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手土産の用意

 ドラゴンの国で何泊かした後俺達は旅立った。

 俺、ユウ、レナはバイクに乗ってかっ飛ばし、ジラントは乗れないので飛んでもらう。

 旅のメンバーは俺、ユウ、レナ、ジラント、バイクと並走して飛んでいるズメイの5人である。

 …………1人多くね?


「おいズメイ。何でお前いんの?」

「私はジラント姫のお付きです」

「いや、いい加減姪っ子離れしろよ」

「できません」

「しろよ。子はいつか子離れして新しい群れを作るもんだ」

「それでもあのサマエルの元に向かうとなれば話は違います。妹たちも認めてくれました」

「まぁ……あいつのスキル構成から察すれば心配も当然かもしれないが……」


 サマエル。

 種族は堕天使であり元天使。

 天使とは簡単に言うと神様のパシリだ。

 神様のために働く社畜と言ってもいい。

 神様が自分たちの仕事を楽に行うための神様が作った人工生命体、それが天使。


 で、堕天使とは何かというと簡単に言うとバグだ。

 天使という人工生命体に何かしらのバグが出てきたことにより神様から廃棄された存在の事を指す。

 バグに関しては設計した神様次第だが、サマエルを作った神様は天使の事を道具としか見ていなかったようだ。

 サマエルが起こしたバグ、それは感情を持つというバグだ。

 どうやらその神様は天使は感情を持たずただ命令のままに動く人形、前の世界風に言うならロボットを求めていたらしく、感情を持ってしまったサマエルを地上に捨てるという廃棄を行った。

 しかも強力な呪い付きで。

 その強力な呪いというのがドラゴン達が恐れる呪い。

 どうやら廃棄するついでにドラゴンを絶滅させようと考えていたらしく、サマエルを地上から追放した後ドラゴン達を殺すように命令していたそうだ。


 だがそれも俺の手によって阻止される。

 ドラゴンもどきと呼ぶにふさわしい姿をしていたサマエルを発見した俺は喧嘩を売った。

 当時のサマエルはレベルはすでに90を超えていたが実戦経験は全くなく、ぶっちゃけ弱かった。

 その後サマエルは呪いの影響で死にかけている事を知った俺は『色欲』で治療し、サマエルは生き永らえたわけである。


 その後サマエルはしばらく俺の後ろを追っかけ、その後は俺が無理やり離した。

 だってあいつ怖いんだもん。

 ディープなヤンデレって感じで。

 きっと俺に会ったら暴走するだろうけど、どんな風に暴走するんだろうな……


「一応サマエルが呪い、あの固有スキルをコントロールできるようにしたんだからそこまで怖がる必要はないと思うんだけど?」

「それでもあの呪いはドラゴンなら触れればあっという間に死に絶えます。だからこそ今も監視を続けているのです」

「300年もお疲れ様です。それにしてもエルフの国か。正直言うとちょっと意外」

「何で?」

「エルフっていうのは仲間意識は強いがその代わり排他的、つまりよそ者を嫌う傾向が強いんだよ」


 エルフ、ファンタジーには必ず出てくる有名どころだ。

 この世界のエルフもどれも美形でありぶっちゃけ男女の区別が難しい。

 精霊と契約して戦う存在が多く、人間と比べると耳が長くてMPが非常に多いのが特徴で寿命はおよそ500年くらい。


 そしてその美貌がいつまでも続くことから奴隷としての人気も高い。

 身体能力は人間とあまり変わらず捕まえやすい、見た目があまり人間と変わらない、いつまでも若い見た目であることから奴隷として拉致されることが多かった。

 獣人は身体能力が高い事から捕獲が難しく、獣臭いと言われることから人気はまばらだ。

 これはあくまでも予想だが、やはり人間にはない部分があるというのは気にする人間は気にするのだろう。

 俺は気にしないしオタクとしてケモミミいいよね~だからむしろウェルカムだ。動物も好きだし。

 でもこの世界の人間にとっては特殊性癖。完全な人型の方がいいってさ。


「そんな歴史もあるからエルフ族は特に人間を嫌ってる。男は男娼だんしょうにしてもいいし、ただの戦士として使ってもいい。女は大体娼婦として売れらるな」

「…………そういう話聞くの人間ばっかり」

「そりゃ人間ばっかりしてるから。人間の場合その辺見境ないんだよ。俺を見りゃ分かるだろ」


 ユウのそういうとなぜか首を振った。


「ナナシは無理やり女の子を抱いたりしてないもん」

「昔はしてたぞ。性欲有り余って適当な貴族の女を抱いたりそこらへんで転がっている女を抱いたり、俺とあいつらはそう変わらない。同じ穴のむじなってやつだよ」

「でもナナシは……」

「同じだ。ただこそこそ上手い事やってるかやってないかの違いでしかない。俺はその辺こそこそするのが下手だから大罪人なんて呼ばれて悪目立ちしてるだけ」


 そう言うとユウは俺の服を強く握りしめた。

 何が言いたいのか分からないが続けよう。


「だからぶっちゃけ人間が真正面からエルフの国に入るのは無理だ。だから手土産を用意する」

「手土産?」

「適当にエルフを奴隷として買い取った奴か奴隷商の首、あと実際につかまっていたエルフ達をエルフの国の連中に手土産として用意する。1番楽なのは300年前の事を知ってるやつに会うことだが……エルフ族でも300年は長い方だからな~生きてるとは思うが会うのは難しいかも」

「何で300年前の人がいれば楽なの?人間嫌いって事なんだよね??」

「あの時はエルフの国に入るために手土産を持って行ったんだよ。同じようにな」


 現在もエルフの奴隷が売られているとすればいい手土産になる。

 ちょっと味見したいな~っとは思ったが同じ事をすれば二度とエルフの国には入れないので我慢した。

 おかげで監視付ではあるもののエルフの国を見て回る事が出来た。

 その時に薬学と契約魔法について教えてもらったが……結局契約魔法に関してはあまり使っていないな。

 だって隷属の首輪が契約魔法の一種なのは知っているし、かといって精霊の類とは根っこが悪人だから契約できなかったし。


「だから今回も手土産を用意する。エルフの国に行くのはそのあとだな」

「ちょっと時間かかるね」

「でもこれが確実だ。やっぱりお偉いさんの所に行くには手土産は必要って事だろうよ」


 こうして俺達はエルフの奴隷をちょっと見つけ出してからエルフの国に向かうのだった。

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