表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/166

罪人を探しに

 聖女を犯した後、身体と服を洗ってから愛車に乗る。

 愛車から随分楽しんだみたいだなっと言う雰囲気が送られる。


「たまにはいいじゃん。それに意外と抱き心地が良くってさ」


 ――スケベめ。


「良いだろうが。いろんな女を抱きたいと思うのは男のサガだ」


 愛車は呆れたような雰囲気を出し、ユウ達に向かって発進する。

 位置は首輪のおかげで分かるのでそっちに向かって愛車をとばすだけだ。

 本当に便利なんだよな隷属の首輪。

 そう思いながら聖獣の森を後にした。


 ――


 愛車でのんびりユウ達を追うとそれなりに発展しているポラリス内の町に着いた。

 聖獣の森からざっと2日ほど、やはりポラリス内だとバイクは結構目立つ。

 収納して聖なる泉と言うギルドを探していると、予想外のギルドだった。


「調薬ギルド……」


 調薬ギルド、つまり薬を売ったり調薬する事をメインとしたギルド。

 てっきり薬関係は廃れていると考えていたので意外だと思った。

 ポラリス内だと神様からもらった力、つまり光魔法での治療が主軸となっているのでてっきり薬なんて作られていないと思っていた。

 それにこのギルド、結構立派だ。

 おそらく密猟したユニコーンをここで薬として加工しているのだろう。


 なんて思いながら“聖なる泉”に入ると、店員さんが対応してくれる。


「いらっしゃいませ。何かお求めでしょうか」

「すみません。こちらにユウと言う女の子とレナって言う獣人の女の子が来ていませんか?」

「ユウ様とレナ様の主様ですね。どうぞこちらに、奥の客室におられます」


 店員さんが鈴を鳴らすと奥から女性が現れ、案内してくれる。

 その店員さんはこちらを向かず、歩きながら聞いてきた。


「ナナシ様は若様にスキルの使い方を教えたというのは本当ですか?」

「若様?もしかして少年の事か?」

「はい。いつかこのギルドのギルド長になるので若様と言われております」

「なるほど。確かに教えたよ」

「若様は将来このギルドの長になる方、あまり冒険に出たがる様な事はしない様お願いします」

「知るか。それはあいつの自由だ。俺の知ったこっちゃない」

「……では冒険者に憧れる様な事は言わない様お願いします」

「俺はただユウとレナを迎えに来ただけだ。他に用はない」


 そう言うと店員さんは黙った。

 黙って付いて行くと1つの部屋の前で止まった。


「こちらにおられます」

「どうも」


 そう言ってドアを開けると目の前にレナが居た。

 ご主人様が帰ってきた時のペットか。

 あ、その通りじゃん。


「お帰りなさいませナナシ様。お待ちしておりました」

「ただいまって言うのも違和感あるけどただいま。ユウはいるか?」

「ベッドの上でゴロゴロしています」

「あ、ナナシお帰りー」


 確かにユウはベッドの上でゴロゴロしながらドライフルーツを食べていた。

 ユウも大分人間臭くなったな~。


「こら、人ん家でそうゴロゴロしない。砂糖とかベッドの上に付いちゃうでしょ」

「え~。ベレトさんの屋敷でナナシも似た様な事してたじゃん」

「身内とよそは違うの。ほら、手を洗ってきなさい」

「ぶーぶー」

「そのまま言い続けると豚として扱うぞ」

「はぁい」


 渋々と言う感じで手を洗いに行くユウ。

 この世界のドライフルーツは本当に干しただけなので砂糖を使っているかどうか分からないが、ベタベタしてそうなので手を洗いに行った方が良いだろう。

 さて、問題は次の目的地がマジでない事なんだよな……


「う~ん」

「どうしました?」

「いや、次の目的地、どうしようかな~っと思って」

「何かないのですか?」

「いや~残りの2つ、つまり『嫉妬』と『怠惰』に関してはどこかで条件を満たさないといけない、と言う制限がないんだよ。言ってしまえばどこでも条件を満たせば誰にだって手に入るチャンスはある大罪スキルだ。まぁ罪を犯さないといけないって最低条件はあるけど」

