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色欲の淫魔対星の天使

 ベレトは星の天使と戦っていた。

 星の天使は拳銃を装備しており、そこからさまざまな種類の魔法を放ってくる。

 炎、水、風、土、光、闇などなどありとあらゆる種類の魔法を銃弾の様に放ちベレトを近づけさせない。

 さらに厄介な点は銃弾として放たれた魔法は着弾するまでどんな魔法なのか分からない点だ。

 何かに接触した際に魔法は効果を発揮し、炎が出たり氷柱が串刺しにしようとする。

 それらが見た目は一切変わらず速度も何もかも同じ攻撃をしてくるのだから、いったいどのような魔法を使っているの分からない。


「ちょっと面倒ね……」


 ベレトは銃弾をかわしながら冷静に戦況を見る。

 星の天使が使っている拳銃は二丁、両手で扱い左右の弾から出てくる魔法はバラバラ。

 同じ魔法を使ってくることもあったが、おそらくそれは星の天使のやり方次第だろう。

 乾いた音を響かせながらベレトの命を狙う。


 それに対してベレトは『色欲』で即席の固体を作って銃弾に当てていた。

 個体と言うのは適当に作ったただの塊であり、石ころとすら呼べない何かの塊。

 それを銃弾の前に創る事でどのような魔法が使用されているのか、どんな種類の物が多いのか確認している。

 まだ前哨戦にすらなっていないと判断したベレトは冷静に、確実に相手を殺す事が出来る攻撃を探る。


 星の天使の方は防御と回避ばかりのベレトに対してほとんど警戒心を持っていない。

 一応光の神から警戒するようにと言われているが、全くと言っていいほど攻撃してこないベレトに対して戦うまでもない相手だと結論付けた。

 それならと再びジラントの方に銃口を向け、発砲するがベレトに阻まれてしまう。

 また銃弾の前に奇妙な塊を召喚して銃弾の効果を無効化されてしまった。


 この星の天使が使っている銃弾の力を最大に発揮させるには必ず相手に当てる必要がある。

 銃弾は0距離で爆発する事で相手の内部を破壊する事を目的としており、相手に当てる事が出来ればほぼ確実に倒す事が出来る。

 だが弱点は今現在ベレトが防いでいる方法で、言っていしまえば使い捨ての盾を連続で使用されるのが最大の弱点。

 あくまでも内部から衝撃を与える事が目的なので、弾が当たったところからさらに別な方向に魔法を放つ事が出来ない。


「大体の構造は分かったし、私も銃撃戦と行きましょうか」


 そう言ってベレトも拳銃を2丁その場で創った。

 そして即座に発砲し、星の天使との銃撃戦が始まる。

 互いに相手の動きを予想し引き金を引き続ける。

 星の天使の方は魔法を封じ込めた弾だが、ベレトの銃弾は普通の銃弾だ。

 だがベレトもう言った近代兵器に関する知識はナナシから学んでいる。


 乾いた音が響き渡り、時々星の天使にベレトの銃弾が当たる。

 だが予想通りただの銃弾では星の天使の鎧を突破する事が出来ない。


「あらあら、それじゃもう少し火力を上げましょうか」


 そう言いながら拳銃を消し、ライフルを改めて創った。

 そのライフルは普通のライフルとは全く違い、まるで装甲車を相手にするような、少し火力を上げるというわりにはゴッツイライフルを創り上げた。


「これなら貫通できるかしら」


 そう言って撃鉄を鳴らしながら撃ち出したライフルから高速で弾が発射される。

 弾は星の天使の右肩に当たり、後ろに引っ張られたかのように持って行かれる。

 普通の人間だったらその時点で腕が引きちぎられるほどの威力だ。

 その火力に少し驚きながらも星の天使は残った左手で冷静に弾を放つ。


 確かに中々の火力だが結局鎧を貫通することは出来ていない。

 それを確認した天使は今まで以上に攻める。

 攻撃が当たらないのであれば無理矢理当てればいいと判断した。


 天使は自身に高速の付与魔法を使用し、さらに高速で動けるようにした。

 ベレトも最初の内は対応できていたが、ほんのわずかに弾がかすった。

 その瞬間弾に込められていた魔法が発動。

 暴風の魔法がベレトの事を吹き飛ばしながらかまいたちで肌を切り裂く。

 星の天使はきりもみ回転するベレトを見て容赦なく銃弾の雨を降らせる。


 ベレトは使い捨ての塊を前方にばら撒く事で直撃は防いだが、ありとあらゆる種類の魔法爆発までは防げない。

 体中に痣や切り傷、凍傷、火傷などのダメージがベレトを襲う。

 文字通り撃ち落されたベレトは近くの森に落ちた。


 星の天使はとどめを刺すため近くに降りる。

 右手の拳銃をベレトにつき付け、引き金を引こうとすると、視界が歪んだ。

 フラフラと後ろによろめくと、ベレトはあっさりと立ち上がった。


「やっと効果出てきた。一応サマエルに協力してもらってたけど、やっぱりちょっと調整必要だったわ~」


 なんて軽く言いながら『色欲』利用して傷を治す。

 自動回復系のスキルと違って意識して、そして傷の治し方を知っていないと後で化膿してしまったりする。

 つまり知識と技術、どちらも要求される。

 立ち上がり、視線が定まらない天使に向かって言う。


「本当に天使って実戦経験のなさが弱点なのね」


 余裕を持って言うベレトに向かって星の天使はまた銃を放つが、視界が歪んでいるせいで当たらない。


「あなた私の銃弾が貫通しないから当たり前のように食らってたでしょ。もちろんただの銃弾なわけないでしょ。あなたが銃弾に細工していたのと同じように私も細工してたの。無味無臭の毒をね」


 それを聞いた星の天使は驚愕する。

 天使に効く毒が存在するはずがない。

 元々神の手によって創造された天使に状態異常が効くはずがない。

 それなのに無味無臭で天使にも効果がある毒を創造した。

 その事実があまりにもおかしい。


「ナナシちゃんに教えてもらったもの。どんな物にも致死量があり、超えればどんな物でも毒になる。だからそれを利用すれば天使にも毒を与える事がある。それに私の『色欲』は『状態異常無効』ごときで守り切れるわけないでしょ」


 星の天使はがむしゃらに発砲しながらベレトを倒そうとするが、どんどん体調が悪くなる。

 いつの間にか立つ事も出来ないほどに毒が体中に回る。

 それにより視界が定まらないまま倒れた。

 ただ足の裏の感覚がなくなり、今現在自分がどのような状態なのかもわからない。


「それじゃバイバイ。星の天使ちゃん」


 そう言ってベレトは星の天使が使っていた拳銃を使い、星の天使にとどめを刺した。

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