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大罪人VS『強欲』のドラゴン

 銅鑼の音と同時に俺達は動いた。

 俺はまだ武器を使わずに、ジラントも当然素手だ。

 ドラゴン達は自身の鱗や爪に絶対的な誇りを持っているからこそだ。


 互いに手を組み、まずは力比べ。

 お互いにこのまま相手の手の骨を握りつぶすつもりで力を籠める

 同時に互いの握力もしれっと探ってみるがやはり昔と比べると非常に強くなっている。

 それにパワーに関しては俺より上か?

 お互いにまだスキルは使っていないが、ステータスはすでにジラントのほうが上かもしれない。


 ジラントの腹を蹴り、その衝撃で後方に逃げてからジラントの様子を見る。

 スキルの力を使っていないとはいえやはり大したダメージにはなっていない。

 防御力も増しているなっと思っている間にジラントが飛んできた。

 翼を広げて低空飛行で近付き、頭突きを食らわせようとしたが避ける。

 ジラントはそのまま加速し続けて俺の周りを飛びながら鋭い爪で俺の肉をえぐり取ろうとしてくる。

 一発、二発と加速しながら攻撃してくるのですでに俺のスピードでは追いつけない。

 しかし俺にも長年培ってきた経験というものがあるのでそれでどうにか補って攻撃を避けることができる。

 爪だけではなく牙や尻尾でも攻撃してくる飛行攻撃は思っていたよりも厄介だ。

 まるで意思のある竜巻、しかもただの物理攻撃の余波でかまいたちが発生しているのだからさらに避け辛い。


 そんな切り傷だらけの俺の状態を見てジラントは確信をもって言う。


「ステータスは完全に私の方が上になったみたいね」

「そうかもな。まったくこれだからドラゴンは理不尽なんだ」

「そうね。私はドラゴンだからあなたに勝てる。最強の大罪人に勝てる!」


 そう言ったジラントは本来のドラゴンの姿に戻った。

 ドラゴンの姿になった利点はその巨大さだ。

 今の俺のサイズ、つまり人間が持つ武器などで傷つけることができたとしてもそれは非常に小さな傷だ。

 例え話をするならリアル一寸法師。

 爪楊枝で人間を傷付ける事が出来たとしてもそれは非常に小さな傷だ。

 先ほどの人間サイズだったら人間の武器でも十分致命傷を与える事が出来るが、今のジラントに致命傷をつけるとすればそれだけ大きく、大量の力を消費しなければならない。


 それに比べて向こうから見れば小さな虫を潰すようなもの。

 小さな虫に無駄に強大な力を使う必要がない。

 人間から見ればドラゴンの魔法はすべて最上位魔法に見えるかもしれないが、実際のところは下級魔法であることが多い。

 ただドラゴンサイズで魔法を出すと魔法もドラゴンサイズで出てくるからそう見えるだけだ。


『でもあなたを相手にするのに油断はしない。300年前にそれは学んだ!!』

「ちっ!」


 ジラントは先ほどと変わらず超高速で動き回りながら長距離攻撃を仕掛ける。

 というか魔法なんて使わなくとも、ただの羽ばたき1つで吹き飛ばされそうなくらいの暴風になるのだから関係ない。

 まぁ俺もチートスキル山盛りだからこの暴風を『覇王覇気』で防御することで身を守ることができる。


 そしてアイテムボックスから取り出したのは呪われたドラゴンスレイヤー。

 ドラゴン限定にだが攻撃力のみ馬鹿みたいに上がるアイテムの1つ。

 ほかにも呪われている影響として目の前のドラゴンに対して殺人衝動が起こるが、俺の場合非常に冷静に行われる。

 これも俺が呪われたアイテムと相性がいい理由の1つだ。


 実はこの呪われたアイテムを装備した場合個人差が非常に激しい。

 よくあるものとしては暴走して目の前の敵だけではなく味方にも攻撃してしまうというものだが、これも呪いによる暴走だ。

 だが正確に言うと混乱と怒りが混じったもののような感じで精神汚染といえる。

 精神汚染によって混乱して暴走した結果がそれだが、俺の場合は違う。


 俺はキレればキレるほど冷静に、確実に相手を殺すことだけを考える。

 むしろ呪われた武具を使っている方が頭が冴えているくらいだ。

 怒りに飲まれて敵味方判別できなくなるタイプではない。

 怒れば怒るほど冷徹に、冷血に、冷酷に殺すことだけを考える。


 こういう時こそ『状態異常無効』の出番なのではないかと思われるかもしれないが、これはあくまでも敵から攻撃を受けた場合の防御手段でしかない。

