聖域の惨劇
「う……くっ」
「はいオッケー。とりあえず最低限はオッケーかな」
「ぷはぁー……はぁはぁ……兄ちゃんこれ意外ときついよ~」
「でもこれくらい当たり前のようにこなしてくれないと困る。もうポラリスの連中もある程度整ったみたいだし、もし偶然出会ったら簡単に殺されるぞ」
少年の修行を付け始めて3日目、ようやく暴食の力を自分の意思である程度操る事に成功した。
と言っても俺から見るとまだまだで、かなり集中していないと操れていないので少し油断するとまた落っこちる。
でもまぁ及第点と言う所。
これで無意識に辺り一帯を食べ尽くす事はないだろうからこんなもんだろう。
「さて、それじゃ今夜にでも逃げるか」
「もういいの?」
「元々ここで『暴食』を誰がかが手に入れているのかどうかの確認が目的だった、少年が手に入れたのならそれでいい」
「てっきりレナにあげるために頑張ってるのかと思った」
「ま、この中で手に入りそうなのはレナだったのは認めるが、別に無理して手に入れる程の物でもないさ」
「最強スキルの1つなのに?」
ユウはレナの事を見るが先に『暴食』を手に入れられた事に対して特に気にしていない。
元々対集団戦に特化した『憤怒』を持っているからもう要らないという感じだろう。
だが問題はこのあとなんだよな……
残りの『嫉妬』と『怠惰』に関してはこの場所で行う、このクエストを達成する事ができれば手に入ると言う物ではない。
言ってしまえば本人の生き方で手に入るスキルだ。
これを誰が手に入れて、どう使っているのか目星をつける事も難しい。
まぁとりあえず悪い事をしている連中の誰かが持っている可能性は高いので、ポラリスに喧嘩売りながら旅をするのが良いのかも知れない。
「さてと。それじゃお前らがうまく逃げられる様にちょっと聖女に喧嘩売ってくるわ」
「……最後まで恩の押し売りか」
「これはうちの子が逃げるための時間稼ぎでもあるからどう捉えるかはそちらの自由だ。タイミングは……どうしようか?」
「普通に考えれば夜の方が良いが……奇襲をかけるのであれば昼間でも問題ないだろうな」
「それじゃ分かりやすいおとりになるために今から仕掛ける」
「流石にそれは待て。少し準備をさせろ」
という訳で昼飯を食って少しゆっくりして腹を落ち着かせてから俺がポラリスの連中を襲う事が決まった。
しっかり飯を食い、ちょっとゴロゴロしてそれじゃ行きますかっと気合いを入れる。
正直時間稼ぎは苦手だ。
ソロで動いていたからどうせ殺すなら素早く全滅させてやろうとタイムアタックの感覚で皆殺しにしていたから、逃げる時間を稼ぐためにわざと殺さないというのはぶっちゃけ性にあわない。
でもまぁ結果が良ければそれでいいだろう。
「ナナシ、また悪い事考えてる……」
「それで、合流はお前達のギルド、聖なる泉でいいんだっけ?」
「そうだ。そこで少しでも恩を返しておくつもりだ」
「大変だね~。借金の方が分かりやすくていいかも知れないな」
「それはそれでどうだろうな」
おっさんも話し合いではいつでもすぐにマウントを取ってこようとするのでいい感じだ。
そして少年がそれを無駄にする。
「兄ちゃん頑張ってね!」
「おう。ちょっと待ってな」
「うん!!」
「ユウ、レナ。お前達2人はおっさんと少年の護衛だ。特にユウは防御力に特化してるんだから守り抜いてみろよ」
「分かってるって」
「承知しました」
ユウは少し軽いが、レナが居るから問題ないだろう。
さてと、それじゃ喧嘩吹っかけて来ますか。
「行ってきます」
そう言った後俺はポラリスの陣営に転移、森羅万象で周囲に散らばっているポラリスの騎士を捉える。
「さて、逃がすためには邪魔な連中全員ぶっ殺すのが1番楽だよな!」
陣地に固まっていないポラリスの騎士達を空間魔法と獄炎魔法のコンボで一気に焼き殺す。
焼き殺された騎士達は灰も残らずあっと言う間に死ぬが、炎だけは火柱として残り続ける。
それはただの演出であり、黒い火柱が森に急に現れた気分はどうだろうか。
奴らの反応は想像通り慌てふためき、すぐに森の状況を確かめるために動こうとするがそれは俺が許さない。
