聖女の戦闘
ポラリスの陣営近くに転移した後、『森羅万象』でおっさんのお仲間がどこにいるのか探る。
密猟犯の一部を捕まえたからか今日は陣営内に人が多い。
いつ捕まった密猟犯達を運び出すのか分からないので出来るだけ早く動きたいが……いた。
捕まった密猟犯達は現在聖女様に厳しく尋問を受けている。
密猟犯の身体には既に鞭で身体を打ち付けられた跡があるし、人によっては小指が無かったり、爪を無理矢理剥ぎ取られたと思われる傷が目立つ。
ポラリスの連中が非情なのは今に始まった話ではないが、300年前よりも過激になってるな。
おそらくポラリスの騎士達は完全に自分達が正義だと信じて疑ってない。
そのため目の前にいる悪党に対してどこまでも非情になれるし、今のようにどんな厳しい罰を与えても何も感じない。
悪党を裁くのに余計な感情はいらないという感じだろう。
とりあえず本物のチートである俺は近付く事なく捕まっていた10人を即座に俺の陣地内に転移させた。
聖女様は驚きながらもすぐに外に報告、大声で「捕虜が逃げたぞ!!」と声をあげるが誰も逃げた姿など見ていないのだから逆に混乱を招いている。
その光景を楽しく見ていたが、あちこち探している聖女に見つかった。
聖女は即座に光の攻撃魔法を使って攻撃してきたのでちょっといたずら心が芽生えた。
そうだ。この際どれくらい強いか確かめてみよう。
と言う訳で今回は逃げずに真正面から殺してみよう。
俺に気が付いて突入してくるポラリスの騎士達。
こいつ等は雑魚確定なので適当に殺す。
雑魚どもは覇気を纏ってただ丁寧に顔面か心臓の所を殴れば簡単に吹き飛ぶ。
顔面を殴れば千切れてどこかに飛んでいき、鎧が拳の形に凹むほどの力で殴れば後方にいる雑魚どもを巻き込みながら死んでいく。
後ろから殺しに来る雑魚共も『森羅万象』により姿は把握できている。
余裕でかわして一撃で仕留める。
それを繰り返すだけで雑魚どもは面白いように死んでいく。
俺に関してはただの遊びで一切緊張はなく、鼻歌を歌いながらどこまで一撃で仕留める事ができるのかチャレンジ中。
「魔法だ!遠くから魔法で仕留めろ!!」
そう言うのは仲間にだけ聞こえるようにしないとダメじゃない?
指揮官と思われる騎士がそう言うと全員俺から離れ、光の魔法で長距離攻撃しようとするが、人数が多いのならもっと複数の魔法、複数の種類で攻撃した方が良いだろうに。
光魔法メタの魔法、使ってやるよ。
「ブラックボール」
闇魔法、ブラックボール。
効果は光魔法を一定間この真っ黒なボールに強制的に引き寄せられるだけ。
闇の初級魔法であり、防御にしか使えないクソ雑魚魔法だが、光魔法に対してのメタ魔法として有名だ。
と言っても他の属性の魔法には一切効果がないので使える所は非常に限定的だが。
これにより相手が使う長距離系光魔法は全てブラックボールに向かっていく。
その間にワンパンワンパン。
いや~こいつ等の弱点ってぶっちゃけ光魔法ばっかり使ってくる事なんだよね~。
特に新人の騎士やら何やらの時は特に。
これはユウから聞いた話だがポラリスの騎士や魔法使いになった時最初に教えられるのが光の魔法らしい。なので攻撃も防御も基本的に光魔法に頼ったものが多い。
これを聞いて俺はなるほどと思った。
ぶっちゃけ光の魔法ばっかり使ってくるのでメタが張りやすいのはそういう事かと納得した。
まぁポラリスの連中が信仰しているのが光の神らしいし、そこから光魔法の普及が進んでいたんだろう。
と言っても上位の騎士達は様々な魔法を使う事が多いのであくまでも雑魚から中級、だいたいレベル30くらいまでは光魔法ばっかり使っている。