 自分から呪われると分かっていながらその武器を握るのは自己責任だ。


 そして今握っている呪われたドラゴンスレイヤーは戦斧。

 俺は大きく構え、思いっきり振るとジラントが起こした暴風を巻き込みながら斬撃がジラントを襲う。

 もちろんジラントは飛んで避けた。

 この程度で攻撃が当たるほど甘くはない。


『相変わらずばかばかしくなるような攻撃力。道具を使うのが人間の特技よね』

「そりゃね。弱っちいから武器に頼らざる負えないからな」

『ナナシは違うくせに』

「買いかぶりすぎだ」

『なら、その武器を奪わせてもらうわ』


 来た。

 俺の持つ戦斧はジラントに奪われ、俺の掌から消えた。

『強欲』により武器を奪われた。

 そして戦斧はジラントの身体にくっついている。


『これで私への攻撃手段がなくなったわね』

「まさか。何のためにリブラに行ったと思ってるんだよ!!」


 俺は次の呪われたドラゴンスレイヤーを装備してジラントに向かって突っ込んでいった。

 ここからは『大罪人』を使用して本気で戦う。

 ジラントも咆哮を挙げた後本気で戦う。


『傲慢』の空間支配で転移しながらジラントの空中戦に対応し、防御魔法を足場にして跳び回る。

 さすがの俺も空を飛ぶという行為はできない。

 なので足場を用意しながらジャンプを繰り返すか転移で攻撃するしかない。

 だが移動方法が2種類あるというのは十分なアドバンテージだ。

 2種類の移動があるのだから戦闘を行っている間常にどちらの移動方法を使ってくるのか気を張っておく必要がある。


 ジラントの方は素直に翼を広げて高速で飛び回る。

 さすがにあの速度には追いつけない。

 あの自由に飛び回る戦闘機のような生物にジャンプだけで追いつけという方が無謀だ。


 まぁそれでもある程度攻撃できるのは転移のおかげだ。

 ある程度ジラントの動きを予想してジラントが通過する位置を狙って転移する。

 ぶっちゃけこうして攻撃するしかほぼ選択肢がない。

 向こうから物理攻撃を仕掛けてきたときにカウンターとして攻撃できるが、ジラントはそんなことを滅多にしない。

 空中戦なのだから長距離攻撃がメインになるのは当然だ。

 ジラントは各属性の魔法をメインに攻撃を行い、特に空中戦ではかなりの威力を出す風魔法を中心に攻撃を行う。


 俺は雷系の魔法を中心にジラントに攻撃する。

 ただし雷系の魔法はMPの消費が激しいのであまり使いたくない。

 それに俺の場合手にする呪われたドラゴンスレイヤーがメインだ。武器そのものに中距離攻撃する方法があるのでそちらの方がダメージが大きい。

 だがそんな武器も攻防の中で奪われる。

 奪われるたびに次の武器を用意するがやはりこちらの方が不利だ。


 もともとドラゴンという種族はオールマイティだが特に空中戦を得意としている。

 翼に誇りを持っている彼らが特に力を注ぐのが翼。

 6種族の中で唯一翼をもっているのがドラゴン。そのため空中戦になれば最強であるのが彼らだ。

 個体差はあるが平均的におよそ50メートルのでかい飛行生物、人間に勝てないのは当然だ。


 だから俺は相手が最も得意とする土俵で戦っているわけである。

 戦いは自身の得意な状況に持ち込むのが定石だ。

 つまりこの時点で俺はジラントの最も得意な戦い方に巻き込まれている時点で負けは濃厚だと言える。


 ジラントは自身が得意とする戦場で戦っているからか時々笑みがこぼれている。

 おそらく俺のことをズタボロにした後のことでも考えているんだろう。

 全く、そうやって勝った後のことを考えているのは300年前と何も変わらない。

 ドラゴンは確かに最強生物として名を挙げるのは当然だろう。

 だが、その最強の存在に牙をむいてきたのが人間という脆弱な生物だ。

 あまりなめすぎると大変なことになるぞ。


 そして持っている呪われたドラゴンスレイヤーが50種奪われたあたりからジラントは動きが悪くなっていく。

 ジラントは違和感を覚えている程度のようだが、俺はようやくその瞬間がやってきたと思った。

 今度は俺が笑みを浮かべる番だ。

 歯をむき出しにし、まるで好物を目の前にした獣のように恐ろしい笑み。


 それを見たジラントの目は大きく開いた。

 ようやく何かされていたことを気が付いたのだろう。

 というかここまでうまくはまるとジラントの精神的な成長が不安視されるくらいなんだが?