敵陣営を黒い炎の壁に閉じ込め逃げ場を無くし、堂々と正面から騎士を殺す。
さて、今の俺がどこまで通用するのか確かめてみようか。
――
「聖女様!!黒い炎が森中に!!」
「敵襲か!?」
「恐らく!!さらに同じく黒い炎の壁が我らの陣を囲っております!!」
突然現れた男によって殺された騎士達の遺体を本国に送り、規模を縮小しながらもまだギリギリ密猟者達を捜索できるときに突然起こった。
黒い炎の柱はまるでこの世の終わりを示している様に騎士達に見えた。
だが聖女はこの状態をただ見ている訳にはいかない。
森に居る騎士達が無事なのかどうか確かめる義務がある。
しかしそれは黒い炎の壁に阻まれ捜索する事すら出来ない。
「ご報告いたします!!例の男がまた単身現れました!!」
「すぐに向かいます!それまで他の者達は自身の命を優先させなさい!!」
あの男は危険だ。
人を殺す事に何のためらいもないあの男は非常に危険だ。
しかもへらへらと笑っており、まるで遊び感覚で人を殺す本物の狂人。
生かしておけない。
生かしていればこの先どれ程の被害が現れる事だろうか。
そう考え駆け出す聖女。
そして聖女が見た光景は、地獄と地獄の化け物だ。
既に襲われた騎士達は地面に大量の血をぶちまけ、鎧も兜も関係なくただ殺されている事が分かる。
殺され方は様々で理解できない傷跡が多い。
まるで巨大な獣に食い千切られたかのような獣の歯形が鎧に残っている。
またある騎士は高度な炎の魔法で焼かれたのか真っ黒な人型の炭になっており、黒い炎は炭になった騎士を未だに焼き、最終的に炭も残さず燃やし尽くす。
そして最も多いのが散らばった手足や首。
まるでその跡は獣の食い残しだ。
散らばり、指や腕の一部、誰かの目玉が転がっている。
そして残った顔は恐怖の表情に染まりそのまま表情が戻せなくなっていた。
そしてそんな残虐と言える光景の中心に例の男がいた。
男は血よりも赤黒いオーラを身にまとい、返り血に染まり黒い服がさらに薄く赤く染まっている。少し時間が経ったせいかより不気味な黒に変化していた。
赤黒いオーラ、または覇気など見た事がない。
まるで炎のように揺らめくオーラは男自身を燃やしている様にも見える。
特に恐ろしいのは男の表情だ。
男の表情は、一切変化がない。
まるでただ目の前にある邪魔な物を退かしただけとでも言いたそうな無表情。
そしてつまらないという様な無表情。
一切の感情が感じられず、この惨劇をただの作業としか思っていない表情に聖女は怒声をあげた。
「貴様あああああぁぁぁぁぁ!!」
聖女は危険性を知っていたため以前のように確かめる様な事は一切せず、最初から全力で槍を弓で放った。
もちろん放った槍も特別な物であり、ポラリスで量産できる中では最高の槍だ。
光属性の力を増し、貫く力をより強く付与されている。
これなら楯で身を守ろうが、オーラで身を守ろうが、結界で身を守ろうが必ず貫通させる事ができる聖女にとっての最高の攻撃。
だが男は一切避ける様子はなく正確に男の頭を捉えたが、槍が消えた。
「な!?」
「おいおい。この程度で驚かれちゃ面白くないだろ」
男はそう言いながら手をコートのポケットに入れたまま話しかけてくる。
聖女はそんな言葉に応じず、次々と槍を放つが全く効かない。
心臓を狙っても、手を狙っても、足を狙っても効果が一切ない。
全てを貫くはずの攻撃が効かない。
「ワンパターンだな~。もっと面白い攻撃はないのか?」
余裕がある姿に苛立ちを隠せないでいると、どこからか光の魔法が男に向かって飛んでいった。
見てみると魔法使いの1人が男に向かって杖を向けていた。
男は意外そうな表情で魔法使いを見ると、魔法使いは肩を震わせたがそれでも杖を男に向けながら叫んだ。
「こ、攻撃いいいいいぃぃぃぃぃ!!」
その叫びと共に他の者達も攻撃し始めた。
1人の勇気によりこの部隊はまだ戦えると確信した聖女だったが、男はまだ余裕がある。
相手の攻撃を受け流す、もしくは他の物にダメージを移す外法があるらしいがそれでも限界はある。
必ずその瞬間を狙って耐えきれないほどにダメージを与え続ければ勝てる!!