「なるほど。では監獄などはいかがでしょう」

「監獄?あ~そう言えばあったな、そんなところ。でもどこの監獄に行くんだ?」


 監獄と言っても国ごとに監獄はあるし、どの国の監獄の事を言っているのか分からない。

 ちなみに俺は監獄に入った事はない。

 捕まった後少しでも時間を置けばすぐに暴れて逃げられると考えられていたのでそく処刑となった。

 なので留置所?みたいな所に数時間居たがすぐに殺された訳である。


「大監獄、エンドです」

「あ~……聞いた事あるな。確か世界中の罪人達が一か所に集められるヤバい場所、だっけか?」

「はい。罪状は様々ですが、多くは一定数以上の殺人を行った者達が集まる監獄です。人を殺しただけ罪人たちのレベルは高く、看守たちのレベルは平均40と言う場所です」

「へ~。現実的に考えれば結構強い連中じゃん。俺から見れば格下だけど」

「ですがこの監獄、様々な噂があり時には盗人がこの監獄に侵入しようとするとの話を聞きます」

「……は?」


 今時の子って何考えてるのか分からない。

 え、何?監獄にちょっかい出す俺カッコいいみたいなのはやってるの??

 新手のバイトテロみたいな感じか??


「なんでもその監獄の地下には罪人たちが所有していた武器などが地下に溜め込んでいると言う噂があるのです。その中には伝説の武器があるとかないとか」

「あ、そう言う感じ。でも伝説の武器とはまた微妙な」

「ナナシ様も似た様な事をしたと聞いておりますが?」

「俺は国の宝物庫から奪ったんだ。その国がちゃんと持っている事は確認済みだし、その伝説の武器が何なのかも突き止めてる。そうしたうえで盗みに行くなら止めはしないが、存在も不確かなのに盗みに行くってバカがすることだろ。自分から捕まりに行ってるようなもんじゃん」

「それは否定できませんが、何でも裏オークションではその監獄から売られた呪われた武具などが出品されたようで、信憑性は高いと」

「ふ~ん。でも俺が持ってるコレクションを上回るアイテムなんてあるのかな……」


 ぶっちゃけ大罪人時代様々な人間の国で国宝と言っている武具などを盗みに行った事がある。

 だがどれもこれも文化的、歴史的な価値はあっても武器として使えない儀式用のレイピアとか片手剣とかそんなのばっかりだった。

 だから個人的に宝物庫の隅っこに置かれていた呪われた武器の方が性能が良く、気が付けば呪われているけど高性能の武器を集めるコレクターになっていた。


 普通に高性能の武器もない事はないけど、デメリットの分攻撃力とか色々性能が高いの本当に多いんだよね、呪われた武器。

 それにデメリットのほとんどが『狂化』という目の前の敵をただひたすらにぶっ殺したくなる衝動に当てられるとか、バッドステータス“怒り”になるとかそんな感じだからな……

 ぶっちゃけソロプレイヤーやってた俺からすればデメリットがデメリットになってないと言うか、どうもパーティーを組むとするとデメリットが大きいみたいな感じばっかりなんだよな……


 ちなみに極夜も今着ている服も全部呪われた武具だ。

 と言っても極夜はとある古い剣をドワーフの王様に頼んだら作ってくれた専用武器みたいな感じだし、服に関してはベレトが作ってくれたしな……なんで呪われているのかよく分からないし、どんな効果が出ているのかよく分からん。


「その監獄に行けばわずかでも大罪スキルを所有している者を見付けるか、そのヒントくらいは見付ける事ができるのではないでしょうか」

「なるほど。それなら行ってみる価値はあるかもな」


 その噂を確かめるだけでもちょっとは価値があるかも知れない。

 なんて思っているとユウが手を洗って戻ってきた。


「洗ってきたよ~」

「よし。それじゃ次の場所狙うぞ」

「次?元々目的地はないみたいな感じじゃなかったっけ?」

「レナが提案してくれた。監獄に行くぞ」

「……自首しに行くの?」

「んな訳あるか。俺はポラリス以外犯罪行為はしてない」

「誇るべき事ではないけどね」


 でもこれ結構重要なんだぞ。

 人間至上主義で光の神だけが神様扱いしているポラリス嫌いの国にって英雄扱いされているからな。

 300年前は。


「とにかくその監獄に行って大罪スキルに関する情報を手に入れるのが目標。『嫉妬』と『怠惰』は発見するのはそれだけ難しいって事だ」

「それで、もし持ってる人を見付けたらどうするの?」

「……殺すか」


 大罪スキルを持っている奴にろくな奴はいないと思う。

 何せ大罪と言われるだけあり一定以上の殺害が最低条件と言っていい。

 殺しが関係ないのは『強欲』くらいか?