『あなた、私に何をしたの!?』

「さぁ?ネタバレしたらつまらないだろ」


 ああ、自分でも笑っているのがよく分かる。

 強者の余裕、自分が勝つと分かっている傲慢な笑み。

 その表情は相手を恐怖に落とす。

 ジラントも俺の笑みを見て想像以上に余裕がないと理解できているんだろう。


 実際ジラントの飛行速度は落ちているし、俺のドラゴンスレイヤーはジラントの鱗を無視するかのように肉体に傷付ける。

 これだから特攻系武器は非常に優秀なのだ。

 と言ってもまだほんのちょっと傷付けた程度だ。

 これからどんどん傷を増やしてやる。


『くっ!』


 スピードで勝負しづらくなったからか物理攻撃を多用してきた。

 もちろん一撃でも食らえば大ダメージは確実だろう。何せジラントから見れば俺は虫程度の大きさしかないのだから1回潰せば向こうの勝ち。

 でも俺はただの人間ではない。

 ジラントの迫ってくる手に俺は今使っている双剣のドラゴンスレイヤーを突き刺してジラントの身体を駆け抜ける。

 ジラントは自分の身体を走り回る俺を回転して振り落とそうとしているがそう簡単に落とされるつもりはない。

 奪われたドラゴンスレイヤーをつかみ、投げ出されないように踏ん張る。


 今現在ジラントの身体には俺から奪ったドラゴンスレイヤーがあちこちに張り付いている。

 おそらく魔法かスキルで張り付いているんだろうが、それを利用すればいい。

 それから俺の足の裏に魔法を使う。

 これでジラントの身体の上を走ることができる。


 そこらへんに落ちているドラゴンスレイヤーを拾いジラントのことを切りつける。

 奪われたドラゴンスレイヤーの中で最も攻撃力が高い武器、最初に使用した戦斧を拾って思いっきり上から下へ振り下ろした。


『が!?』


 ジラントは短い悲鳴を上げながら弓なりに身体をそらしながらフィールドに落ちた。

 ジラントが本来の姿から人型になりそうだったので俺は飛び退くとジラントは人型になって背中を痛そうにさすりながら起き上がった。


「いたたた、ちょっと背中痛い……」

「ドラゴンスレイヤーで背中ぶん殴られて切断できないとかどこまで頑丈になったんだよ」

「あれでもかなりのダメージを負ったんだけど。結局私に何をしたの」

「……はぁ。本当に分かってねぇんだな。300年相変わらず脳筋か」

「それよりも答えを教えて」

「そんなもんデート後でいいだろ!!」


 空中戦では俺の方が圧倒的に不利だったが、地上戦ならあまり大きな差はない。

 更にジラントがのけぞったときに散らばったドラゴンスレイヤーが落ちてきてステージに突き刺さる。

 これでさらに俺の方が有利になった。

 ここまでうまくはまった理由はおそらくジラントの自信だ。


 ドラゴンという種族の弱点はいくつかある。


 1つ目はその身体の大きさ。

 もちろん体が大きいというのは利点の方が大きいが、俺のように小さな強者が前に出てきた場合どうしても捕らえ辛いし、身体の上を駆け回られるのは面倒くさい。


 2つ目は攻撃が単調である事だ。

 ステータスが高いため何の武術も必要としないただのパンチとキックだけで倒すことができるので武術というものもあまり発展していない。

 そのためこうして地上での接近戦になればある程度満足に戦う事が出来る。


 3つ目は傲慢である事。