そう思い聖女と騎士達はとにかく攻撃を続けた。
魔法が得意な物は魔法で、得意でない者は槍や剣を男に向かって投げ、補給部隊の力のない者達はそこら辺に転がっている石を投げ続ける。
必ずこの攻撃は無駄にならない。
必ず攻撃が届く瞬間が来ると。
だが現実は無慈悲だ。
長距離から、安全圏から攻撃し続ければ勝てるはずなのに、男は全く倒れない。
全員が肩で息をし、魔力も尽きそうなほど攻撃したのに、全く効いていない。
すると男は突然拍手をし始めた。
何かの攻撃ではないかと警戒する聖女と騎士達を前に、男はバカにしながら言う。
「いや~素晴らしい攻撃だった。戦える者も、戦えない者もみんなでよく頑張りました。でも、それでも届かないのが現実だ」
急に最後だけ雰囲気が変わり恐怖を感じる聖女と騎士達。
そんな事に一切気が付かず男は話し始める。
「この世界で1番必要な物って何だと思う?このレベルなんて分かりやすい数字がある世界で最も大切な物、それは強さだ。ありふれた金だの名誉だの恋人だの、確かに大切とは言えるが必ずいつかなくなる物だ。
それらを大切に守るためにはどうするのが良いと思う?簡単だ。力があればいい。力がなければ守るという選択肢すら選べない。
俺は強者でお前達は弱者。お前達にも選択肢はあったが俺の選択肢が優先される。それは何故か、俺の方が強いからだ」
そう話した後男は赤黒いオーラを纏いながら消えた。
だがすぐに騎士達の悲鳴が聞こえる。
苦痛に歪み、彼らの絶望した声が響き、辺りに血が噴水の様にあふれ出す。
聖女は弓で攻撃しようにも仲間である騎士達を盾にされて射貫けない。
男は疲弊しきった騎士達の影に隠れて進むせいで射貫きたくても射貫けない。
そして男は盾として使っている騎士達を容赦なく殺す。
まるでそれ以外の価値はないと言っている様でほんのわずかな時間、聖女に攻撃させないという役目を果たしたら壊すという感じだ。
触れただけで獣の噛み跡の様な物が現れると同時にはらわたが散らばる。
人間からこれほどまでに血があったのかと驚かせるくらい溢れ、地面を赤く染める。
「もうやめて……」
男に聖女の声が届いているかどうか分からないが、男は止めない。
「本当に止めて……」
聖女は弓を構えながら先程より強く言ったがまだまだ弱弱しい。
男が駆け抜けるたびに地面はより広く、赤く染まる。
「いい加減にしてよ!!」
聖女はそう言いながら槍を放ったがすでにそこに男はおらず、槍に吹き飛ばされたのは死体だけ。
死体が吹き飛んだ分より広く大地が赤く染まる。
「何でこんな事をするの!?どうしてこんな事をしたの!!」
聖女が放つ槍よりも早く男が騎士達を皆殺しにする。
もちろん逃げようとする騎士も居るが簡単に追い付かれ、背中から血が勢いよく吹き出す。
いくら力を込めても届かない。
いくら正確に槍を放ってももうそこにはいない。
いくら頑張ってもかすりもしない。
男は触れるだけで騎士達を簡単に殺していく。
男は返り血を浴びながら嬉々として殺す事を楽しんでいる。
男は騎士も魔法使いも戦えない補給部隊も殺す。
男は――本物の化け物だ。
聖女は息切れし、次の槍を握ろうとしたがもう既に槍がない。
そしてここには聖女以外の人間はおらず、いるのは化け物だけ。
化け物は最後に殺した騎士を持ち上げ、まるでシャワーのように自ら血を浴びる。
その後髪を上げまるで風呂上がりの様にスッキリした様な表情をした。
もう弓を引く力もない聖女は、ただへたり込んだ。
化け物は聖女に近付き、頬を突いた。
「お~い、もう終わりか?生き残っているのはもうお前だけだぞ~。頑張らないと死んじゃうぞ~」
触れるだけで簡単に殺せるくせに。
なぜ殺さない。
