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事件は続く

 ポーラ嬢ちゃんのメモをできたホテルはこの町では非常に良いホテルと言える。

 門番の他にセキュリティーがしっかりしており、ホテルの前に鉄格子が張られている。


「治安が悪い証拠だな。おっ邪魔~」


 門番は俺達の事をじっと見ていたが、特に何も言わずに通してくれる。

 その後ホテルで全員分の部屋を取った。

 1人1部屋でビジネスホテルのようなところ。

 そろそろユウとネクストはただ部屋で1人寝る事に関して問題はない。

 どうせ晩飯と朝食は2階の食堂で全員で食べるのだから1人でいる時間の方が少ないだろう。部屋にバスルームがない代わりに大浴場もあるし、どうせみんなで寝るだろう。

 そして俺は2人部屋なのだが、その理由は白猫だけは1人にさせると何をするか分からないからだ。

 と言う訳で獣人の子供という事にして俺と白猫だけ2人部屋と言う訳だ。


 流石に今日きてすぐに観光と言うのも疲れるので今日は俺の部屋に集まってこの都市のパンフレットを見ながら明日どこに行くか相談する。

 そうしている間にポーラ嬢ちゃんがやってきた。


「無事にたどり着いたようで何よりだ」

「全く。ずいぶん治安の悪そうなところを選んだな。もう少し治安の良い所はなかったのか」

「あるがここは私の息がかかっている。ここより安全なところはない」

「それで、商談だか人材の確保だかはうまくいったのか」

「人材の方は順調に集まっている。商談に関しては少し難航しているという感じか」

「そうか。で、昼間飯食うのにいい所知らない?」

「そうだな……魚料理ばかりになってしまうがかまわないか?」

「生食えないの混じってるから生だけじゃない店なら」


 地元民?からの情報を手に入れ明日行く店を把握。

 そのあとはみんなでトランプしたり、風呂入りに行って終わった。

 そして風呂に無理やり入れた白猫をユウから受け取り、白猫をベッドの上に乗せた。


「ふぅ。お前の風呂嫌いには困ったもんだ。もう寝るのか?」


 ベッドの上で丸くなる白猫を見ながら言う。

 白猫はそのまま目をつむってしまうので寝るようだ。


「ま、いっか。お休み」


 ――


 夜。

 なのか俺の上に乗っているようなで息苦しくて目が覚めた。

 で、俺の上に乗っているのは予想通り白猫。たま~による目が覚めて暇そうにしているときにこうして前とアピールしてくる。


「何だよ白猫……寝てんだから起こすなよ」

「ずっと見てたけど、思ってたよりつまんない」


 ……………………白猫がしゃべった。


「お前、人語話せたのか」

「いつどのタイミングで話したっていいでしょ。それよりつまんない」

「何が」

「大罪人の話を聞いたときもっと悪い事していろんな人を不幸にして笑ってると思ってたのに全然違う。これじゃお腹いっぱいにならない」

「飯ちゃんと食わせてるだろ」

「そうじゃなくて、リーパの主食が全然食べれない」

「リーパ?お前リーパっていうのか?」

「一応」

「あと主食って何?」

「人の負の感情。こってりしてて好き」

「脂っぽそうだな」

「カロリー高めでおいしいよ」

「食ったことないからな……」


 適当な話をしながらお互いに探る。

 こいつはいったい何を求めているのか、何をしなければ敵対しないのか、探り続ける。


「そんじゃ俺達と分かれるか?」

「ヤダ。水の中に住むなんて。しかも肉も食えない」

「主食が負の感情なんだろ?」

「肉はおやつ感覚で食べれるからいい」

「本当に脂っこいのが好きだな……それにしても何で急に話しかけてきた」

「あ、忘れてた」

「忘れるなよ……」

「『嫉妬』、この首都にいるみたい」

「……へぇ」

「どこにいるのか聞かないの?」

「教えてくれるのか?」

「教えな~い」

「なら勝手に見つけるとしよう」

「それから感情の話だけど」

「ん?」

「エッチって気持ちいいの?」

「相手による。興味あるならそこら辺の野良猫とヤって来い」

「リーパの事抱かないの?」

「孕まない相手に興味はない」

「背も胸もないけど成人はしてるけど?」

「…………マジ?」

「マジ。元々こういう種族だから」

「…………気が乗ったらな」


 これ以上話すこともないだろうと思い俺は再び目を閉じた。

 白猫も話は終わったのか自分のベッドに戻る。

 そういや種族って言ってたけどリーパみたいなのそこら辺にいるのか?

