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光の神対大罪人②

「それは人間が行った実験にすぎない。神である私が行えばそのような事は起こらない」

「どうだかな。残念だが俺から見ればあんたも人間とそう変わらない。正直失敗する未来しか見えない」

「神に失敗は許されない」

「おしゃべりついでにもう1つ聞かせてくれ。何で光の神じゃダメなんだ?正義の神にこだわる理由は何だ」


 俺が最も気になっているのがそれだ。

 神として人間を導く、それだけなら正義の神にこだわる必要はないように感じたからだ。

 信仰深い信者たちからすれば正義だろうが光だろうが関係ないように感じる。


「簡単な事だ。その方が力を十分に発揮する事ができ、人間達も安心する事が出来るからだ。それに正義の神は基本的に何もしない。正義なのなら積極的に動き、より良い方向に動かすべきだ。それをしないあの神は正義にふさわしくない」

「なるほど。俺にとっては動かない事で正義になる事もあると思うけどな。まぁ知りたい事は知った。再開しようか」


 極夜を構え直すと光の神は不思議そうに言う。


「何故だ。私の計画に少しは理解をしてくれたように感じたが」

「理解はしたが納得はしてない。それになんだかんだで古臭いんだよ、お前の考え方は」

「古臭い?」

「1人の強い奴が犠牲になってその他大勢を助けるのはもう古いんだよ。最近は弱くても大勢で世界を変えましょうの方が多いって事だ。だからユウだけが犠牲になって世界が平和になるってのはもう遅れてんだよ」