「……結局何が目的だったの」
「ん?」
「何が目的で私達を殺したの」
「君の事はまだ殺してないんだが……まぁ簡単に言えば目障りだったからかな?まぁこれも後付けみたいなもので、本音かと聞かれるとこれはこれで違う様な……」
そんなあいまいな答えに聖女は反射的に手を上げた。
しかし化け物はすぐに反応して振り上げた手をつかまえる。
直ぐに手を失うかも知れないと聖女は考えたが、このまま生き恥をさらすくらいなら殺されるのもいいかもしれないと思い始めていた。
だが化け物はその反応を見てまた下品な笑みを浮かべた。
「へぇ。まだそれくらいの感情はあるんだ。意外と強いじゃん」
「強かったら、強かったらこんな事になってない!!」
「でも普通に考えればレベル50超えてる時点でかなりの強さだよ。普通に考えれば」
「そう何度も言われなくとも分かっている!!私は、弱い!!」
こんなにも自身の弱さを認めるのが苦しいとは思わなかった。
こんなにもみじめだとは思わなかった。
こんなにも……悔しいとは思わなかった。
今の私なら、みんなを助けられると思っていたのに。
「……泣くほどか。ポラリスって連中はよく分からん」
「っ何を――」
「だってさ、こういう時こそ神様助けて!!って宗教の人なら言いそうじゃん。お前ら本当に神様信じてるの?」
「当然だ!!我々は善の神に身を捧げ、その教えを守る者達だ!!教義だけは絶対に犯さない!!」
「ふ~ん。中途半端な奴」
「な!」
化け物が聖女に送る視線は、哀れみだった。
何故憐れみを向けられるのか分からない聖女は化物の言葉に耳を傾ける。
「そんなに神様の事が第一だって言うなら教会でシスターでもやってろ。命を奪う立場になるな」
「貴様の様な化け物が何を言っている!!お前の様な物が居るから我々騎士が必要なのだ!!」
「俺みたいなバケモン早々出てこねぇよ。力を求めてあっちにフラフラ、こっちにフラフラして欲しい武器を奪って欲しいスキルを手に入れて、そうやって強くなってきた。それにしてもこの世界の業は深い」
「何故そう言える!!」
「だって人間殺すのが1番レベルが上がりやすいんだぞ。つまりレベリングの効率だけ考えれば人殺しの方がレベルが高いのは当然って事」
「………………は?」
聖女は耳を疑った。
確かにこの世界でレベルと言うのは知っていて当然の物であり、魔物や動物を殺す事でレベルが上がる事は周知の事実、常識だ。
だが、人間を殺す事が最も早くレベルを上げる方法??
「あれ?もしかして知らなかった??それならここで教えてやるよ。レベルの高い人間を殺すのが1番効率的なレベリングだ。魔物だってレベルの高い奴を殺す方がレベル直ぐ上がるだろ?」
「あ、ああ」
「それと同じだ。でもどう言う訳か人間を殺す方が効率良いんだよね。その理由に関しては不明で研究中だが、言い方を変えれば神様がそう設定したからと言えるんじゃないか?」
「神が、そう世界のルールにした?」
「だってこの世界の常識、どうやっても変える事の出来ないルールっていう物は神様がそう設定したとしか言いようがないじゃん。そして確か君達の所の神様は随分と傲慢な事を言ったようじゃないか。確か『世界は私が作った』、だったか?つまり――君達の神様がクソなルールを設定したって言えるよね」
何故、何故この化け物の言葉を聞いてしまったのだろう。
聖女は大きく後悔した。
神への不信は最大の罪、神の言葉を疑ってはいけないという教義に背いてしまう。
神の言葉は絶対であり、神の指示に従っていれば必ず幸福になれるはずなのに――
「やっぱ信者さんにはこういう皮肉な言葉の方がよく効くな。で、どうする?ある程度強かった君は見逃してあげようと思ってるんだけど」
見逃される?