 なんて考えてみたが別にいいや。

 それより『嫉妬』がいるのなら見つけてみたいな。


 ――


 翌日、白猫がしゃべったことは黙っておいて俺達は観光を楽しむことにした。

 面倒な事は必要な時が来れば自然と動かなければならないのだから待てばいい。

 とりあえずパンフレットに乗っているレストランで食事をしていた。


「食べ物って基本的に魚しかないの?」


 ユウがそう聞きたくなるのはまぁ当然だろう。

 海の中なので穀物の類はないので米もパンもない。

 ギリギリ野菜と言えるのは海底に生える海藻の類ばかりで地上から来たものから見れば種類が非常に少なく見えるのは当然だ。


「その代わり魚が豊富じゃん」

「そうだけど……初めて食べるのばっかりなのが救いかな」


 やっぱり米欲しいよな。

 寿司とかあったらいいな~っと思うけどここで地上の野菜を食おうものなら魚よりも圧倒的に高い。

 地上の植物と言うだけで高級品扱いだし、地上でしか生産できないものは全て高級品扱いだ。

 しかし……300年前と比べてもかなり品数が少なくないか?

 高級品扱いは変わらないが、レートを見てみると300年前の数十倍だ。

 人間の出入りが少ないのも仕方ないが、この都市にいる人間は俺達と一緒に来た連中しかいないと思う。

 300年前と比べると明らかに人間と言うよりは陸上に住む存在と付き合いが薄い気がする。


「さて、食べてばっかりなのもあれだな。少しぶらぶらするか?」

「ちょっとくらい面白いところないかな~」


 なんてユウは言うがぶっちゃけこの首都内に陸の人間が遊べる場所はない。

 首都と言うよりは人魚達の町であるこのSF映画に出てくるコロニーのような感じで基本的に住むところしかない。

 もし外で遊ぶと言うのであればこの首都を出て海の中で遊ぶという意味になる。

 陸で生きている俺達には深海ギリギリの海の中を生身で泳ぐのは無理だし、すぐに水圧で身体がおかしくなる。

 それ以前に死ぬか。

 とにかく海底にある人魚の町はあくまでも身体を休ませるための場所であり、仕事をするための場所なので遊べるようなところはない。


 遊ぶのは無理だろうな~っと思っていると何やら騒がしい。

 騒がしい所に行くと「号外号外~!!」っと新聞を売って居る人魚がいたのでそいつから号外を買った。

 みんなの前で広げるとそこには大きくこの国の王様を狙った殺人未遂事件の事が書かれていた。


「へ~。殺人未遂事件」

「王様は無事だったらしいな」


 だが新聞記事によると王様は重症でありしばらくは絶対安静である事、それをきっかけに次の王様を選ぶ選挙が起こると予想する記事が書かれていた。


「これは……困りました」

「レナ?どうかしたか」

「最近の人魚の王室と貴族は陸との関係を断とうとしている風潮が強いのです。もしこのまま陸との国交がなくなれば様々なところに影響が出るかもしれないのです」

「マリンストーンとか?」

「水産資源を中心に、ですね。一部の魚介に関しても輸入しているので安定して輸入する事は難しくなるかもしれません」

「ポーラ嬢ちゃんを通してもか?」

「ポーラさんならある程度可能だと思いますが、安定はしないと思います。ポーラさん達は漁で魚を得ますが、都市の方は養殖した魚を販売しているので安定性が大きく違います。なのでこのままいくと……」

「貿易に問題が生じる、か」


 薄っぺらい新聞から随分と色々変わってしまいそうな事が書かれている。

 どうやらこの都市でただダラダラと過ごすことは出来なさそうだ。

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