祝勝会準備
「パンパカパーン!!我が化身、ナナシよ。よくぞ偽りの正義の神、光の神を倒した!!」
光の神を倒し、ユウも取り戻したので祝勝会の準備をしていると悪の女神が割って入ってきた。
ついでに言うとズメイはまだ感知したとは言えないので久しぶりに俺が料理をしている。
ズメイのように様々な料理を効率よく作ることは出来ないが、大量生産しやすいカレーとか唐揚げの山盛りなどを作って用意中。
あ~あ、生涯に一度のお願いでデリバリー機能も付けておけば良かったな。
そうすれば寿司の出前とかも出来たのに。
「何しに来やがった悪の女神。お前の目的も達成、ユウも取り戻したから確かにあとはエンディングだけかもしれないが、そんな明るい感じでやる俺達でもないだろ」
「まぁね。それに私の力でデリバリーでも出前でも何でも出来るけど使う?」
「その機能うちにもくれ」
「ダメ~。一生のお願いの中に含まれてませんから~」
「ちっ。で、エンディングならエンディングらしく光の神がどうなったのか教えてもらうか」
結局正義の神が本当に光の神を倒したのかどうか俺達ははっきりと分かっていない。
分かっているのは光の神を本当の意味で倒すには、光という概念そのものを消滅させるというどうやったって無理じゃね?という事をするしかない。
だから光の神は最低でも生きている可能性は非常に高い。
また襲ってくる可能性があるので最終的にどうなったのか確認する必要がある。
「ああ。光の神ならアストライアの所に直接送り込まれたわよ。結局私の夫は殺すことは出来なかったから、直接裁判長の元に罪人を送り込んだわけ」
俺の質問に悪の女神はあっさりと答えた。
「今はどうなってる」
「人間でいうところの刑務所の中にいる。今はそこで裁判の準備をしている途中。光の神は本当にあっちこっちに影響があるから今まで行ってきた善行、悪行をすべてまとめて最終的にどんな刑を与えるか考えてる所でしょ」
「二度とこっちにちょっかいを出してこない可能性は」
「それは絶対ない。あのアストライアの裁判を受けて復讐しようと考える神はかなりいないわよ。二度と同じような事、似たような事が出来ないように監視されるし、この先私達にかかわれることはもうないでしょ」
「それは何より。で、ポラリスの乗っ取りは順調?」
「あ~……それでちょっと相談あるんだけど~……」
「お前のちょっとは絶対ちょっとって内容じゃない。で、内容は」
「現法王の事引き取ってくれない?」
またとんでもない内容がぶっ飛んできたな……
「法王はユウほどでなくても立派な象徴だろ。そいつを神様が変わったとたんにクビとか大丈夫か?」
「いや~向こうもかなり意地張ってるっていうか、私が信仰しているのは今も光の神様ですって聞かないのよ。別に教本のほとんどを書き換えたり、教義をどうこうしろって言ってるわけじゃないんだけどさ。それでもポラリスは光の神のための物だーって聞いてくれないのよ」
「ま、それは当然だな。元々光の神が作った宗教団体だし、やり方はともかくあいつ本気で人間を救済しようとしていたのも事実だ。ある意味光の神の残したものは確かに生き残ってるって感じだな」
「それは美談かもしれないけど、今の私達には必要ないの。この間の戦いで切り札のほとんどは死んだみたいだし、新体制を作るには古いものを全部ポイする必要があるのよ。でも法王だった子をそこら辺にポイするわけにもいかないの。だから預かってよ」
なんて言うが俺だってその法王に恨まれる側の人間だってことを忘れてないか?
まぁ確かにそこら辺にポイする事が出来ない人間だから誰かが近くにいるべきだという事は分かる。
でも何でよりにもよって俺んところ?
