表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/166

聖女のスキル

 陣地に戻ってくるとそこには既に尋問を受けていた人達はユウに治療されていた。

 確かに光魔法は攻撃、防御、回復と汎用性の高い魔法なので初心者向けと言えば確かに初心者向けだ。

 それに他の魔法同様にレベルが上がればより強力な魔法を使う事ができる。

 まぁ光魔法は元々汎用性が高いせいか、上位魔法になる事はあまりないんだけど。

 もしかしてそれを狙っているのもあるのか?光魔法の上位、聖魔法の取得を試してる??

 …………何でもいいか。


「ユウ。治療終わったか」

「あ、ナナシお帰り。治療終わったよ。みんな拷問でも受けてたの?酷い傷だったんだけど……」

「受けてただろうな。でもポラリスの連中にとってはただの尋問。覚えとけユウ。自分達が正義だと信じて疑わない連中はたまに大罪人おれ以上に残酷な事をする」

「ナナシって拷問した事ないの?」

「ない。情報引き出すなら奴隷にする方が楽だし、拷問したから口を割るとは限らないからな」


 それはそれでどうよと思う密猟犯達。でも俺は気付かない。

 そんな俺の服を引っ張る誰かが居る。

 少年が俺の服を引っ張りながら見上げていた。


「みんなの事助けてくれてありがとう」

「なに、ただの恩の押し付けだ。気にしなくていい」


 お前の親父は気にするだろうけどな。

 さて、色々確認するか。


「それで、一応ポラリスの連中の3分の1くらいは殺してきたが今のうちに逃げるか?」

「……逃げたいのはやまやまだが、まだ皆の体力が回復していない。1日だけおいてもらってもいいだろうか」


 おそらくこれ以上恩を押し売りされるのは嫌だろうが、それでも部下のために甘える事を選択したおっさんは偉いと思う。

 恩を返せという時には少しだけマイルドにしておこうかな。


「分かった。それじゃ食料が足りないからユニコーンを2匹狩ってくるぞ。いいな」

「……そのくらいが妥当か」


 と言う訳でユウを連れてユニコーン狩りに行く。


「お。おい……」


 ……行こうとする前に声かけられた。


「どうした?」

「その、この結界その女の子が張ってるんだろ?いなくて大丈夫か?」


 ああ、その事か。


「大丈夫だ。この結界はユウが生きている間は張り続ける。だからお前らの安全は保障する。それからそこにいる獣人はお前達の護衛も任せているから怒らせるなよ」

「そうか。止めて悪かった」


 とい訳で改めてユニコーンを狩りに行く。

 ちょっと俺とポラリス、おっさん達とポラリスが戦ったせいでユニコーンが遠くに逃げてしまったので少しだけ歩く。

 歩いている途中ユウは聞いてきた。


「ナナシ、聖女ってどんな人だった?」

「どんなって知ってるんじゃないのか?」

「う~ん。どうも感情がない時の記憶ってあやふやなんだよね~……一緒に戦った事があるような、無いような……」

「性別くらいは分かるだろ」

「よく覚えてない。聖女って言うくらいだから多分女の人なんだろうな~くらいの予想はできるけど」


 これはまた面倒な。

 本当にユウはポラリスの象徴として、ポラリス最強の存在としてのみ扱われてきたらしい。

 だからそれ以外の事、そのとき何があったのか、どんなことをしたのか覚えていない。

 それにユウが勇者として前線に居たのはおよそ50年前。もしかしたら俺の見た聖女とは違う聖女かも知れない。

 俺は『嫉妬』を使って聖女に変身してから聞く。


「こんな感じの女だったが、覚えてないか?」

「う~ん……覚えてないかも。もっとこう、お姉さんぽかった気がする?」


 やはり記憶があいまいなのか、しっかりとは答えられない様子。

 それにしてもこの聖女、マジで装備パワーバカなスキル構成してるな。


『名前 ジャンヌ・オデュラー Lv51

 称号 ポラリスの聖女 戦乙女 指揮官 光の神の加護

 スキル 武装極ウエポンマスター(弓) 武装極ウエポンマスター(槍) 英雄覇気 腕力強化 武装反動軽減 武装条件無効 武装効果上昇 武装換装 カリスマ 回復量上昇 予知 貫通』


 覇気持ってるのに腕力上昇をそのまま持っているとか腕力に力注ぎ過ぎだって。

 それにしても『武装条件無効』がこんな形で力を表すとは……想像もしてなかった。

 本来の『武装条件無効』の使い方は簡単に言えばレベルや様々な条件がある装備アイテムの条件を無効化するためだったり、呪われた装備を身に付けてもデメリットが表れない様にするためのスキルだ。

 あんな訳の分からない攻撃のためのスキルではない。


 それに効率重視のプレイヤー達から見れば2種類の武装極を取得するのは無駄が多いと言われていた。

 理由は1つの武器を極めれば十分と言う点。

 この世界は俺から見ればゲームの世界であり、武装極(剣)を取得すれば中距離攻撃の斬撃をとばすというゲームならではの動きが出来るので無理に長距離攻撃を取得する必要はない。

 本当に長距離攻撃が欲しいというのであれば魔法を覚える方が効率的だと言う者も多かった。

 弓の武装極だと逆に至近距離の攻撃アビリティーが出てくるらしい。


 もう1つは時間。

 武装極を取得するにはその武器を永遠と使い続ける必要がある。

 それに時間だけではなく途中で上位武具系スキルを取得するにはイベントをこなさなければならない。

 しかもそれが下級から中段、中段から上段と言う感じで段階を踏んでスキルを取得していくので簡単には手に入らない。


 俺が武具系スキルを持っていない理由がこれだ。

 1つの武具を極めようとせず、あっちこっちに手を出している間に特定の武具を使う事で補正のかかるスキルを取得する事ができなかった。

 だから俺は武具を使ってもその武具の純粋な攻撃力や防御力しか加算されない。


 そんな1つの武器に拘らない代わりに直接蹴って殴ってを繰り返している間に『武の極』を取得していた訳である。

 それにしてもジャンヌか。定番の名前だがプレイヤーの誰かがそう名乗ってたのか?

 俺はユウに聞いてみる。


「ジャンヌって名前、結構定番?」

「定番だね。ポラリスで女の子のほとんどがジャンヌかも」

「つまんねぇ~な~。定番すぎるじゃん」

「私には名前すらなったけどね」

「で、本当に聖女のこと知らないんだな」

「知らな~い」

「よし。ならこの情報レナに渡してそこからシリウスに知ってもらおう。そうすればポラリスの連中を少しは弱体化出来る」

「おー」


 俺に合わせて拳を突き上げるユウ。

 ほんの少し前からは想像もつかないほど感情を表に出している。

 良い事だと俺は思っているが、ポラリスの連中はおそらくユウが感情を持つ事をよしとはしないだろう。

 改めて俺はユウを守らないといけないと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