そんな雑魚どもは驚いている感じだが、本当にメタがとりやすい。
これ本当に俺1人で絶滅できるんじゃね?っと思っていると槍が飛んできた。
まさに横槍(物理)。投げたのは誰か見てみると、聖女がこちらを睨みつけていた。
「私が相手をします!みなさんはサポートお願いします!!」
そう言って普通の槍を連続で2本投げてくる聖女様。
思っていた以上にパワフルだな~っと思いながらも山なりに飛んでくる槍は簡単にかわせる。
聖女に真っ直ぐ向かいながらも、この陣から出て恐らく俺の仲間を探そうとしている連中にも魔法で殺す。
使った魔法はナパームボム。炎属性の魔法であり、水の魔法では鎮火できないへばりつく炎で相手を確実に燃やす魔法だ。
それを食らい振り払えない炎によって確実に燃やす。
「ちっ!よくもそんな魔法を使えますね!!」
「殺しに来た奴を確実に殺す魔法を使って何が悪い」
聖女は突きで攻撃してくるが俺は軽くかわせる。
やはりレベル制度のあるゲームはこの辺りが理不尽だ。
圧倒的なレベル差がある事でパワーも、スピードも、魔力量も何もかもが勝てる要素がない。
ぶっちゃけ俺の敵ではない。
聖女は上段から槍を叩き付ける。それも後ろに下がって避けると地面にくぼみが出来た。
それなりにパワーはあるな。
でもそれじゃ勝てねぇよ。
「さて。そろそろ帰ってもいいか?」
「余裕ですね。例の消える魔法があるからですか」
「他にも色々てはあるが、ま、それが1番かな」
「そうですか。では、少し本気を出しましょう」
お。ちょっと雰囲気良くなった。
確実に相手を殺すという気配を感じる。
これがまたとてつもなく気持ちいい。
本気で殺しに来る相手の目は、非常に美しく見える。
目的のために一直線の視線と言うか、他の余計なものが一切ないというか、目が全く濁っていない。
それを綺麗だと感じる俺は相当狂っているんだろう。
だってその眼は俺の命を狙っているのだから。
聖女は弓を取り出し、槍を構えた。
………………槍?
あれ?あれ絶対に矢じゃないよな。どう見てもデカ過ぎる。
弓も超大型であり聖女の足から頭1つ分高い位置に弦があり、弓を引くだけでも相当辛いはずだ。
それを聖女はあっさりと引き、槍を構える。
………………まさか、本当にやる気?
「射貫け!!」
本当に放ちやがった!!
槍を弓で放つってどんなパワープレイだ!!
驚いたせいで少しだけ避けるのが遅れたが、掠る事なく槍は飛んでいく。
その槍は木に当たったが、止まる事なく突き抜け木を倒しながら進んでいく。
「ま、マジか。こんなバカバカしい攻撃する奴初めて見た……」
「やはり避けますか。ですがその覇気、貫かせてもらいます」
確かに。覇気で身を守っていなければ槍が飛んでいった衝撃波だけでダメージを負っていたかもしれない。
こりゃ雑魚一掃するのに便利そうだな。
絶対マネしないけど。
「お前……どんなスキル構成すればこんなバカバカしい攻撃思い付くわけ?」
「答える訳ないでしょ」
「そりゃそうだ。だから――コピーらせてもらうぞ」
そう言いながら『嫉妬』を発動。
いや~戦闘中に嫉妬使うの本当に久しぶりだわ。
ぐにゃりと俺の姿が動いた事に気持ち悪かったのか、すぐに槍を放つ聖女。
俺は普通に避けたがその後の光景に聖女は驚愕する。
「なっ!?」
「安心しろ。ほんの一瞬の出来事だ」
聖女の姿と声のまま言った。
これで聖女のスキル構成を知る事ができた。
これで俺が誰かに変身して近付く事ができるアピールもしたし、更に聖女を混乱させる事ができるだろう。
俺は聖女の姿を解除した後、転移して自分の陣地に戻った。