つまり生き残れる?
「何故だ」
「ん?」
「何故私を生かす。私が、ポラリスが目障りなんだろ」
「そうだね、目障りだね。でも本当に目障りなのは君達の1番偉い人……人とは違うか。君達の神様が邪魔で邪魔で仕方ないんだ。必ず殺す」
神を殺す。
そういう化け物の目に偽りはないように感じた。
いや、化け物の目は常に偽りはなかった。
つまり本気で神を殺す気なのだと、聖女は悟った。
「本気で神を殺そうと口に出す者が居るとは思わなかった」
「さて、君を生かす理由に関してはこれで納得していただけたかな?でも君は敗者、もうしばらく俺の好きにさせてもらうよ」
そうい化け物は聖女の鎧に触れ、破壊した。
結局殺されるのではないかと震え、怯えたが壊したのは鎧だけ。
だが服を引き千切った事で何をしようとしているのか悟った。
「な、なにをする気だ!!」
「何って犯すんだよ。お前は俺の物だとマーキングしておくんだよ」
「い、嫌だ!犯されたくない!!」
「大丈夫。経験結構あるからすぐ痛くなくなる。それにちょっと実験してみたいし」
「じ、実験だと!?」
実験と言う言葉に不安を感じたが、聖女の身体はすぐに熱くなる。
何か、甘い匂いがすると感じた途端に全身がうずき、興奮が止められない。
「な、なにをした!!」
「魅了みたいなものだよ。大丈夫、別に中毒性とかはないから」
「薬でも使ったのか!?」
「残念不正解。それに変化が起きたのは俺の方だし、聖女ちゃんは何の害もないから」
「害がある無いの問題ではない!!」
「大丈夫。気持ちいい思いをするだけだから」
「や、やめ――!!」
聖女は叫ぶ事も出来ずに化け物に唇を塞がれた。
味などないはずなのに何故か甘く感じる唾液、先程まで恐ろしいと感じていたはずの化け物に抱かれているはずなのに何故か感じる安心感。
その一瞬の隙を見つけたかのように化け物は聖女を貪る。
聖女は貪られている事を感じながらも自身が壊れてしまったのではないかと考える。
先程まで殺し合っていた化け物に貪られているのにもっとと思ってしまったからだ。
もっと深い所を貪られたい。もっと大切な所を貪られたい。もっともっとこの快楽を味わいたい。
そう考えてしまっている時点で私は壊れてしまった、犯されておかしくなってしまったと自覚する。
最終的に化け物が聖女を放したのは夜中になってからだ。
その間ずっと化け物は聖女を舐め、食らい、犯し続けた。
聖女は初めてであり、その初めてで長時間犯され続けたのですでに体力は残っていない。
理性もほとんど失ってしまい雌の本能で雄に媚びる事しか出来ない。
そしてその姿は第三者から見れば愛し合う男女のようにしか見えなかった。
「あ~満足した。少年が来てからレナとエロい事できなかったからな~。それにしても意外と着やせするタイプだったな。……よし。ちょっと仕込んでおくか」
そう言った後化け物は聖女を犯すのを止めた。
聖女は引き抜かれた時にびくりと身体を震わせたが、うっすらと目を開けてすぐに引き抜かれた物を名残惜しそうに舐める。
「やっぱ聖職者って言うのは依存しやすいのかね?神様なんて居てくれたらいいな~くらいでいいだろうに。神様に全体重かけて寄り掛かっちゃダメでしょ。それにまた抱きたいから今度は俺に依存しちまいな」
その後化け物は聖女に腕輪を付けた。
聖女の身体を湯で洗い、綺麗にした後唯一無事だったテントのベッドに寝かした。
「さてと、それユウ達の事を追いかけますか」
その後この事件は『聖域の惨劇』とポラリスで呼ばれるようになり、大罪人との戦いの幕開けとして後の世に名を残すのだった。