 生まれながらの絶対強者、種族として最強の捕食者である自信とプライドが数千年間それを常識としてきた。


 もちろん俺だってドラゴンスレイヤーという武器がなかったらここまでうまくいっていないし、『強欲』によってドラゴンスレイヤーを奪われれば普通はもうお終いだ。

 だが俺には多くのドラゴンスレイヤーがあるし、1つの武器にこだわっている事もない。

 だから俺はわざとドラゴンスレイヤーを奪われるという作戦を使用して戦いを挑んだ。

 ちなみに持っているドラゴンスレイヤーは全部で100。と言っても呪われていないドラゴンスレイヤーもあるのでそっちは性能的に劣るがないよりましだ。


 そして最大の弱点はジラントが若い事。

 ドラゴンに寿命は存在せず、基本的にレベルが上がるのは数千年かけてレベル99に到達する感じ。

 それをジラントは俺という強い人間に1度敗れたことで急成長を遂げたわけだが、知識と経験はまだまだ発展途上なわけだ。

 この強さでまだ発展途上というのは恐ろしさしかない訳だけど。


 とにかくこれで俺が勝てる可能性は出てきた訳だ。

 人型となったジラント相手に俺は切り込む。


「地上に落ちても魔法は使える!!」


 そこまでの距離がないからかジラントは火力のある魔法、炎魔法を中心に風魔法でさらに相乗効果を狙った魔法に変えてきた。

 だがドラゴンスレイヤーというものは恐ろしい。

 より正確に言うと特攻系武具というのは特攻の対象となる相手のが使う技や魔法なら何でもこちらの方が上にしてしまう。

 つまり俺が今使っている戦斧なら、ジラントが使っている魔法すら簡単に叩き潰すことができる。


「っ!?」


 その事に気が付いたのかジラントは翼を広げてできる限り飛んで逃げながら魔法で攻撃する。

 より確実に俺に攻撃を与えるためか、再び風中心の魔法攻撃に切り替えたが俺も落ちている双剣のドラゴンスレイヤーに持ち替え素早さに対応する。

 もちろん十分な距離を取られているし、俺の攻撃も当たらないがジラントのHPはじわじわと削り取られていく。

 そのことに苛立ちと答えが分からない不満からジラントは暴発した。


「なんで、なんであなたの攻撃は届いていないのにずっと私のことを攻撃できているのよ!!」

「本当に分かってないみたいだから教えてやるよ。答えは呪いだ」

「な、何を言っているの!?私には『状態異常無効』を持っているのだからあとから呪いが効くわけ――」

「お前にかかっている呪いはドラゴンスレイヤー達の呪いだ。だってお前一回装備しちゃったじゃん」


 俺が頬をひきつるように笑うとジラントはようやく答えが分かったようだ。


「ま、まさか私を攻撃し続けているのは!この周りにある武器!?」

「そうだ。こいつらは俺が集めた呪われたドラゴンスレイヤーコレクション。ここまで集めるのは本当に苦労したよ。そしてお前はその自身を蝕む呪われた武器を奪って手に入れてしまった。文字通りそいつらはドラゴンを殺すまで絶対に呪いを解除したりはしねぇよ」

「で、でも呪いは所有者を暴走させるだけじゃ!!」

「呪われたアイテムっていうのは個人差があるって前にも言ったことがあるはずだぞ。確かに通常なら相手を殺すために所有者を暴走させてあたり一帯を血の海にするが、俺とこいつらは相性がいいからそうならないことは知ってたよな」