「ヤダよメンドイ。何で法王まで引きとならなきゃいけねぇんだよ。ユウで十分だぞポラリス関係」
「だって法王ちゃん自身がそう言ったんだもの。辺境に行くなら大罪人の所に行きたいって」
「…………は?」
「何でも前に話したみたいじゃない。なんでも独特の価値観があるとか、だからもう一度大罪人に会って話をしてみたいそうよ」
「……あ~、そんな事もあったな。というか本気にして俺んちに転がり込んでくるとは思わなかった。しかも法王の地位は捨てられた状態で」
「権力のない女の子は嫌い?」
「特にそういう感情はないが……面倒だよな~って気持ちはある。というか1人で来るのか?」
「一応護衛として聖女ちゃんと秘書ちゃんが一緒に暮らしたいって」
「オチは3人も増えるのね。どうせ断ったところで無理やりにでもこの家にあげるつもりなんだろ。仕方ないから認める」
「良し。ナナシってなんだかんだで最後は折れてくれるから助かるわ~」
なんて言う悪の女神。
まぁ俺自身法王がどうなったのか気になってはいたけどね。
それにしてもあの子は神様が変わる事に対して嫌がったか。
宗教戦争だと勝った宗教に強制的に入信させるって歴史的背景があったらしいが、今回はそれとは全く関係ないのでぶっちゃけこれからもポラリスの法王として活躍していくんだとばかり思っていた。
そんな真面目な子が追放か~。
やっぱり俺って悪人。
「それからどうする?神様になる気ある?」
なんて考えていると悪の女神がよく分からない事を言い出した。
良い狐色に揚がったポテトをすくって油切りをしながら聞く。
「神様になるってどうやるんだよ」
「一応条件は満たしてるわよ。3名以上の神の推薦、そしてレベルが99である事。この2つを満たせば神様になれるのよ」
「神様ってなったら良い事あんの?」
「人間からの場合だと寿命がなくなる、神の世界に行けるようになる、レベルの上限が取り払われるの3つね」
「寿命に関しては老いて朽ちていくのが自然だと思うから特に何とも思わないが、レベルの上限が取り払われるがよく分からん」
「簡単に言うと私達神々ってレベル100スタートなのよ、そして上限は無し。つまりいくらでもレベル上げが出来るって事」
「それは魅力的だが、神の世界って何?天国か地獄に自分の意思で行けるのか」
「大雑把に言えばそんな感じ。ちなみに神々の世界に地獄はないから天国にしか行けないわ」
「う~ん……色々あったらしばらく冒険はいいや。ゴロゴロするの飽きたら行ってみるか」
「相変わらず軽いわね……で、どうする。神様になるの?」
「寿命無限とかただの生き地獄だって火の鳥で学んでるからパス」
「あら残念。神になったら私の眷属にしてあげようと思ってたのに」
悪の女神の手先になるとかブラック企業に自分から就職しに行くようなもんじゃん。
そんなの絶対お断りだ。
「そう言えば3人の神様からの推薦って言ってたが最後の1人は誰だ?正義の神と悪の神は推薦してくれてそうだけど。やっぱアストライアか?」
「いいえ。龍神よ」
「全く知らない人からの推薦だった。龍神ってドラゴンの神様って事だよな。何でそんなところから推薦が来るんだよ」
「まだ気付いてないの?それとも気付いてないふり?あなたが愛車として乗ってるあのドラゴンバイクは龍神の化身よ」
「なにそれ聞いてない」
「まぁ化身と言っても神々の世界から血の一滴を地上に落として作り出した化身だから、ほとんど龍神の思考や意思とは関係ないけどね。でも性格とかはかなり近いし、大きな差はないかも」
「ふ~ん。まぁそれよりもまずは祝勝会の方が大切だけどな。あと寿司の出前頼む」
「本当に目先の事しか興味ないのね。かなり大きな話したはずなのに」
「目先と言うか本当に興味がない。地上で生きるなら神様になる必要なんてないし、寿命がなくなって永遠に生きるとかイメージつかん」
「そういうものかしらね~?」