 あれは国から宝を奪うというのが条件だし。と言っても国の宝物庫に誰も殺さずに奪うというのは不可能に近いと思うけど。


「……そっか」

「大罪スキルを持っている奴が大人しく俺達の仲間になるとは思えない。まぁ監獄に居る可能性は非常に低いけどな」

「え、そうなの?」

「大罪スキルを持っている奴がそう簡単に捕まるかよ。残っている『嫉妬』はコピー能力、本来の自分の顔を忘れて誰かに成りすまして生きようと思えばいくらでも生きていける。『怠惰』に関しては奴隷を手足として動かすのが1番効率が良い。言ってしまえば直接手を下してもいくらでも誤魔化せるスキルと、完全に誰かに任せて自分の手を汚さずに罪を犯せるスキル。そう簡単に捕まるとは思えねぇな」

「それじゃ何で行くの??」

「ポラリスへの嫌がらせ」


 ぶっちゃけ世界中の罪人と言っても所詮ポラリスに所属する人間の国限定の話だ。

 他の国の人間も居るとは思えない。

 ぶっちゃけ監獄に大罪スキル所有者が捕まっている可能性は非常に低い。


「……何で行くのかやっぱり分かんない……」

「こう言うのはノリと勢いだけで行くもんだ。どうせ目的地なんてないし、俺の最低限の仕事はとっくに終わってる。あとは好きに生きていいというのであれば好きにやらせてもらうさ」


 何て言いながらギルドを出ようとすると、少年とおっさんに捕まった。


「兄ちゃんもう行っちゃうのか!?」

「おう。次の目的地が決まった。だからそこに向かう」

「どこに行くんだ?」

「監獄。えっと名前は……」

「大監獄エンドです」

「そこそこ。そこに行く」


 ど忘れした俺にレナが合わせてくれる。

 そしてその言葉を聞いたおっさんはものすごい苦虫を嚙み潰したような表情をする。


「大監獄に自ら飛び込むとは、蛮勇かはたまた単なる愚者か」

「出来れば蛮勇の方で頼む。それから借りは監獄から戻ってきた時に渡してくれ」

「一体何を要求するつもりだ」


 堂々と言っているが内心はビビっているだろうな。

 そんな雰囲気を感じながらおっさんは聞く。

 だが俺が頼む事はそう難しい事じゃない。

 欲しいのは情報だ。


「おっさんに要求するのは情報だ。1つは奴隷商人について。今どこの誰が奴隷商として成功しているのか調べて欲しい、1人でも多くの奴隷商の情報があると助かる。2つ目は不審な殺人事件について。小さな噂から都市伝説までできる限りハッキリしない殺人事件について調べて欲しい」

「……そんな事でいいのか?」

「そんな事が俺にとって重要なんだよ。お前の息子が手に入れたスキル、それと同格のスキルを持っているかも知れない重要な情報だ」

「気を引き締めて調べさせてもらう」

「あと今度おっさんと仲良くしてる悪いお友達の事も紹介してくれ。アルバイトくらいしたいからさ」

「向こうが興味を持ったらな」

「それでいい。そんじゃ行くわ」

「え~。兄ちゃんもっとスキルについて教えてくれよ。全然上手くいかない……」

「お前は元々レベル1なんだからこれから強くなるし経験を積んでいけ、その力に頼るか頼らないかは少年が決めろ。じゃ」


 俺はそういって手を振って別れる。

 ユウは「またね~」っと軽い感じで別れを告げ、レナは丁寧に頭を下げてから俺の後ろを歩く。

 ちょっと町を出たところで愛車を出す。


「そんじゃ次は大監獄エンドって所に行ってみますか!!」

「おー!」

「あまり油断し過ぎないようお願いします」


 ユウはノリ良く、レナは身を引き締めるように言いながら次の目的地に向かって愛車を走らせるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