「そんな……あれって相性だけじゃなくて、細工をしていたんじゃ……」

「そんな細工をするくらいならどうにか呪いを解除して普通の武器にする方がよっぽどマシだ。そんなことする気はないけど」


 俺のネタバレによって分かったジラントの弱体化の理由。

 それは猛毒となってしまうドラゴンスレイヤーを奪った事だ。

 俺の手からジラントの手に移ったドラゴンスレイヤー達はその呪いという性質からジラントに攻撃し続けた。

 直接HPを減らしたり、ステータスの低下がそれだ。

 だがそれでもドラゴンスレイヤーを50本前後にならないと効果が表れなかったのはやっぱりヤバイ。

 レベルの低いドラゴンだったらとっくに呪殺されていてもおかしくないほどの呪いの量だったのに、結局こうしてステータスを低下させるだけでも時間がかかった。

 これだから強いドラゴンは面倒なんだよ。


 ジラントは慌てて周辺にあるドラゴンスレイヤーに攻撃したが、破壊どころか刃が欠ける事すらない。

 別にジラントのステータスがそこまで下がったわけではない。

 ただ元からドラゴンスレイヤーにはドラゴンからの攻撃に高い耐性があるからこそ出来ただけだ。

 それでもほかのドラゴンスレイヤーからの呪いによるステータスの低下による恩恵がないとは言い切れないけど。


「お前の敗因を教えてやろう」


 ステージに突き刺さっていた2メートル越えの大剣を引っこ抜きながら俺はジラントに言う。


「お前の敗因は、人間おれから武器を取り上げれば勝てるという思い込みだ」


 何度も言うがドラゴンスレイヤーを奪われるという過程がなかったら負けていたのはおそらく俺の方だ。

 だからジラントの敗北は油断によるものだ。

 俺がいない300年間レベルを上げ続けたという実績も理由の1つだろう。

 だが、結果勝つのは俺だ。


 大剣をもってジラントに攻撃を仕掛ける。

 ジラントは爪を立てて大剣をはじくがほかのドラゴンスレイヤー達がダメージを与えたりステータスを低下させている事で最初に比べると動きが非常に悪い。

 どうにか距離を取って攻撃したいように見えるが、俺はただ高速で動くだけではなく転移も混ぜれば余計に動きが分からなくなる。

 空中でいた時よりもジラントは攻撃をかわし辛くなっており、小さな傷がどんどん増えていく。

 ギリギリかわせているが言い方を変えれば少しのミスで大きな傷ができる。


 大剣がもうすぐでジラントの胸を貫くところでジラントは思いっきりブレスを発動した。

 ドラゴンのブレストはぶっちゃけるとただの魔力砲だ。

 至近距離で食らったし、威力もかなりヤバいが構わず突き進む。


「があ!!」


 俺は叫んで気合を入れなおしてからジラントの首を大剣で寸止めした。

 俺の服はボロボロだがまだ戦おうと思えば戦えるし、負けを認めないのであればこのまま大剣を突き刺せばいい。


「っ……参り、ましたっ」


 ジラントは悔しそうに、喉の奥から絞り出すように言った。

 その瞬間銅鑼が鳴り試合終了の音が鳴った。


 俺は大きく息を吐きだしてから大剣を下げた。

 他のドラゴンスレイヤー達からはドラゴンを殺せなかったことへの不満、しまわれる前に呪殺しておこうという意思が伝わってくる。

 もちろんそれは許さないのでさっさとしまう。

 ドラゴンを殺させろーっという意思をぶつけてくるが無視した。


「これで俺がお前の主だな」

「………………」

「ジラント?」


 うつむいたまま動かないでいるのでちょっと覗いてみると、顔を真っ赤にして涙をぽろぽろとこぼしていた。

 そして子供のようにじたばたし始めた。


「うわぁぁぁぁぁん!!また負けた!!300年準備してきたのにまた負けたー!!」


 あ~……こういうところは変わらないのか。

 300年前、ジラントが子供のころ負かした時もこんな感じだった。

 じたばたしてわんわん泣いてマジで困った。

 でもそれを成人女性がやっているところを見ると……見苦しいな。


「いい加減泣き止め。ぶっちゃけうるさい」

「うるさいって何よ!!300年の努力を無駄にされた気持ちが分かる!?分からないでしょ!!」

「分かんないけど成人女性がじたばたしているのはよくないってものも分かる。そんなんでも一応この国のお姫様ポジションに入るんだから負けた後も堂々としろ」

「そんなん!?一応!?もう一戦するか!!」

「面倒だからしない。あとお前はもう俺の物な」


 そういいながらジラントの首に隷属の首輪をはめた。

 はめられたジラントは不満そうに首輪をガチャガチャしながら言う。


「もっと綺麗なのないの?」

「ネックレス買ってやる男じゃないんだからそれで我慢しろ」


 決闘が終わっても締まらないのは多分俺が適当な性格をしているせいだろうな。

 多分。

名前  ジラント・ジーク・フリーデン

レベル 90

称号  竜人の王女 侵略者 強欲の大罪人

スキル 強欲 魔王覇気 森羅万象 魔神 無限再生 無限図書 天神の目 射抜女神アルテミス

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