表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/166

魔剣狩り

 魔剣と戦う際の注意点をいくつかこの場で言っておくとしよう。

 まず魔剣所有者を殺す際には持っている人間ではなく魔剣を破壊するようにする。

 何度も言うが肉体を動かしているのはあくまでも魔剣であり、人間の方はただ操られているだけなのでぶっちゃけ殺したところで意味はない。

 肉体を狙うというのであれば魔剣を持っている腕を斬りおとす方がよっぽど効率的だ。

 流石に魔剣も自身を持ってくれる腕がないと意味がない。


 そしてこれは俺限定ではあるが『強欲』で魔剣を奪うことは出来ない。

 俺のように極夜とうまくやっている場合は所有者、つまり俺の持ち物として認識されるが魔剣に支配されている間は魔剣は道具として認識されない。

 だから今あの騎士から『強欲』で魔剣だけを奪うことは出来ないのだ。


 と言う訳で回りは周りで魔剣の被害を止めようとあがいている中、俺は本物の魔剣を破壊しようと斬り合いをしている。

 屋根の上を走り回りながら俺達は魔剣を振るう。


 上段下段、横から魔剣を振るい殺しに行く。

 魔剣は斬撃を飛ばしたりすることは出来ないようだが、代わりにころころと戦い方を変える。

 おそらく寄生した騎士や冒険者、そして現在戦っている冒険者達から戦闘データを取り込んでいるからだろう。

 強く魔剣を振るってきたかと思えば今度は軽やかに連続で攻撃してきたり、冒険者特有の型のない剣かと思えば急に騎士の剣を使ってきたり非常に多くの技を持っている。


 この支配されている魔剣が人間の肉体を守るのは本能的な部分が多い。

 武器は所有者を守り敵を殺す物、この前提があるので魔剣は一応所有者を守る。

 それに魔剣を握ってもらえる腕を斬りおとされてはあっという間に破壊されてしまうからな。


 それにしても今回の魔剣は本当に面倒くさい。

 ステータス面では俺が圧倒的に上だが、現在他の劣化版魔剣が多くの冒険者を相手にすることで急速に戦闘データを収集、自己進化を繰り返している。

 それと同時に俺が魔剣と戦えば戦うほど劣化版魔剣の方に戦闘データが与えられ、より強い魔剣となる。

 耐久的には劣化版魔剣の方がかなり弱いが、俺との戦闘データがどうなるか分からない。


 魔剣と極夜がぶつかるたびに火花が散り、暗闇を一瞬だけ照らす。

 まだ互いに本気ではないとはいえ、いつまでも足場の悪い屋根の上で戦うのはそろそろやめたいところだ。

 そう思い俺は魔剣と鍔迫り合いをしているときに無理やり押して、魔剣を地面の上に落とす。

 魔剣は何ともないようだが、これでお互いにかなりやりやすくなった。


 もうすでに魔剣を握っている騎士は原形を保てていない。

 劣化版魔剣が体内から突き出しているような形状だからか動けば動くほど血があふれ、とっくの昔にショック死しているのではないかと思えてしまう。

 それに明らかに人間の動きを捨てている。

 俺はレベル99だから人間をとっくにやめているような動きを自然とできるが、ごく普通に騎士として生きていた人間とは思えない動きをしている。

 おそらく魔剣に支配されている事で無理やり脳のリミッターを外されているのだろう。


 スキルでも似たようなものがあり、3分間だけステータスを上昇させるものがあったが、そのあとデメリットとして1分間動けなるが明らかに3分以上過ぎている。

 こりゃ魔剣を破壊したとしても取りつかれた騎士は死ぬだろうな。


 そんな身体から突き出した魔剣も薄く赤く輝きだしている。

 向こうは向こうで俺を倒す算段が付いた、と言う感じかもしれない。

 俺も構え、極夜はより闇に染まる。


 最初に仕掛けてきたのは魔剣の方だ。

 すでに人間を辞めた速度で一度受けるがパワーも人間を辞めてるな。

 感覚に近いのは獣人か。

 レベルはざっと45前後。

 魔剣に支配されて無理やり力を引き出されているのは分かるが思っていた以上に無理やり力を引き出してるな。

 受けたら俺の足元が少しへこんだし、俺は問題ないが周りは大変そうだ。


 周りは周りで劣化版魔剣が戦闘データを取り込んで強くなる。

