次の方、お願いします」

「宝物庫からお宝ちょうだいよ10個くらい」

「私もそれでお願いします」

「分かりました。お2人で計20個でよろしいでしょうか」

「それでいいよ~」


 ジラントとズメイは分かりすく宝か。


「私はマリンストーンの購入する際、安定と確実性の高い業者を紹介していただきたい」

「分かりました。手配しましょう」


 ネクストはあっさりと決まったな。


「僕はこの都市に別荘を建てる許可をいただきたいです」

「分かりました。具体的にどのような別荘を求めていますか?」

「それはもちろん。ご主人様と僕が2人っきりでずっとイチャイチャできるような落ち着いたところで清潔感のある別荘が良いです。あ、それから窓から綺麗な景色が見えると最高です」

「分かりました。用意しましょう」


 サマエルは家か。

 俺とって言ってるのがらしいな。


 ついでにだが白猫はこの場にはいない。

 だってあいつなにも手伝ってねぇもん。

 夜中によく分かんない事言ったと思ったらまたペット生活。そんな奴にご褒美とか要らないだろ。


 で、最後にユウの番。


「では最後にあなたは何を褒美として求めますか」

「…………私の質問に答えていただく、でも大丈夫でしょうか」

「ええ。内容によりますが、可能な限り誠実にお答えしましょう」

「では、女王様にとっての“愛”とは何ですか」


 …………

 なるほど。それを求めるか。

 まぁ確かにユウが最も疑問に思い、この旅を続けている最大の理由だ。

 “愛”とは何なのか、唯一発動させることすらできないスキルのヒントになるであろう感情。

 それを色んな人に聞いてみたいと思うのは当然か。


 女王様は少し考えてユウの言葉を確かめる。


「その質問は私個人の愛でしょうか、それとももっと広い意味ででしょうか」

「出来ればどちらもお答えくださると助かります」


 そうユウが言うと少し目を閉じ、考えをまとめるようなしぐさを見せた。


「私にとっての“愛”はこの国をより良くすることです。それはただ単なる王族の義務としてだけではなく、私はこの国に育てられてきました。故にその恩を返したい、愛されたのだから愛すことでその恩に報いたいと思っている。これが私の“愛”です」

「それじゃ何でナナシとエッチなことしたいって言うんですか?国に恩を返すっていうならナナシとエッチしない方がよさそうだと思いますが」

「そうですね。ですが先代の王がいない今、余計な事をしない方が賢いでしょう。ですが私は見てしまった。彼との間に子が出来た未来を」

「それは、どのような光景でしたか」

「非常に幸せな光景でした。だからこそ私は彼の種を求めます。そしてその先には必ずこの国の幸福がある事を確信しています」


 ずいぶん自信満々に言ったな。

 俺にはさっぱり分からないが、おそらくスキルでそんな未来を見たのだろう。

 全く。本当に何で俺なんかが良いという女がいるのか分からない。


「これで納得していただけますか?」

「……答えていただきありがとうございます」

「では褒美を与えます。少々お待ちください」

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