「そうか。ではこれが最後となるだろう」


 光の神も剣を構え、俺達は戦い始めた。

 初手は光の神の剣から始まる。

『節制』によって無駄な動きが一切なくなった剣技は効率的に動き、速くて重い。

 しかも必要最低限の動きで放ってくるのだから連続攻撃、変化を付けた動きも難なくこなす。

 無駄のない動きというものがこれほどまでに面倒だとは思わなかった。

 いや、ここまで無駄を省く事が出来る相手がいるとは思わなかった。


 効率的に動く事が出来るという事は、100%の力そのまま相手にぶつける事が出来るという事。

 だから動きは非常に軽やかなのに受ける剣技は非常に重い。

 俺も初めてここまで軽く振るわれた剣が重いと感じた。


 だが俺にだってそれなりの戦闘経験はある。

 どれだけ無駄な動きをそぎ落としたとしても、ステータスはあくまでも人間の中で最上位と言うだけだ。

 全く追いつく事が出来ない訳ではない。


「ほう」


 光の神は感心するように声を漏らした。

 こっちだって今までずっと実践でひたすら殺し合ってきたんだ。

 そう簡単に引けやしない。


 向こうがさまざまな技を放ってくるのであれば、こちらはまっすぐ確実に重たい一撃を与える。

 俺は極夜を大きく振るい重たい一撃にこだわる。

 そうすれば剣を動かす暇はなく、受けた時はどうしても剣を止めなければならない。

 光の神の無駄のない剣を力で全て押し潰す。

 それが良いと俺は判断した。

 光の神が俺の剣を受ければ必ず押し、剣先がほんのわずかに届く。

 光の神はさすがにこのやり方に付き合うつもりはないからか、自然と避ける方向に舵を切る。


「驚いた。スキルの力を使用しているとはいえ、ここまで力任せに来るとは思わなかった」

「そりゃ俺のある程度技術はあるが、所詮荒削りの我流剣術。元々思いっきりやる方が俺の性に合ってるんだよ!!」


 力任せの攻撃というのはある意味俺のスタートだ。

 このゲームでとりあえずモンスターの倒し方が分からないから始まったごり押し。

 それが本物の神様相手でもやるとは思っていなかった。


「だがそれだけでは届かない」


 そう言って光の神はまた幻術で消え、距離を取ったかと思うとまた長距離攻撃を仕掛けてきた。

 流石のタイミングで避ける事が出来ないと判断した俺は『暴食』で光魔法を食らう。

 全てMPに変換すると光の神は言う。


「やはり我々が争ってもあまり状況は大きく変わらないらしい」

「どういうこった」

「美徳系スキルと大罪系スキルは対をなしている事は知っているだろう。だからこそ私達のスキルを頼った攻撃はあまり意味をなさない」

「は。常に消費魔力やら体力やらを最小限に抑えられる奴が何言ってやがる。それにユウのスキルは基本的に全部常時発動型だろうが!」

「そうだ。だから少しやり方を変えよう」


 そう言った光の神から何か嫌な予感がした。

 その次の瞬間、光の柱が戦場に落ちる。

 あまりにも太く、大き過ぎた光はまっすぐ戦場のある場所に落ちた。

 それはジランドが砲撃を行ってるはずの場所だった。


「てめぇ!俺が相手だって言ってるのが分かんねぇのか!!」

「だがこれ以上彼らを放置していては元も子もない。私の目的は人間を守る事。そのために人間を傷付けるドラゴンを倒すのは当然の行為だろう」


 つまりこの光の神は攻撃対象を俺だけではなくジラント達も含めて行うつもりのようだ。

 たった1人でレベル90台を複数人を相手にするのは本来不可能に近い物だが、この光の神はそれを実行した。


 本当にたった1人で俺達全員を相手にするつもりなのかと思っていると、ジラントの砲撃が襲ってきた。

 おそらく光の神だけを狙っていたのだろうが、元々広範囲攻撃が得意だからか攻撃の余波だけで俺も吹き飛ばされそうになる。

 本当は文句の1つでも言いたいところだが、今回は黙っていよう。


 その理由はジラントが我を忘れるほどに怒り狂っていたからだ。

 ジラントの近くにはボロボロのズメイが転がっていた。

 おそらくさっきの攻撃をジラントの代わり食らう事で守り切ったのだろう。

 そしてズメイを傷付けられたジラントがブチギレてこっちに攻撃し始めたと。


 ジラントは本気で光の神を殺すつもりのようで、こちらに向かって様々な広範囲攻撃魔法を放とうとしている。

 俺はちょうどいいので少しだけジラントに攻撃を頼み、俺は全力を出すための準備を行う。

 それは人間、そして雑魚天使の殺害。


 スキル『憤怒』の力を少しでも増やすために1体でも多くの敵を殺す必要がある。

 まぁ後始末の事もあったからできるだけ人間を殺さないようにしたいので、空中にいるサマエルとバトンタッチして雑魚天使を殺すのが良いだろう。


『サマエル。時間稼ぎ頼む。俺は少し力を溜める』

『承知しました。しかしジラントには怒られないでしょうか?』

『ジラントが疲れたら間を空けずに攻撃すればいい。今の光の神の動きについて行けそうか?』

『少し難しいですが、死なない程度に頑張ります』

『それでいい』


 流石に死なれては困る。

 俺への忠誠心が強いのは悪い事ではないが、サマエルだって俺の大切な宝なのだから死なせるつもりはない。


 サマエルとバトンタッチしたことで俺はボーナスステージで戦力の強化を図る。

 やる事は簡単だ。

『憤怒』を使った状態で敵を殺しまくる。

 それにより敵を殺した分だけ強化する事が出来るので、1体でも多くの天使を殺す事ができればその分強くなれる。

 その代わり回復は出来なくなるわけだが、それ以上に強くなればいいだけだ。


 俺は極夜を振り回して天使を10単位で一気に殺していく。

 そして『憤怒』のいい所は殺した相手のレベルは関係なくステータスが上昇する事。

 つまりレベル1を100体倒すのも、レベル100を100体倒すのも強化するという意味では変わらない。

 だから『憤怒』を使うときはできるだけ相手は弱い方が良い。

 俺はしばらく雑魚天使狩りをして力を溜め続けるのだった。

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