 一応ユウ達が魔剣を壊したりして被害を抑えているはずだが、やっぱり量産系の普通の剣だと数が多すぎるのだろう。

 だがまぁ俺がこの魔剣を壊せばそれで終わりだ。


 俺は魔剣をはじいて無理やり後ろに引かせると、そのまま魔剣を狙って突きを繰り出す。魔剣はそれをかわし振り上げるが遅い。

 すぐに下段から切り上げ魔剣を破壊できるだけの攻撃力をぶつけたが、自分から後ろに跳ぶことでダメージを軽減する。

 そこからさらに追撃を食らわせるが、騎士の身体から生えている魔剣が震えたかと思うと伸びて俺の剣を防ぐ。

 他の体中から生えている剣が俺の事を突き刺そうと動いたが俺は後ろに下がって避ける。


 どうやら身体から生えている剣の方はただ形状を変化させているだけらしい。

 元々の魔剣の刀身を細くすればその分伸びるし、短くして鎧代わりになるかもしれない。

 それに関しては攻撃すれば自然と分かるか。


 今度は俺の方から仕掛け、剣ではなく素直に身体の方を狙うと魔剣は反応して防ぐ。

 そして覇気をまといながら蹴りを入れると、蹴りに反応して身体から生えた魔剣が俺を攻撃したが俺の覇気に阻まれて傷はつけられない。

 これなら殴ったりしても問題ないと思い剣だけではなく膝蹴りを出すが腹部から突如生えた魔剣が俺の膝に軽く触れる。


 俺の覇気を突破した?

 どうやらこの魔剣、オーラの使い方を学んだらしい。

 さっきまでオーラなんて纏っていなかったくせにオーラを纏う事で切れ味を向上させた。

 魔剣もこれなら攻撃が通ると思ったのか、体中の魔剣を駆使して攻撃する。

 無理に形状を変化させて細く長くすることで攻撃を届かせようとしているが逆に薄くなったことで簡単に折れる。

 魔剣はこれらの事もすべて戦闘データとして収集し、適切な距離も調べているようにも感じた。


 また俺の方から攻撃を仕掛けると、先ほどより身体の剣を伸ばそうとしない。

 どうやらオーラで魔剣を強化して折れないと思われる長さを計算したらしい。

 極夜でぶつけただけでは折れない強度、そして俺を覇気を貫く攻撃力、両方をそろえた距離は見えたとでも言いたそうだな。


 だがそう簡単に生まれて間のない魔剣に負けるほど俺だって弱くない。

 伸びてくる魔剣に対して俺は全て斬りおとす。

 左上、右下、ほぼ同時に上下、左右からの攻撃はわずかに右の方が早い。

 左上から右下に向かって極夜を振るい、上下の攻撃に対しては軽く飛んで回転するように振るい、右の魔剣を斬りおとした後左の魔剣は側面を殴って破壊。

 右手に握っている極夜で心臓を貫こうとしたが、右手の魔剣に阻まれた。

 魔剣はそれなりに飛ばされてからしばらく地面に傷を付けながら止まった。


 極夜を防いだ時にだろうか、魔剣は少しだけ欠けた。

 それを見て俺はにやりと笑うと魔剣は薄い赤から血のような赤に色を変化させて雄たけびを上げる。

 するとどこからか劣化版魔剣が飛んできて魔剣と合体、欠けた部分を修復された。

 そんな使い方もできるのか。

 やっぱ汎用性高いなあの魔剣。


 なんて思っていると町中に魔剣だろうか?

 周りから空に向かってかなりの数の魔剣が空に浮いている。

 数は大体……1万本くらい?

 劣化版とはいえこの数は確かに凄いな。

 奪えない武器が1万近く、それがすべて俺に向けられてる。


 …………興奮してきたな。

 この世界に来てからやはりレベル99と言うのはかなりの脅威で、真剣に戦ったと言っても知り合いばっかり。

 殺すつもりでやったと言ってもやはり心のどこかで殺してはいけないという気持ちはあって、どこか遠慮していた気がする。


 でも目の前にいる魔剣は本気で俺を殺すために全力をぶつけようとしている。

 それがたまらなく楽しく、面白く、興奮が止まらない。


「極夜、久々に暴れられるぞ」


 そういうと極夜からも興奮が感じられる。

 ぶっちゃけ主犯であるおっちゃんの息子は俺が勝とうが魔剣が勝とうが目的を果たす。

 それなら俺は思いっきり殺しに行こう。

 全力で殺す。


「『憤怒』起動」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